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経済が悪化する今、採用は減らすべきか?ゲーム理論で考えてみた

2020.09.07

ゲーム理論とは「世の中の意思決定の仕組みを解き明かす理論」だという。『16歳からのはじめてのゲーム理論』の著者で、現在、カリフォルニア大学バークレー校で教鞭を執る鎌田雄一郎氏に、ゲーム理論とは何かイチから聞く。その1では、「テレワークになるなら郊外に引っ越したほうが得か否か?」を例に、ゲーム理論の使い方を教わった。次にコロナ状況下での採用問題について聞いた。

鎌田雄一郎/1985年生まれ。2007年東京大学農学部卒業。2012年ハーバード大学経済学博士課程修了。現在、カリフォルニア大学バークレー校准教授。専門はゲーム理論、政治経済学。既刊に『ゲーム理論入門の入門』(岩波新書)。

優秀な人が来る? 来ない?

コロナ禍は企業の採用状況に多大な影響を与えている。ここで、中規模の企業の採用担当者の、こんな質問を想定してみた。

「コロナ禍で我が社の業績は大きく低下してしまった。回復時期も読めない。来年度の新卒採用数を減らすべきか、いっそゼロにすべきか。逆に、他社も採用を絞っている今、優秀な学生が採用できそうだから増やしてみようか?」

この悩ましい問題に、ゲーム理論を使えば解は見つかるだろうか? 

「この採用担当者は優秀な学生が多く取れそうだと予想していますが、本当にそうでしょうか? ゲーム理論の基本は、相手の行動の背後にある考えを読むことです。

コロナ禍だからと門戸を広く開いている企業に「就職したい」と来る学生の背後にある考えを読んでみましょう。もちろん本当にその企業に入ることを望んでいる可能性もありますが、たまたま採用を増やしている企業にコロナ禍に乗じて今入らないと、他に行く宛てがないと思っているかもしれません。つまり、あまり優秀ではない学生である可能性がある。本当に優秀な学生なら1年ぐらい就職を待ってもいいところに行くでしょうから。と考えると、焦って採用しなくてもいいんじゃないか。

もちろん、これは考え方の1つです。ゲーム理論を使うには、採用担当者は、採用したい相手がどういう考えのもとどういうアクションを選ぶのか、すべての選択肢を想定する必要があるということです」

採用担当者の苦労がしのばれる……。肝心なのは、相手がどう出るかを予想すること。相手が何十人、何百人にもなったときはコンピュータの力、専門家の力を借りることになる。

待機児童を減らせるかもしれないゲーム理論

現実に、すでにゲーム理論は人事部門で活用されているという。

「企業人事の他にも、たとえば医者の卵である研修医と、その研修先の病院のマッチングにゲーム理論が使われています。研修医はどの医療機関で研修したいか、病院側はどのような研修医に来てもらいたいか、それぞれ希望に順位をつけて提出します。それをもとにコンピュータのアルゴリズムを回し、マッチングしていきます。そのアルゴリズムをつくるのにゲーム理論が役立っているのです。

なぜゲーム理論が役立つかというと、各研修医は、他の研修医がどのような希望表を提出するかを予想しながら、希望表を書き換えるかもしれないからです。たとえば、人気の研修先病院があるとしたら、本当はそこに行きたくても、“人気だから落選するかもしれないから第一希望に書くのはやめて、安全なところを書こう”と思ってしまうかもしれない。どのようなアルゴリズムを作るとこのような読み合いが生まれてしまうかを分析して、そういった読み合いをなくすようなアルゴリズムを作るべき。ここに、ゲーム理論が一役買っているわけです。

関連して、私は、保育園の待機児童をどうしたら減らせるかを研究したことがあります。入園希望者と保育園のマッチングが最適化されることで、待機児童が減らせる可能性がありますね」

世の中の意思決定を解き明かすゲーム理論は、社会的インフラのそこかしこで活用されているのである。

→その3「コロナ禍にも使えるゲーム理論(3)近所に競合店が出店したら?」につづく

鎌田雄一郎著『16歳からのはじめてのゲーム理論』ダイヤモンド社 1600円(税別)

取材・文/佐藤恵菜

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