プラットフォーム戦略のメリット
プラットフォーム戦略を実行する企業は、以下の三つのメリットにより、市場における優位性を保ちやすくなります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
ビッグデータが得られる
多数の利用者を集められるプラットフォーム戦略は、ビッグデータを得やすいことがメリットです。ビッグデータとは、量が大きく種類も豊富なデータ群を意味します。
会員登録した顧客のさまざまな消費行動データは、マーケティング戦略に活用することが可能です。蓄積した情報の種類や量が多いほど、より緻密な戦略を練られるでしょう。
さまざまな商品やサービスが集まるプラットフォームでは、分野の垣根を超えたデータも集めやすくなります。マーケティング戦略を横展開し、新たな分野にビジネスチャンスを広げられることも大きな強みです。
圧倒的なサービスの質を確保
プラットフォーム戦略には、『ネットワーク効果』が現れやすいメリットがあります。ネットワーク効果とは、ユーザー数が多くなるほど商品やサービスの価値が高まる現象です。
例えば、料理レシピ投稿サイトでユーザー数が増えると、投稿されるレシピ数も増加します。評価の高いレシピが増え、レシピサイトとしての価値が高まれば、ユーザー数のさらなる増加につながるでしょう。
1対1のBtoCビジネスでは、高いネットワーク効果は期待できません。ユーザー数の増加に比例してサービスの質を高められることが、プラットフォーム戦略の大きな魅力です。
既存リソースの活用
企業が独自に商品やサービスを販売しようとすると、集客や販促も基本的には自社で行わなければならず、サイトの作成や管理に手間やコストがかかります。
しかし、プラットフォーム戦略では、全ての参入企業が同様に利用できる販売スペースが用意されています。既存リソースを活用できるため、参入企業側の手間や費用を抑えられることもメリットです。
参入企業は自社独自のネットショップを作成できるだけでなく、決済機能や販促機能もプラットフォームの既存リソースを活用できます。単独でショップ運営するのに比べ、より高い集客効果を期待できるでしょう。
企業のプラットフォーム成功事例
プラットフォーム戦略での成功事例を3例紹介します。いずれもコア事業以外の事業を多角的に運営し、多くのユーザーを獲得している企業です。
楽天市場
国内最大級のECサイト『楽天市場』は、プラットフォーム戦略での成功事例として有名です。楽天市場には数多くの小売店が参入しており、多彩な商品やサービスが販売されています。
運営会社の楽天自体は、商品やサービスの開発・製造・販売を行っていません。出店企業から得る出店料や手数料を収益源とし、システムの管理・店舗へのコンサルティング・一般顧客への情報提供などを行っています。
楽天では楽天市場を中心に、保険・旅行・銀行などのサービスを展開していることも特徴です。異なる分野のビジネスを集めて一つの経済圏を形成し、会員は同一IDでそれぞれのサービスを利用できます。
LINE
LINEはコア事業である無料通話サービス以外に、ゲームや求人などさまざまな分野のサービスを展開しています。無料通話サービスに集まったユーザーに対し、参入企業が働きかけるタイプのプラットフォーム戦略です。
企業のコンテンツとユーザーアカウントを結び付ける機能『Official Web App』では、一つのIDのみでLINE上のさまざまなサービスを完結できます。8000万人を超えるLINEユーザーに対し、ビッグデータを活用した企業広告を配信できることも特徴です。
ユーザー向けに飲食店の予約・決済機能を搭載したり、企業にネットショップを持てる機能を提供したりと、ユーザーと企業をよりシームレスに結び付ける仕組みも構築しています。
Amazon
ECサイト『Amazon.com』を運営するAmazonは、ECサイトをプラットフォームとし、プライム・広告ビジネス・AWSなどの事業を展開しています。それぞれの事業が生み出す相乗効果を、最大限に生かしていることが特徴です。
プラットフォームであるECサイトでも、参入企業がさまざまな商品やサービスを販売しています。消費者の多様なニーズを満たしやすく、多くのユーザーを獲得できる仕組みです。
作家や音楽家が、自分の作品を販売できるプラットフォームも提供しています。Amazonは出店企業やクリエイターの売上から手数料を得て、収益を上げています。