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仕事も恋愛も成功は脳の錯覚でしかない!?メンタルヘルスに欠かせない「肯定的錯覚」とは?

2021.03.18

■連載/あるあるビジネス処方箋

今回は、「メンタルトレーニングの研究・指導で知られる西田文郎(ふみお)さんの取材を試みた。

西田さんは、経営者や会社員、プロ野球やサッカーなどのスポーツ選手、教育者の能力開発指導に長年たずさわってきた。大脳生理学と心理学を利用することで脳の機能にアプローチし、育成する手法(SBTスーパーブレイントレーニング)はよく知られる。

現在は、社員教育、アスリート指導、セミナーなど、様々な分野で能力開発のサポートをする株式会社サンリ(静岡県島田市)の会長として、経営者のための「西田塾」を主宰し、全国各地での講演を続ける。著書に「No.1理論 ―ビジネスで、スポーツで、受験で、成功してしまう脳をつくる「ブレイントレーニング」」(現代書林)、「成功したけりゃ、脳に「一流のウソ」を語れ」(大和書房)などがある。

世の中には2種類の人しかいない

「99%の人が常識で考えると「到底できない」と思っていることを、優秀な人は「自分ならば必ずできる」と信じています。脳が、そのように錯覚しているのです。困難なことや否定的な条件にぶち当たっても、乗り越えてしまいます。

そのような人はふだんから「自分ならばできる」と思い込み、経験を積んでいます。場数を踏み、能力を高めていくうちにスキルや技術などの保有能力を身につけ、優秀な人になっていくのです。根拠のない自信が、根拠のある自信に変わっていくのです」

西田さんによると、世の中には2種類の人しかいないのだという。1つは、肯定的錯覚をしている人。もう1つは否定的錯覚をしている人。それぞれを具体的に捉えると、次のようになるようだ。

肯定的錯覚の人:自分の力が平均レベルより優れているという「優越の錯覚」をしている。「きっとうまくいくと思い、仕事をする」傾向がある。

否定的錯覚の人:自分の力が平均レベルより劣っていると思い込み、「どうせ、無理だ」「そんなことできない」とあきらめてしまう。

西田会長は、「肯定的錯覚の人も否定的錯覚の人もその時点ではまだ、未来は来ていない。結果は出ていない。ところが、仕事をする姿勢がまったく違うから、結果は比べるまでもない」と話す。

脳は、その人が思っていることを引き寄せたり、現実のものにしようとするのだそうです。

「成功は、肯定的錯覚をした人からしか生まれえない。会社員が、たとえば「自分は社長になれない」と思えばその時点でもう、なれません。「ダメだな」と思うと実際にダメになり、「使えない社員」になってしまう。脳は、思っていることを実現します。将来を否定的に錯覚する人は、その人の脳が否定的な結果を実現させるのです。

一方で、自分はますます優秀になると肯定的錯覚をしている人の脳は、そのような現実を引き寄せます。成功を願うならば、脳を錯覚させ、否定的錯覚から肯定的錯覚に変える訓練をするべきなのです。

現時点で自分が優秀であるか否かという事実はどうあれ、まずは錯覚することが大切です。マイナス思考な人ならば、はじめは嘘でいい。プラス思考こそが重要なのです。そのためには、脳をセルフコントロールしたり、セルフイメージを高くすることが必要になります。これも錯覚をさせればいいだけなのです」(西田さん)

脳の錯覚は怖い

西田さんによると、資質のない人は実はいないそうです。「自分には資質がない」と脳が思い込んでいる人がとても多いようです。それを逆手にとり、「自分できるんだ」と言い、脳を錯覚させ、その気にさせることが大切とのことです。

「使い方を誤ると、錯覚は怖い。脳は、錯覚してがんばるわけです。たとえば、自分に合わないような会社に残り、向かない仕事をしてストレスを抱え、精神疾患になる人がいます。否定的錯覚をして、脳が燃え尽きながらもがんばっているのだろうと思います。

私から言わせてもらえば、そんな会社は辞めてしまえばいいのです。なぜ、そこまで自分を追い詰めて、会社に勤めるのかと考えてほしい。心が病んでまで残らなければいけない理由なんてない。無理を続けると、本当にバーンアウトしてしまいかねないです」(西田さん)

ここで私が補足をします。私もまた、「そんな会社は辞めてしまえばいい」には大賛成です。脳の錯覚は、つくづく怖いものです。確かに上司や周囲の社員が特定の社員を錯覚させるように仕向けてしまう場合があるか、と思います。例えば、たった数回、営業成績が抜群によいだけでも、「あの人はすごい」と思う人が増えると、本人は真剣に信じ込み、がんばってしまう場合は多々あります。

一方、周囲が「あの人はダメだ」とレッテルを貼ると、それが職場の世論や空気となりえます。さしたる根拠がないのに、本人が「自分はダメなんだ」と考えるように仕向けるのです。一時期、高い成績を残しても、その後、つぶれていく人はこのタイプが多いように私には見えます。ある意味で、周囲がつぶれるようにしてしまうのです。そこには、嫉妬や妬み、恨みなどがあるのかもしれませんが、この思い込みもまた怖いものです。

取材の最中、深く共感したのが、次のくだりでした。私がこれまでに取材してきた中小企業の経営者の大半に該当していることに思えました。

「中小企業の経営者には自ら創業し、成功した方がたくさんいます。会社に勤務しているときに上司の言うことを聞くことができずに、独立した人がいるのです。自分が経営する会社が大きくなると、社員には「上司の言うことを聞けないならば、反省しなさい」と教えています。しかし、もともと、反省しなかった人が成功しているのです…(苦笑)。脳の錯覚があったからこそ、成功できたのだし、錯覚をしているから「反省しなさい」と言えるのです。」(西田さん)

愛も恋も、実は脳の錯覚でしかない…

結婚後の人生も錯覚するかしないかで、大きく変わっていくと西田さんは話します。

「「ほとんどの夫婦は、血縁関係のない他人です。肯定的な錯覚をしているから、何十年も夫婦関係が続くのです。その途中で、互いに嘘をつくからです。幸福や成功は嘘をつくから、手にすることができるのです。

嘘をつくから、関係が続き、離婚しない。思いやりの嘘…。わかりますか?逆に言えば、正直だから、離婚をするのです。嘘つきは、離婚をしません。バツ2、バツ3の人は、本当に正直な方なのだと思います。愛も恋も、実は脳の錯覚でしかない…。もちろん、そんなことは相手には言わないほうがいいでしょう。赤い糸で結ばれ、運命で結婚したと錯覚している人がいるのに「それは錯覚ですよ」なんて言えない。錯覚して思い込んでいれば、やがて、脳がそのような現実を実現するものです」

私は20代の頃は、西田さんのような指摘をスピリチュアル的な内容と受け止め、どこかで腰が引けるものがありました。しかし、経験や場数を踏んで50代になると、少なくとも脳を錯覚させている人はある意味でものすごく強いとしみじみ思います。実際、取材で接する成功者のほとんどが、「自分はできる」と信じ込み、それを裏づける努力をしているものです。逆に言えば、上手くいかない人は結果が出る前から、どんどんと「私はできない」と追い詰めていくのです。闘う前に負けているケースが多いように感じます。

読者諸氏は、自らを「優秀」と信じているでしょうか?

西田さんの記事は、以下にも掲載。

メンタルコーチに聞く仕事がうまくいかない時に意識すべきこと|@DIME アットダイム

文/吉田典史

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