「尻に敷かれる」は、夫よりも妻の立場が強いことを表現する慣用句。あまりポジティブな印象は受けない言葉だが、実は夫が尻に敷かれているほうが夫婦関係は円満とも言われている。
本記事では、「尻に敷かれる」の意味や使い方、類語・対義語、英語表現について解説する。併せて、尻に敷かれる男性の特徴についても紹介したい。
「尻に敷かれる」とは
はじめに、この慣用句の意味と使い方を確認しよう。なお、「尻に敷かれる」の読み方は「しりにしかれる」。敷かれるを「ひかれる」と読まないよう注意したい。
夫が妻に主導権を握られていること
妻が夫を自分の意に従わせて思うままに振る舞うことや、夫を軽んじて自分勝手に振る舞うことを「尻に敷く」「尻の下に敷く」と言うが、この受身のかたちが「尻に敷かれる」という表現。夫が妻の意見や主張に従わされ、主導権を握られていることをいう。夫婦に限らず恋愛関係においても用いられることがある。
使い方と例文
「尻に敷かれる」は、妻が自身よりも強い立場であることを夫が自虐的に言ったり、その様子を周りが言ったりする時に使う。ただし、誉め言葉として使われることはほとんどないため、冗談が通じるような間柄ではない場合、面と向かって使うことは避けたい表現だ。
【例文】
「あんなに威張っている部長も、家では奥さんの尻に敷かれて、頭が上がらないらしい」
「俺は大雑把だから、奥さんがすべて管理してくれてありがたい。尻に敷かれるのも悪くないものだよ」
「あいつ、何でも彼女が決めたことに従ってるよ。あの調子じゃ、結婚しても尻に敷かれるだろうな」
「尻に敷かれる」の関連表現
「尻に敷かれる」と似た意味を持つ言葉にはどんなものがあるのだろうか。ここでは、類語と対義語そして英語表現を紹介する。
類語
ここで紹介するのは、それぞれ妻のほうが夫よりも強い立場であることを表現する言葉だが、尻に敷かれるとは異なるニュアンスもある。
・恐妻家
妻に頭の上がらない夫、また妻を恐れている夫のことを恐妻家(きょうさいか)という。恐妻家芸人など、メディアでもよく見聞きする言葉のため、ご存じの方も多いだろう。なお、実際は愛妻家(あいさいか)であるにもかかわらず、妻に尽くしていることを自虐的に恐妻家と言ったり、呼ばれたりするケースも見られるが本来の言葉の意味からすれば誤用と言える。
・嬶天下
嬶天下(かかあでんか)は、家族の中で夫よりも妻が強い権力を振るっていることを言う。嬶は、妻のこと。なお、かかあ天下は群馬県が発祥とされている。上州(群馬県)女性は働き者が多く、夫に代わり家計を支えた妻を「俺のかかあは天下一」と自慢するときに使われていたという。
対義語
夫および男性の立場が上であることを表現する言葉だが、男女平等の考え方に反するとして、現代では否定的な意味合いを含んで用いられることが多い。
・亭主関白
夫が家庭内や夫婦間で絶大な権力を持ち、威張っていることを亭主関白(ていしゅかんぱく)と言う。亭主は夫のことで、関白は江戸時代まで天皇を補佐して政務を司った重職から転じて、権力の強い者をたとえている。
・男尊女卑
男尊女卑(だんそんじょひ)とは夫婦に限らず、男性を尊重して女性を軽んじること。また「女性だから」という理由によって、男性よりも劣っているという考え方や態度、風習を指す。近年は男女平等が強く主張されるようになり、男尊女卑の考え方も改められつつあるが、今も根強く残っているのが現状のようだ。
英語表現
妻が家庭で主導権を握っている(尻に敷く)ことを、英語では「wear the pants」と表現する。日本語に直訳すると「ズボンを履いている」となるが、昔は男性が意思決定していたことと、男性だけがズボンを履いていたことに由来する。「ズボンを履いている人=意思決定する人」ということから使われるようになったようだ。「My wife wears the pants in our family./妻の尻に敷かれている」のように表現される。
尻に敷かれる男性の特徴
最後に、尻に敷かれる男性の特徴について見ていこう。自身や自分の夫・恋人、周りに当てはまる人がいないかチェックしてみてほしい。
穏やかで優しい
温厚な性格の男性は、尻に敷かれる可能性が高いと言われる。相手を立てる習慣が身についており、できるだけ喧嘩を避けようとするため、女性の意見を尊重し相手の都合に合わせて行動できる。自分の意見をしっかりと持っている女性でなくても、居心地が良く次第に主導権を握るようになるかもしれない。
優柔不断で自分一人では決められない
優柔不断で決断力がない男性の場合、決定権を女性に委ねてしまうことが少なくない。自分で決めるよりも、他の人に決めてもらう方が落ち着くことから、決断力のある女性と付き合うことが多い。相手の意見を重視するため、尻に敷かれていると評価されてしまうようだ。
とことん尽くす愛妻家
愛妻家とは、妻を人並み以上に大事にする夫のこと。愛妻家の男性は妻を心から愛し、とことん尽くす。妻の言うことは何でも聞いてあげたいという気持ちがあるため、妻優先の行動を取り、サポートも惜しまない。夫が妻に尽くしている様子を傍から見ると、尻に敷かれていると感じられてしまうようだ。
文/oki