『玉に瑕(きず)』という言葉を日常会話で耳にしたことがあるものの、正確な意味を知らない人もいるのではないでしょうか?会話や文章の流れを正しく理解できるように、玉に瑕の意味と使い方、類語などの基礎知識を紹介します。
「玉に瑕」とは?
玉に瑕は、どのような意味がある言葉なのでしょうか?『玉』と『瑕』のそれぞれの意味や由来についても確認しましょう。
少し欠点があることを指す慣用句
玉に瑕とは、『非常に優れているが、やや欠点があること』を表す慣用句です。玉には『美しい・優れた・立派な』、瑕には『欠点・好ましくない点』という意味があります。そのため、玉にある瑕は『その欠点さえなければ完全だ』というニュアンスを含んだ表現です。
なお、慣用句は二つ以上の言葉を結び付けた言い回しで、句全体で特定の意味を表します。例えば『道草を食う』といった表現は、目的地に向かう途中で他のことに時間をかける様子を示す慣用句です。
「宝石に傷がある状態」に由来
玉に瑕の由来は、宝石に傷がある状態を表す『玉瑕(ぎょっか)』という言葉です。古代中国の『論衡(ろんこう)』や『淮南子(えなんじ)』という思想書の中で、玉瑕という言葉が登場します。
『美しい宝石でも、傷がある状態では宝石といえないこと』を表す玉瑕から、『わずかな欠点さえなければ、完璧なのに残念だ』というニュアンスを含む玉に瑕が誕生したといわれています。
なお、同じ読み方であっても、『瑕』の代わりに『傷』を使うのは誤りです。瑕が物の状態や人の性格・行為に関する欠点を示すのに対し、傷は皮膚が切れたり裂けたりしてできたけがなどを表す点に注意しましょう。
対義語は「瑕に玉」
玉に瑕の対義語は『瑕に玉』で、『欠点が多いものの、少しは良いところもあること』を意味します。例えば、「自分勝手で思いやりに欠ける彼だが、子どもに優しいところが瑕に玉だ」のような使い方ができます。
そのほかの欠点が多い状態を表す言葉は、足りないところが多いという意味の『欠点だらけ』や、特に優れた点がないことを示す『取りえがない』などが一般的です。
日常会話では、「誰にでも欠点はあるものだが、欠点だらけなのは考えものだ」「面接で謙遜して『自分には何の取りえもない』と答えると、相手にマイナスの印象を与える可能性がある」のように使います。
「玉に瑕」の使い方を例文で確認
玉に瑕の意味を理解した後には、場面に応じた使い方をチェックしましょう。玉に瑕の正確な使い方を、シチュエーション別に解説します。
人に使う場合
玉に瑕は、人を評価するシーンで用いられることが多い言葉です。
【例文】
- 彼は仕事ができ、思いやりもある優しい人物だが、時間にルーズなのが玉に瑕だ
- 美しくて性格も良いと評判の彼女だが、ファッションセンスがないのが玉に瑕だ
- 言い方がきついのが玉に瑕だが、彼の作った曲はヒットを連発している
例文からも分かるように、『この欠点さえなければ完璧』という人に対して玉に瑕が使われます。『遅刻が多い上に、仕事中は私語が絶えない』など、欠点が複数ある人に対しては玉に瑕という表現は不適切です。
物事に使う場合
玉に瑕は人の欠点を指摘する以外に、物事に対しても使われます。具体的な使い方を例文で確認しましょう。
【例文】
- レストランの雰囲気もスタッフの対応も素晴らしいが、メニューの少なさが玉に瑕だ
- 英語が通じないのが玉に瑕だが、有名な歴史的建造物が多く、世界各国から観光客が訪れる魅力的な国だ
- 安くて機能性に優れた家電だが、カスタマーサービスの評判が悪いのが玉に瑕だ
人の場合と同じく、いくつも欠点があるような物事には使いません。
「玉に瑕」と似た意味の言葉
玉に瑕と似た意味を持つ代表的な表現を二つ紹介します。日常的に使われているとはいえませんが、教養として知っておくと役立つこともあるでしょう。
「玉の巵底無きが如し」
『玉の巵底無きが如し(たまのさかずきそこなきがごとし)』(『玉の杯底無きが如し』とも)は、『外見は非常に良いものの肝心なところが欠けており、役に立たないこと』を表す言葉です。
鎌倉時代の歌人・随筆家吉田兼好が書いた『徒然草』の中にも、『万(よろづ)にいみじくとも、色好まざらん男は、いとさうざうしく、玉の巵(さかづき)の当(そこ)なきここちぞすべき』と記されています。
『たとえ全てに優れていても、恋に興味がない男性は物足りなく、まるで底のない玉の巵のような気持ちだろう』というような意味です。
会話に取り入れる場合は、「玉の巵底無きが如しと思われる品でも、マニアの間では希少価値が評価されて高く売れる可能性もある」のように使いましょう。
「白璧の微瑕」
『白璧の微瑕(はくへきのびか)』は本来、『白くて美しい宝玉に付いた小さな傷』を指す言葉です。それが転じて、『ほぼ完全な物事に、わずかな欠点がある』という意味で使われています。
会話では、「値段が高いのが白璧の微瑕だけれど、窓から見える夜景が素晴らしい。ロマンチックな雰囲気で食事できる、おすすめのレストランだよ」のように使います。
なお、白璧は白い宝石を意味するため、『壁』と書くのは誤りです。完璧の『璧』を使うことを覚えておくと、書き間違いを防げるでしょう。
構成/編集部