コロナ禍で遠方に旅行できないなら、全国各地の特産品をお取り寄せして楽しもう。
これまで滋賀県の『鮒寿司』、福井県の『へしこ』など“魚の発酵食品”を紹介してきたが、今回取り寄せたのは秋田県のしょっつる、石川県のいしる・よしる。
魚を発酵させて作る、“魚醤”と呼ばれる調味料だ。
秋田県と石川県が誇る魚醤は、一体どんな味と匂いなのだろうか……?
魚醤は魚を長期間発酵させて作る旨みたっぷりの調味料
魚醤とは、魚と塩を長期間(1年以上)発酵させて旨みを引き出した調味料。東アジア・東南アジアを中心に、古くから製造されてきた。タイのナンプラー、ベトナムのヌクマムなどは日本でも有名だ。
昔の日本では、今日の醤油や魚醤は“醤(ひしお)”の総称で呼ばれ、奈良時代の『大宝律令』や平安時代の法令集『延喜式』にも記録が残っている。
現代の日本では、秋田県のしょっつる、香川県のいかなご醤油、石川県のいしる(いしり、よしる)が“日本三大魚醤”と呼ばれている。
いかなご醤油は残念ながら入手できなかったので、今回はしょっつる・いしる・よしるの味と香りのみ紹介することにした。
ハタハタの上品な味わい、秋田県のしょっつる
ハタハタを発酵させた秋田のしょっつるは、3つの中でもっとも淡い色をしている。見た目の通り、味も香りも上品で万人受けする感じ。
少し舐めてみると、強い塩辛さの後に、ハタハタの優しい風味が鼻に抜ける。
薄味の和食に隠し味として加えてみると、良さそうだ。
イカワタの濃厚な旨みが凝縮された石川のいしる
イカワタ(イカの内蔵)を発酵させた石川のいしるは、3つの中でもっとも色と味が濃厚だ。
海の生物らしい旨みをギュギュッと濃縮させた、刺激的で贅沢な味がする。イカ墨パスタが好きな方には、きっと溜まらないはずだ。
他の二つと比較すると、いしるは和洋どちらの料理でも活躍してくれそう。
和食の煮物はもちろん、シーフードパスタ、パエリア、アクアパッツァ、ブイヤベースなどの料理にもプラスしてみては。
イワシの味が万人受けしそうな石川のよしる
日本人の食卓の定番・イワシを原材料とする、石川のよしる。ハタハタと同じく万人受けしそうな味と香りだが、ハタハタに比べると“庶民的で気取らない”という印象を受けた。
今回の3つの中では、もっとも親しみやすくオールマイティ。人間にたとえると、“誰とでも仲良くやれるクラスの人気者”のような魚醤だ。
煮物、鍋物、おでん、パスタ、スープ等に入れるとワンランクアップ
魚醤の使い方は、醤油とほとんど同じ。塩味と旨味を兼ね備えているので、出汁は不要だ。
例えば、煮物、鍋物、おでん、パスタ、汁物(スープ)などにピッタリ。
今回は、しょっつるを使って、大根と鶏肉の煮物を作ってみた。味付けは、しょっつる・酒・みりんのみ。
醤油よりも少ない量で、しっかりと味が染みている。ハタハタの旨みが活かされ、いつもの煮物よりもワンランク上の味に仕上がった。
漁港や魚市場を思い出す……爽やかな香りが魅力的な魚醤
筆者はこれまで、魚醤と言えばタイのナンプラーしか口にしたことがなかった。正直、日本の魚醤も“モワ~ン”とか“ムワッ”といった感じのクセのある匂いを想像していた。
しかし実際に試してみると、予想していたよりも遥かに爽やかな香りとクセのない味。
海のない県に生まれ育った筆者は、旅先の漁港や魚市場を散歩していた時のことを思い出し、しみじみとした。
今回紹介した魚醤は、諸井醸造所の『秋田しょっつる』、ヤマサ商事株式会社の『いしる』『よしる』。楽天市場やAmazonなどの通販サイトで簡単に購入できる。いずれも比較的安価なので、ぜひ試してみてほしい。
上品な“しょっつる”、個性派“いしる”、親しみやすい“よしる”。メニューによって使い分けてみると、きっと毎日の料理が楽しくなるはずだ。
参考
https://www.kikkoman.co.jp/soyworld/museum/history/hishio.html
https://item.rakuten.co.jp/tsutsu-uraura/moroi010/
https://item.rakuten.co.jp/tsutsu-uraura/yoshiru500/
https://item.rakuten.co.jp/tsutsu-uraura/ishiru500/
文/吉野潤子