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「50代~60代が天国」で「20代が地獄」に!?2035年の職場はどうなっているのか?

2020.09.22

■連載/あるあるビジネス処方箋

今回は、2035年の職場を考えてみたい。この時代には、日本企業の人件費の扱いや役員、管理職の数、昇格基準、各世代別の社員数の比率が大きく変わっているはずだ。その底流に流れている意味をベテランの人事コンサルタントに伺ってみた。

私が取材をしたのは人事コンサルタントであり、明治大学大学院グローバル・ビジネス研究科の客員教授である林明文氏。林さんはデロイトトーマツコンサルティングで人事コンサルタントとなり、その後、大手再就職支援会社の社長に就任。2002年からは、人事コンサルティング会社・トランストラクチャの代表取締役を務めし、現在は会長。著書に『経営力を鍛える人事のデータ分析30』(中央経済社)などがある。

林さんは経営者や人事担当者の向けのセミナーで、2035年の中堅企業の一例として、次のケースをよく紹介する。林さんがかつて自らが経営する会社のホームページに書いたコラム「2035年」の一部を抜粋する。


64歳の部長が、部下の若手社員にWeb会議で話をしている。営業部の業績の説明と、この若手社員の担当するクライアントへの新たな指示だ。若手といっても、52歳。

営業1部は、全員で25名。うち、正社員は15名で、60歳の定年再雇用社員は10名。

正社員の年齢構成は、60歳以上65歳未満が8名、50歳代が4名、40歳台が2名、30代は1名で、20代はゼロ。

部長は、52歳の社員にこう言った。”君はあと10年くらいすると、管理職になる可能性もある。そろそろ、マネジメントも意識して取り組んでくれ“


林:事例は、私が数年前に人件費の管理の件で相談を受けた会社をベースにしています。この会社が人事の改革をすることなく、2035年を向かえた時をイメージしたものです。専門商社で、社員数は300人程、創業50年近い名門企業です。こういう会社が、今後増えるのはほぼ間違いがありません。

吉田:あえてこのような事例を紹介するのは、なぜですか?

林:2つの意味があります。1つは2035年には完全な高齢社会となり、会社員の平均年齢が相当に高くなっているためです。平均年齢40歳以上の会社が増えるでしょうね。もう1つは、新卒・中途の採用戦線で多くの中堅、中小企業、ごく普通のベンチャー企業は苦戦を強いられるからです。特に優秀な20代を獲得するのは、想像できないほどに難しくなります。

今後は、仕事そのものや賃金を始めとした労働環境に、ほかを圧倒するほどの魅力がないといけない。そうしないと、30代前半までくらいの社員は見事に辞めていきます。2020年~2035年には、転職は今以上に盛んになるでしょう。

事例の52歳の社員は、2020年時点では30代半ばの設定になります。今のバブル世代(現在の50歳前後~50代後半まで)の数が異様に多いために、52歳の社員は管理職になかなかなれません。さらには、2020年の時点で後輩である20代の社員が多数いたのですが、その後、様ざまな理由で退職してしまったのです。

一流の大企業やメガベンチャーの場合は新卒採用を毎年、行っているから、ここまでいびつにはならないでしょう。入社後の定着率を上げる態勢もより一層に整えるはずです。しかし、社員数でいえば、中小や中堅、ごく普通のベンチャー企業の多くは、2035年に実際のこの事例のようになるはずです。

これからの時代の採用戦線のキーワードは、競合優位性

吉田:この事例では、バブル世代が多いために、52歳の社員はそのあおりを食うのですね。一部のメディアは、「バブル世代のリストラが今後進む」と報じます。私は、そうはならないと思っています。労働力不足は深刻ですからね。

林:バブル世代のリストラは、一部の大企業に限られた話でしょうね。少なくとも、社員数300人から500人ぐらいの規模や、それ以下の会社で大規模なリストラができるのかといえば、疑わしいものがあります。

このクラスの会社はそもそもが、慢性的な人材難ですから…。「管理職定年」にしようとしても、その代わりがいない。バブル世代が60歳以降も、事実上の管理職として残るケースは少なくないでしょう。事例の「64歳の部長」は、確実に増えてくるはずです。

吉田:新卒の採用戦線は厳しくなるのですね。

林:2035年に向けて採用戦線では、企業間の人の奪い合いが年々、し烈になります。ここ3~5年の新卒採用はその前兆ともいえますが、決して一過性のものではありません。

これからはもっと厳しくなり、労働市場において企業の採用力の優劣がものすごくはっきりします。若い人の数が大幅に減り、その少ない数をめぐり、奪い合うのですから、企業は競い合う相手を叩きつぶすしかないのです。それがいいか、悪いかは別に、現実としてそのようになります。

吉田:採用戦線で企業が特に心得るべきは何でしょうか?

林:これからの時代の採用戦線のキーワードは、競合優位性です。いつの時代も若くて優秀な人は、競合優位性の強い会社に入社しようとします。こういう会社に入るとたしかに賃金が高く、労働条件はおおむねよく、仕事もやりがいを感じるものなのです。結果を出して認められれば、待遇などの面でも大きな見返りがありうるでしょう。一定の実績を積めば、ステージの高い会社に転職するのも可能になります。

一方で、競合優位性の弱い会社には、優秀な人がますます入社しなくなると思います。20代で優秀な人がいたとしても、早いうちに転職をします。そのしわ寄せが、社に残った人にいきます。不満を持ち、20代は次々とほかへ移ります。冒頭の事例の、52歳の部長はこんな事情で生まれるのです。

吉田:厳しい時代になりますね。

林:大企業にしろ、中小にしろ、ベンチャーにしろ、今後5年から10年以内に人事のあり方は劇的に変わります。多くのエコノミストや経済評論家は、国内需要や景気の動向に厳しい見方をしていますね。私も2020年以降、企業にとってし烈な時代になることは避けられないと考えています。

2035年に向けて、今から変えていくべきです。2035年前後になって、「会社組織として機能しない」と感じるならば遅すぎます。その時代は、労働市場も変わり果てています。

今後、激烈な競争優位性をめぐる競争が発生します。人事の改革をする決断をするならば、今でしょうね。そのような思いで、冒頭の事例をよく紹介するのです。

文/吉田典史

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