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「テレワークが続くなら郊外に引っ越そうかな…」問題をゲーム理論で考えた時に導き出される答え

2020.09.05

「ゲーム理論」をご存知だろうか。名前は聞いたことがあるような、経済学の授業で習ったような? ゲーム理論とは「世の中の意思決定の仕組みを解き明かす理論」だという。とすれば、当然それはコロナ状況下においても役立つだろう。

16歳からのはじめてのゲーム理論』の著者で、現在、カリフォルニア大学バークレー校で教鞭を執る鎌田雄一郎氏に、ゲーム理論とは何かイチから聞いた。

鎌田雄一郎/1985年生まれ。2007年東京大学農学部卒業。2012年ハーバード大学経済学博士課程修了。現在、カリフォルニア大学バークレー校准教授。専門はゲーム理論、政治経済学。既刊に『ゲーム理論入門の入門』(岩波新書)。

文系脳でも使えるか?

『16歳からのはじめてのゲーム理論』のサブタイトルには「世の中の意思決定を解き明かす」と書かれている。帯には「経済学の最重要理論」「社会の意思決定とかけひきを読み解く最強の考える道具」といったフレーズが並ぶ。なんだかすごそうな理論だが、この本はそれを16歳にもわかるようにネズミ親子のストーリーで説明したものだ。

始めにことわっておくと、記者はゲーム理論を学習したことがなく、数学にも弱い。16歳にもわかるように書かれている本に、ところどころでつまずいた。そんな文系脳にもゲーム理論は使えるのだろうか? それが一番の興味だった。

アメリカから帰国中のゲーム理論研究者、鎌田雄一郎氏に、まずゲーム理論のアウトラインを聞く。

「ゲーム理論は、大学生が経済学の授業で習うことが多いので経済学の一部と思われがちですが、私たち研究者はあまりそう思っていないんですよ。ゲーム理論は人々が社会の中で意思決定をする問題だったら何にでも使えます。経済学はその応用先のひとつです。

社会で生きるということは、他の人が何をしているかが自分の意思決定に影響を与え、自分がしたことも相手に影響を与えます。ゲーム理論とは、社会の中で生きる人が、どうやって考え悩み、どうやって意思決定するのかを研究する学問です」

具体的にはどのように使う理論なのか。このコロナ状況下においてビジネスパーソンが悩み迷い、考えているテーマで、ゲーム理論的な考え方を教えてもらった。

テレワークになったので郊外に引っ越したほうがいいかな問題

東京23区内の居住者で、こんなことを考えている人はいないだろうか。

「新型コロナ感染予防のため会社がテレワークを導入した。現在、東京の賃貸マンション暮らし。会社にはコロナ収束後もテレワークを導入する気配がある。これを機に、いっそ、家賃の高いマンションを引き払い、郊外に広い一戸建てを購入するのもいいかな……」(Aさん・30歳)

この考えを鎌田氏からゲーム理論の観点で解説してもらった。

「今後リモートワークになりそうだから、郊外のいい感じの家に引っ越そうか、ということですね。この場合、社員の多くが都市部に住んでいるとして、他の社員がどう動くかがカギじゃないでしょうか」

ゲーム理論はその名のとおりゲームのように、つまり“戦略的に”考える。戦略的状況で、相手がどんな手に出てくるかを予想し、それに対してベストな反応は何かを考える。この「戦略的状況での行動=相手が何をするかに対するベストな反応」はゲーム理論のもっとも基本的な概念であり、すべての人々がそのような行動をとっている状態を「ナッシュ均衡」と呼ぶ。

「このケースでは“ナッシュ均衡”が2つあるでしょう。ひとつは社員みんなが都心に残っている状態。理由は、ひとりだけ郊外に行きたくないとみなが考えるから。もうひとつは、社員みんなが郊外に引っ越す状態。理由は、ひとりだけ都心に残っていても仕方ないと考えるからです。

ナッシュ均衡が2つあるとき、どちらが実際に起きるか、予想するのは難しいですね。ただ、ひとりだけ郊外に行くときのヤバイと思う気持ちと、ひとりだけ都心に残るときのヤバイ気持ちとどちらが深刻かというと、前者だと思います。このようなときに、全員が都心に残る方の均衡に落ち着く可能性の方が高いと予測する論文があります。

しかし、そこに社長が郊外に引っ越す人に補助金を出すなどのインセンティブを与えたらどうなるか。「ヤバイ」と思う気持ちに変化が見込まれるので、状況が変わってくると思います」

Aさんは「テレワークが当たり前になるなら郊外でいい」と考えたわけだが、ほかの社員のアクションに加え、取引先のアクション、家族がいるなら家族のアクションをすべて予想し、それぞれのアクションの可能性ごとにベストな反応を考える------ことがゲーム理論を使った考え方である。しかし、それだけ考えるのはずいぶん大変なことだ。

「そうですね。ゲーム理論の授業で初めに教えられるのが、この件の利害関係者はだれか、その人たちが各々どういうアクションの選択肢を持っているのか、そして利害関係者のそれぞれのアクションのもとで各々がどれだけ得をするのか、をすべて書き出すということです。それによってベストな反応が予測できます。社会状況をそういう目で見るだけで、けっこう考え方が広がると思います」

文系脳がゲーム理論を使うのは手強そうだが、役立ちそうでもある。続いて、コロナ状況下の採用問題について聞いた。

→その2「コロナ禍にも使えるゲーム理論(2)採用は減らしたほうがいいか? 」につづく

鎌田雄一郎著『16歳からのはじめてのゲーム理論』ダイヤモンド社 1600円(税別)

取材・文/佐藤恵菜

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