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掃き溜めに鶴は、主に人を褒める際に使われることわざ・慣用句です。正確な意味や言葉の使い方を理解しておけば、気の利いた発言ができるようになるため、多くのシーンで役立つでしょう。掃き溜めに鶴の意味や由来を解説し、すぐに使える例文を紹介します。
ことわざ「掃き溜めに鶴」の読み方と意味、言葉の由来
見聞きする人に大きなインパクトを与える『掃き溜めに鶴』とは、具体的にどのような意味のことわざなのでしょうか。まずは言葉の意味や語源について解説します。
掃き溜めに鶴の読みは「はきだめにつる」。意味は「つまらない所にすぐれたものが現れること」
『掃き溜めに鶴』とは、優れた人や美しい人が、その人に似つかわしくない場所にいる様子を指す言葉です。『はきだめにつる』と読みます。
『掃き溜め』とは、ごみを掃いて溜めた場所のことであり、つまらない場所やいろいろなものが混在している場所を意味します。『鶴』は優れた人や美しい人のたとえです。
『掃き溜めに鶴』という言葉は、現代では主に女性を称賛する際の言葉として使われます。『ごみ溜めに鶴』『塵塚に鶴』『掃き溜めに鶴が舞い降りる』など、異なる言い回しで使われるケースもあります。
「掃き溜めに鶴」の言葉の由来は?
『掃き溜めに鶴』の語源に関しては、ごみ捨て場のような場所(掃き溜め)に美しい鶴が舞い降りた光景を由来とする説が有力です。
しかし、出典となる文献はなく、現在まではっきりとした由来は分かっていません。比較的新しい段階で作られたことわざ・慣用句と考えられます。
「掃き溜めに鶴」の使い方と例文
- (出典) pexels.com
人を褒める際に使う『掃き溜めに鶴』に関し、具体的な使い方や注意点を解説します。例文と一緒に覚えておきましょう。
「掃き溜めに鶴」は特定の相手を褒める言葉として使うのが一般的
掃き溜めに鶴は、特定の人を褒める言葉として使うのが基本です。主に女性の美しさや才覚を褒めるケースで使いますが、才能・能力をたたえるケースでは男性にも使えます。
単に美しさや能力が際立っていることを褒めるだけではなく、さまざまな意味でその場にふさわしくないほど突出しているというニュアンスも含んだ表現です。
そのため、鶴にあたる人以外の人をおとしめる印象を与えることがあります。また、人だけでなく、ものに対しても用いることが可能な言葉です。
「掃き溜め」に当たる側への配慮も忘れずに
ごみ捨て場を意味する『掃き溜め』という言葉は、決してきれいな言葉ではありません。ある人を褒める際に使う場合は、掃き溜めにたとえられた側への配慮も必要です。
例えば、『◯◯さんは部署内で掃き溜めに鶴のような存在だね』と言う場合、言葉を使った側に悪気はなくとも、部署にいる他の女性が聞けば気分を害する可能性が高いでしょう。
掃き溜めに鶴を使う場合は、掃き溜めにたとえられた側がどのように感じるかを考慮することも大切です。褒める本人しかいないところで言う、あるいは無関係な第三者しかいない場で言うなど、発言が許される状況下のみで使うのが無難です。
「掃き溜めに鶴」を使った例文
掃き溜めに鶴は、人を褒めるさまざまな場面で使うことが可能です。以下にいくつかの例文を紹介します。
- 経験者がまったくいない弱小チームの中で、彼は毎試合のように一人気を吐いている。まさに掃き溜めに鶴といった存在だ
- 多くの人からの支持を集め、学校の美人コンテストで優勝した彼女は、掃き溜めに鶴と呼ばれるにふさわしい
- グループ内で特に目立つ存在の彼は、生まれ持った才能におごることなく、日々の努力をいとわなかった。掃き溜めに鶴とは彼のような人のことを指すのだろう
- 新しく経理部に入った女の子がかわいいため、わが社に誕生した久しぶりの掃き溜めに鶴だと思っているが、他の女性社員には口が裂けても言えない
「掃き溜めに鶴」の類語。似た意味を持つ慣用句やことわざは?
- (出典) pexels.com
掃き溜めに鶴には、似た意味を持つ言葉がいくつかあります。掃き溜めに鶴の理解を深めるためにも、代表的な類語の意味やそれぞれの由来を覚えておきましょう。
「掃き溜めに鶴」の類語1:鶏群の一鶴(けいぐんのいっかく)
『鶏群の一鶴』とは、平凡な人たちの中に1人だけ混じっている優れた人のことを意味する言葉です。
中国の古典『世説新語』に由来するとされている言葉です。風ぼうがひときわ目立つ人物を指し、『鶏の群れの中に野生の鶴が一羽いるようだ』と語られる場面があります。
- 約200人が参加したオーディションでも、彼女は鶏群の一鶴だった。芝居の素晴らしさに改めて驚きは感じない
「掃き溜めに鶴」の類語2:珠玉の瓦礫に在るが如し(しゅぎょくのがれきにあるがごとし)
『珠玉の瓦礫に在るが如し』とは、珠玉(真珠や宝石)が瓦や小石の中に混じっている状態を指して、立派な人物が凡人の中に混じっていることをたとえたことわざ・慣用句です。
中国の歴史書『晋書』・王衍伝(おうえんでん)の一節に由来しており、男性・女性の性別を問わず、相手の才能・才覚・能力などを称える言葉として使うことができます。
「掃き溜めに鶴」の類語3:泥中の蓮(でいちゅうのはす)
『泥中の蓮』は、泥の中から美しい花を咲かせる蓮のように、俗世や汚れた環境の中でも正しく清らかに生きていることを意味することわざ・慣用句です。
聖徳太子によって日本で初めて解説された仏典「維摩経(ゆいまきょう)」の中に登場する「身は泥中の蓮華」の一説に由来しています。
「掃き溜めに鶴」の類語4: 藪に剛の者(やぶにごうのもの)
『藪に剛の者』とは、つまらない者の中にも立派な人物がいることを指すことわざ・慣用句です。
鎌倉時代の説話集『十訓抄(じっきんしょう)』をはじめ、多くの文献に見られる言葉で、「やぶ」は「野夫」、「剛の者」は「功(こう)の者」と書かれている場合もあります。
「掃き溜めに鶴」の類語5:紅一点(こういってん)
『紅一点』とは、多くの男性の中に1人だけ女性が存在する様子のこと。北宋時代に書かれた中国の詩が言葉の由来とされています。
本来の意味は、『似たようなものが多くある中でただ一つ際立っているもの』となり、男性に使っても間違いではありません。しかし、一輪の赤い花を指す言葉として使われる場合もあり、男性を指して「紅一点」と言うと、性別面での誤解を招きかねないため、女性限定で使用するのが無難でしょう。
- 5人きょうだいの中で紅一点だった私は、小さい頃から兄と弟に混じって過ごしてきたせいか、どこにいっても男勝りの性格だと言われる
「掃き溜めに鶴」の対義語・反対の意味を持つ言葉
また、反対の意味の言葉もおさえておきましょう。
「掃き溜めに鶴」の対義語1:どんぐりの背比べ(どんぐりのせいくらべ)
『どんぐりの背比べ』はどんなに競い合っても五十歩百歩であるさまを表す言葉です。どんぐりの大きさはどれもほとんど同じで、その差は見た目ではわかりません。 平凡で目立ったものがないことのたとえとなり、「つまらない場所にいるひときわ目立った人」を意味する『掃き溜めに鶴』とは正反対の表現です。
「掃き溜めに鶴」の対義語2:鳳は藪の中にはいない(おおとりはやぶのなかにはいない)
鳳(おおとり)とは、古代中国で徳のある天子(天皇)が治める世に現れると伝えられてきた架空の鳥のこと。このような貴重な存在は、藪のような平凡な場所にはいないという意味です。
掃き溜め=藪、鶴=鳳と捉えると、これがまったく反対の意味の語になることがわかります。
日本語のことわざ・慣用句には、直接的な言葉を婉曲に言うことで味わいのある表現になるものや、日常生活の中で「あるある」「わかる」を感じられる言葉が多くあります。その他のことわざや慣用句を知りたい場合は、以下の記事もあわせてチェックしてみてはいかがでしょう。
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構成/編集部