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相次ぐ医薬品メーカーの不祥事はなぜ起こったか?ジェネリック医薬品が信頼を取り戻すために必要なこと

2021.11.11

前編はこちら

働き盛りの世代が知っておくべき健康寿命を延ばす術を紹介する「忍び寄る身近な病たち」シリーズ。今回はジェネリック医薬品を取り上げる。

「ジェネリック医薬品は新薬(先発薬)の特許が切れたあとに、新薬と同じ有効成分で作られる安価な医薬品のことです」と語るのは今回、レクチャーをお願いした武藤正樹先生だ。武藤先生はジェネリック医薬品・バイオシミラー学会代表理事、日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役である。医療費の増大は日本ばかりでなく、各国共通の課題だ。先生は90年代末からジェネリック医薬品(以下・ジェネリック、または後発医薬品)に注目し、その普及と啓発活動に尽力してきた。医療計画見直し等検討会座長や政府の委員を歴任している。

昨今、相次いだジェネリック医薬品メーカーの信頼が失墜する不祥事。「裏切られた思いです」そう苦笑いする武藤氏の落胆は、想像に余りあるが、特許切れの処方薬のうち、約8割がジェネリックに置き換わっている現状である。さてどうするか――。

武藤正樹氏
日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会代表理事 前国際医療福祉大学教授 日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役 よこすか地域包括ケア推進センター長

不正が横行するジェネリック業界

昨年と今年、不正が発覚したジェネリック製薬メーカー最大手の日医工、そして小林化工。いずれも県から業務停止処分を受けたが、その想像を絶した不祥事は次ぎのようなものだった。

日医工では出荷検査で不合格となった錠剤を取り換えて再検査したり、錠剤を砕いて再加工したりするなどの不正が、県による抜き打ちの立ち入り調査で明らかになった。少なくとも2011年から10年間、工場長の指示で行われた組織ぐるみの不正だったという。

2020年12月には同じくジェネリック医薬品メーカー小林化工が水虫薬「イトラコナゾール錠」に、睡眠導入剤の成分が混入したことが発覚。この薬を服用が原因での意識消失や記録喪失等の健康被害は200件以上報告されている。相次ぐ不祥事に危機感を募らせた厚労省は、今年6~7月に都道府県と合同で全国の後発医薬品製造工場など46施設に、抜き打ち検査を実施。9つの施設で改善が必要と確認された。

――かつて後発医薬品は“ゾロ品”と蔑称で呼ばれたが、1997年にアメリカの後発薬品の承認基準を採用し、それ以前に発売されたジェネリック医薬品も再評価され、不適格な医薬品は除外されてきたはずでした。今世紀に入ってからのジェネリックは、”ゾロ品“と異なる医薬品に生まれ変わったと、先生の著書『ジェネリック医薬品の新たなロードマップ』(2016年刊行)で指摘されています。品質や効果、情報提供や安定供給等の面からジェネリックを嫌う医師や薬剤師は少なくないとも指摘されますが、この10年間ほどで、ジェネリックの使用の割合は2倍以上に増えましたね。

「私が籍を置く日本ジェネリック医薬品学会はドイツ並みに、2020年までに患者さんが服用する特許切れの医薬品のうち、80%までをジェネリックにするための“2080運動”を提唱しました。原料を中国から調達したりする後発薬に、不安を感じるという医局のドクターに集まってもらい、外資系のジェリック製薬メーカーの担当者を呼んで、”うちはオーストラリアの美しい高原のきれいな空気の中で作っています“とか、スライドを見せて納得してもらったりもしました」

78.9%まで達成したのだが……

「国も『2020年末までに、ジェネリックの数量シェア目標を80%以上』とする方針を示して。診療報酬を改定し、ジェネリックをより多く使った病院と薬局に、ボーナスを付与し続ける形にして。後発医薬品の薬価も先発薬の6割かそれ以下に定めました」

――医療費の総額は年間42兆6000億円(2018年度)、前年度から約3000億円の増加です。先生は昭和24年生まれですが、先生たち団塊の世代、およそ700万人が後期高齢を迎える2025年頃には、医療費がさらに増えるのは目に見えている。誰もが等しく医療を受けられる国民皆保険制度を支えるためにも、国はジェネリックの普及に舵を切ったわけですね。

「2020年9月までにジェネリックの数量シェアを80%にするという目標は、78.9%まで達成できたのです」

結果的に年間1兆3000億円近い医薬品費の節減につながったのは、医療関係者を問わず吉報だったが、そこに降ってわいたのが冒頭で紹介したジェネリック医薬品業界の不祥事である。

裏切られたと苦笑いした武藤先生は、言葉を続ける。

「ジェネリックの普及を応援しましたが、ジェネリックの医薬品メーカーを頭から信用してはダメだったんですね。こんな不正がまかり通るのだから、今後は医師も薬剤師もジェリックを避けることが想定されます。2020年の78.9%がピークで、これからジェネリックの使用率は下がっていくのかもしれない」

――いったいなぜ、ジェネリックにこんな不祥事が起こるのでしょうか。

「コストを抑える、先発薬の特許が切れたらすぐに市場に薬を出さなければいけない。ジェネリックの製薬メーカーにとって、大事なのはコストとスピード。だから品質がおろそかになるんです」

一部の医薬品が滞っている現状

現在、日本でジェネリックに参入する製薬企業は約200社。生活習慣病などニーズが高い医薬品には、10~20社も後発医薬品メーカーが競合するのが現実だ。安価なジェネリックは利益が薄い。メーカーは人件費や原料調達国を変更して、材料費削減に手を染めたりせざるを得ない傾向にある。その結果が工場の管理体制の緩みにつながった。

「今回の不祥事発覚で、ジェネリックへの信頼が地に落ちただけではありません。日医工と小林化工の業務停止の影響を受け、医薬品の供給が一部でストップしています。骨粗しょう症の薬とか、およそ年間製産800億錠のジェネリックのうち、1割が滞っている現状です」

――相次ぐ不祥事を受けて、2019年11月成立した改正薬機法では、製薬メーカーに薬事に関する業務に責任を持つ役員を置くこと等が、定められました。

「アメリカは後発薬品が90%を占めるジェネリック先進国ですが、日本の厚労省に似た役割を持つアメリカのFDA(米食品医薬品局)の査察は厳しい。製薬メーカーに抜き打ちで査察に入り、ごみ箱の中からコンピューターのデータベースも徹底的に調べる。司法取引のような形で内部の人間から情報も引き出す。アメリカのジェネリックの40%の生産を担うのはインドですが、インドの製薬工場にFDAが抜き打ちで査察に入り、不正を暴いてその会社の製品の対米輸出を禁止したりもしています。

厚労省所管のPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)は、アメリカのFDAと同じような役割を担っていますが、行政官の数も少ないし、スキルもFDAより劣っているのが現状です」

「ものづくり大国、日本」の劣化か?

言葉を切った武藤先生は腕を組み、首を傾げて再び語りだす。

「ちょっと前まで、“品質の日本”と思っていましたが……」

昨今、「ものづくり」の根幹である品質を蔑ろにした不正行為が、日産、スバル、神戸製鋼所、東レ子会社等、日本を代表する老舗企業で相次いでいる。今回のジェネリック医薬品の不祥事も、そんな「ものづくり大国、日本」の劣化を物語る一つなのか。

――しかし、国の医療費が増大を少しでも抑えるため、後発医薬品の80%近くをジェネリックが占めています。医療の恩恵を享受するため、僕らはジェネリックを使わざるを得ません。

「要は品質に対するガバナンスです。患者さんに応えようと、誠実さを守っているジェネリックの製薬メーカーも、決して少なくないことを私は知っています」

こちらの言葉を受ける形での武藤先生の力強い返答の口調には長年、ジェネリックの味方をしてきた、そのことに間違いはなかったという矜持が込められている、そう感じ取れたのだった。

取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama

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