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『プラットフォーム』とは、共通の土台となる環境を意味します。ITシステムの基盤を指すほか、ビジネスにおける戦略の一つとしても使われる言葉です。具体的な意味や種類を解説し、プラットフォームビジネスでの成功事例も紹介します。
プラットフォームとは?
IT・ビジネス分野における『プラットフォーム』とは、システムやサービスを稼働させるための基盤を指す言葉です。具体的な意味やインフラとの違いを解説します。
今さら聞けないプラットフォームの意味
プラットフォームとは、『舞台・壇上』を意味する英語『platform』を語源とする言葉です。IT用語として使う場合は、『サービスやシステムを動かすための土台や基盤』を意味します。
ITシステムにおいては、ソフトウェアを動作させるOSがプラットフォームです。データベースや設定を含む、システム基盤の総称を指すこともあります。同一のプログラムを動かす際、基本的にはプラットフォームが同じでなければ動きません。
また、オンラインショッピングを提供するシステムやアプリ・音楽・動画の配信サイトを、プラットフォームと呼ぶケースもあります。いずれもサービスを提供・運営するために必要な、共通の土台となる環境です。
インフラとの違い
プラットフォームと混同しやすい言葉に『インフラ』があります。インフラは『インフラストラクチャー(Infrastructure)』の略語で、『基盤・環境』を指す言葉です。
IT・ビジネス用語としての意味合いが強いプラットフォームに対し、インフラは生活や産業の基盤を意味する言葉としてよく使われます。水道・電気・ガス・道路・駅・通信網などの生活・産業基盤は、一般社会におけるインフラの代表例です。
IT分野では、システム内のネットワークやハードウェアを総称して『ITインフラ』と呼ぶ場合があります。ITインフラは、システムを正常に動作させるために欠かせない、下支えの役割を担う基盤です。
三つのデジタルプラットフォーム
IT関係のプラットフォームは、ほかのタイプと区別する意味で『デジタルプラットフォーム』とも呼ばれます。デジタルプラットフォームは、以下に挙げる3種類に分けられます。
オンラインプラットフォーム
オンラインプラットフォームは、Web上で提供されるさまざまなサービスの基盤です。取引の形態により、大きく4種類に分けられます。
企業と消費者で取引されるタイプの例が、『Amazon』『楽天市場』などのECサイトや『Yahoo! JAPAN』などのポータルサイトです。消費者同士の取引形態では、オークションやフリマアプリ、シェアリングエコノミーが挙げられます。
Googleに代表される検索エンジンやSNS・ソーシャルメディアは、企業と消費者の間に企業が入る形で取引されるタイプのオンラインプラットフォームです。『FinTech』や『AR/VR』など、企業同士で取引されるものもあります。
ソフトウェアのプラットフォーム
パソコンやスマホで基盤として利用されるOSも、システムの土台であることからプラットフォームと表現されます。インストールしたアプリを作動させるには、最も基本的なソフトウェアであるOSの存在が不可欠です。
パソコンに組み込まれる代表的なOSとして、Microsoftの『Windows』やAppleの『macOS』があります。スマホで使われるOSは、Googleの『Android』とAppleの『iOS』が主流です。
OSやハードウェアなどのプラットフォーム一式を、ネット上で提供する『PaaS』というサービスもあります。アプリ開発に必要なプラットフォーム環境の準備を、大幅に削減できることがメリットです。
コンテンツ配信型プラットフォーム
オンラインプラットフォームのBtoCタイプには、コンテンツを配信するサービスが含まれます。アプリ・電子書籍・音楽など、配信されるコンテンツの種類はさまざまです。
コンテンツ配信型プラットフォームの代表例として、Googleの『Google Play』やAppleの『App Store』があります。どちらもスマホアプリをダウンロードできるサービスです。
音楽を配信する『Google Play Music』『iTunes Store』やゲームを配信する『Stadia』も、コンテンツ配信型サービスとして広く知られています。
基本的に無料で利用できるSNSやソーシャルメディアと違い、コンテンツ配信型は有料コンテンツを多く含んでいることが特徴です。決済プラットフォームとしての役割も担っています。
注目を集めるクロスプラットフォーム
クロスプラットフォームは、OSやハードウェアに依存しないアプリ開発を実現するプログラムです。スマホの急速な普及により、近年注目を集めています。
クロスプラットフォームとは?
OSやハードウェアが異なっていても、それぞれで動作するアプリを開発できるプログラムが『クロスプラットフォーム』です。『マルチプラットフォーム』とも呼ばれます。
従来のアプリ開発は、特定のプラットフォームでのみ動くように作るのが一般的でした。しかし、クロスプラットフォームで開発すれば、さまざまなOSやハードウェアに対応するアプリが作れます。
近年のスマホ用アプリは、クロスプラットフォームで開発されたものがほとんどです。市場を限定しないため、AndroidとiOSの両方に対応するアプリが数多く提供されています。
有名なクロスプラットフォーム
クロスプラットフォームの代表格としては、『Java仮想マシン』が挙げられます。『JVM』『Java VM』とも呼ばれるソフトウェアです。
Javaで開発されたアプリは、Java仮想マシンにより異なるOS上で動かせます。Java仮想マシンさえあれば、Javaアプリを使うための特別な設定は不要です。
モバイルアプリの開発に向いた主なクロスプラットフォームには、『Xamarin』や『Flutter』があります。『Unity』や『Cocos2d-x』は、ゲームアプリの開発に適したプログラムとして有名です。
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普及した背景にはスマホの存在?
OSやハードウェアに依存しない開発環境は、コンピューター黎明期から存在していました。近年注目を集め始めた背景には、スマホの急激な普及があると考えられています。
スマホに組み込まれるOSは、AndroidとiOSが主流です。それぞれのシェアが均衡しているため、どちらのOSでも作動するアプリ開発が求められるようになり、クロスプラットフォームの普及につながっています。
アプリ開発にかかるコストを軽減できることも、クロスプラットフォームの魅力です。OSごとに違うプログラムでアプリを開発するより、クロスプラットフォームで開発した方がコストを抑えられます。
プラットフォームビジネスとは?
プラットフォームビジネスは、プラットフォーム戦略に基づいて展開されるビジネスモデルです。戦略の特徴や注目される理由を解説します。
プラットフォーム戦略
プラットフォーム戦略とは、相互に関係する複数グループのニーズを橋渡しするビジネス戦略です。多くの企業から商品やサービスを集めることで、より広域の経済圏を形成できます。
消費者がアカウントを一つ取得するだけで、多彩なサービスを受けられることが特徴です。業界や業種を問わず導入されており、多くの成功事例があります。
商品やサービスを売りたい企業と、さまざまなものを買いたい消費者をつなげる『ECサイト』は、プラットフォームビジネスの代表例です。『コンテンツ配信サービス』や『シェアリングエコノミー』『SNS』なども代表として挙げられるでしょう。
戦略の特徴
プラットフォーム戦略では、橋渡しとなる企業が『プラットフォーマー』となり、複数企業と消費者の仲介役を担います。企業と消費者が1対1で取引する従来の形態ではなく、プラットフォーマーを間に入れて取引するのが特徴です。
企業と消費者が1対1で取引する形態を『BtoC』といいます。一方、企業と消費者の間にプラットフォーマーを仲介して取引する形態は『BtoBtoC』です。
BtoCでは、消費者が複数企業から商品やサービスを購入する場合、それぞれの企業とやり取りしなければなりません。しかしBtoBtoCなら、プラットフォーマーとやり取りするだけで複数企業の商品やサービスが購入可能になります。
注目される理由とは?
近年は、あらゆる分野で類似した商品やサービスがあふれており、市場全体が成熟期を迎えています。消費者の価値観も多様化する中で、多くのニーズをいかに満たすかが、これからの時代における企業の課題といえるでしょう。
プラットフォーム戦略は、消費者の多様なニーズを満たせる仕組みを持っている点で注目を集めているビジネスモデルです。成熟した社会において、消費者との関係性をより強化できるためです。
百貨店や青果市場など、プラットフォーム型のビジネスモデルは古くから存在しました。しかし、インターネットの普及に伴い、これからはIT分野でプラットフォーム戦略がより活性化していくでしょう。
プラットフォーム戦略のメリット
プラットフォーム戦略を実行する企業は、以下の三つのメリットにより、市場における優位性を保ちやすくなります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
ビッグデータが得られる
多数の利用者を集められるプラットフォーム戦略は、ビッグデータを得やすいことがメリットです。ビッグデータとは、量が大きく種類も豊富なデータ群を意味します。
会員登録した顧客のさまざまな消費行動データは、マーケティング戦略に活用することが可能です。蓄積した情報の種類や量が多いほど、より緻密な戦略を練られるでしょう。
さまざまな商品やサービスが集まるプラットフォームでは、分野の垣根を超えたデータも集めやすくなります。マーケティング戦略を横展開し、新たな分野にビジネスチャンスを広げられることも大きな強みです。
圧倒的なサービスの質を確保
プラットフォーム戦略には、『ネットワーク効果』が現れやすいメリットがあります。ネットワーク効果とは、ユーザー数が多くなるほど商品やサービスの価値が高まる現象です。
例えば、料理レシピ投稿サイトでユーザー数が増えると、投稿されるレシピ数も増加します。評価の高いレシピが増え、レシピサイトとしての価値が高まれば、ユーザー数のさらなる増加につながるでしょう。
1対1のBtoCビジネスでは、高いネットワーク効果は期待できません。ユーザー数の増加に比例してサービスの質を高められることが、プラットフォーム戦略の大きな魅力です。
既存リソースの活用
企業が独自に商品やサービスを販売しようとすると、集客や販促も基本的には自社で行わなければならず、サイトの作成や管理に手間やコストがかかります。
しかし、プラットフォーム戦略では、全ての参入企業が同様に利用できる販売スペースが用意されています。既存リソースを活用できるため、参入企業側の手間や費用を抑えられることもメリットです。
参入企業は自社独自のネットショップを作成できるだけでなく、決済機能や販促機能もプラットフォームの既存リソースを活用できます。単独でショップ運営するのに比べ、より高い集客効果を期待できるでしょう。
企業のプラットフォーム成功事例
プラットフォーム戦略での成功事例を3例紹介します。いずれもコア事業以外の事業を多角的に運営し、多くのユーザーを獲得している企業です。
楽天市場
国内最大級のECサイト『楽天市場』は、プラットフォーム戦略での成功事例として有名です。楽天市場には数多くの小売店が参入しており、多彩な商品やサービスが販売されています。
運営会社の楽天自体は、商品やサービスの開発・製造・販売を行っていません。出店企業から得る出店料や手数料を収益源とし、システムの管理・店舗へのコンサルティング・一般顧客への情報提供などを行っています。
楽天では楽天市場を中心に、保険・旅行・銀行などのサービスを展開していることも特徴です。異なる分野のビジネスを集めて一つの経済圏を形成し、会員は同一IDでそれぞれのサービスを利用できます。
LINE
LINEはコア事業である無料通話サービス以外に、ゲームや求人などさまざまな分野のサービスを展開しています。無料通話サービスに集まったユーザーに対し、参入企業が働きかけるタイプのプラットフォーム戦略です。
企業のコンテンツとユーザーアカウントを結び付ける機能『Official Web App』では、一つのIDのみでLINE上のさまざまなサービスを完結できます。8000万人を超えるLINEユーザーに対し、ビッグデータを活用した企業広告を配信できることも特徴です。
ユーザー向けに飲食店の予約・決済機能を搭載したり、企業にネットショップを持てる機能を提供したりと、ユーザーと企業をよりシームレスに結び付ける仕組みも構築しています。
Amazon
ECサイト『Amazon.com』を運営するAmazonは、ECサイトをプラットフォームとし、プライム・広告ビジネス・AWSなどの事業を展開しています。それぞれの事業が生み出す相乗効果を、最大限に生かしていることが特徴です。
プラットフォームであるECサイトでも、参入企業がさまざまな商品やサービスを販売しています。消費者の多様なニーズを満たしやすく、多くのユーザーを獲得できる仕組みです。
作家や音楽家が、自分の作品を販売できるプラットフォームも提供しています。Amazonは出店企業やクリエイターの売上から手数料を得て、収益を上げています。