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入社4年目社員の本音「一件の成約の重み知っているからこそ、できる提案があるはず」マイナビ・長谷川真央さん

2020.08.03

 昨今の若い連中はSNSばかりで、体験も少なければ人間との付き合い方の訓練もできておらん。中間管理職の人のそんな小言を耳にする。だが、20代も楽ではない。仕事を通して経験を積んでいるし、社内や取引先との密な関係に悩むことも多い。

 若手読者には同世代がどんなポジションで悪戦苦闘しているか。中間管理職の人には、別な角度で若手社員を見るきっかけになればという企画である。

 第63回は株式会社マイナビ ウエディング情報事業部 イノベーション推進統括部 ブランド戦略部 企画推進課 長谷川真央(入社4年目・27歳)だ。人材情報企業のマイナビは、人とのつながりを専門にする業種として、ウエディング情報も手掛ける。長谷川さんは全国約1600の結婚式場を紹介する「マイナビウエディング」のサイトの制作と運営に携わる。

 結婚式に三密は付き物というイメージ。ご多分に漏れず、ブライダル業界もコロナウイルスの影響を受けている。主に後編ではそこも含め彼女の奮闘ぶりに触れていく。

”ナシ婚“を減らしたい

 結婚式を挙げるカップルは約半分というというご時世。結婚式は費用が掛かるというのが一番の理由だが、近年はチャペルでタキシードとドレスで写真を撮るだけの式や、子供を含めたファミリーウエディング。1次会と2次会の間の1.5次会のような式等、今はコロナ対策も含め、様々な挙式の形が用意されている。彼女は“ナシ婚”を少しでも減らそうと、この会社を選んだという。

「就活の説明会でウエディングの企業のPR動画を見たのがきっかけでした。新婦が父親への感謝の手紙を読むシーンに感動して。両親に泣きながら感謝を伝えるって一生に一度の機会だろう」人生の一つの節目となる結婚式の大切さが彼女の心に刺さった。

「結婚式場に就職して、ウエディングプランナーとして何十年働いたとして、お世話できるのはせいぜい年間50程度。でも、今の会社なら大勢の人に結婚式の良さを薦めることができます。“ナシ婚”を減らしたいという思いで働くなら、ウエディングに関する情報を紹介するサイトの仕事かなと」

 最初の配属は営業で主に結婚式場を回り、掲載費という形で年間契約をお願いする仕事だ。

「私たちのゴールは、マイナビウエディングのサイトを訪れた人が式場の見学の予約をして、相談会に足を運ぶことですが……」当然、失敗談はある。

入社1年目から撤退企業が続出

「うちのサイトに掲載したけど、効果が出ずにウエディング事業から撤退してしまったという企業が出るとつらいです。式場によってそれぞれ特徴がありますが、その式場はチャペルや宴会場が弱かった。でも、スタッフの質は高くて、お客様の満足度も高かったんです。

 うちのサイトには360度のパノラマビューや、記事の特集等のオプションもあるし、写真も数多く使える。コンテンツが多いですから、ソフト面で訴求できる企画を提案できればよかったのですが、入社1年目だったので……。

 式場側の担当者の方とは密に連絡をとりましたが、結局ウエディングの事業から撤退し、ホテルとして宿泊のみの業態にすると。ウエディング事業から撤退した企業対して、私としては申し訳なさでいっぱいでした」

 ところが彼女の場合、入社1年目から2年目にかけ、担当した企業のブライダルからの撤退が、3~4件続いたのだ。これには参った。

今、辞めるべきではない

「私が担当することが、マイナスになっているんじゃないか、そもそも私はウエディングに向いてないんじゃないか……。あの時は会社を辞めようかなと思いましたね」

――そのことを上司に相談した?

「はい」

――上司のアドバイスは?

「今、辞めるべきではないと」

 サイトを訪れた人に見学の予約をしてもらい、式場の相談会に足を運んでもらう、それが自分たちの仕事だが、この式場で挙式を上げるという成約につながらなければ、企業の収益にはならない。契約の解除や企業のウエディングからの撤退を経験して、そのことが身に染みてわかったと思う。一件の成約の重みをわかっているからこそ、できる提案があるはずだ。

 結婚式場でウエディングプランナーの経験もある、30代の女性の上司は、そんなことを彼女に諭した。

 やるしかない――気合は入ったが、そのモチベーションがサイトへの契約企業の伸びや、掲載費の増大につながるわけではない。入社2年目以降も試練は待っていた。

突然の契約更新はせずの告知、“えっ!?”

「ウエディングの企業との掲載費の契約は年単位ですが、3つの結婚式場の契約をしてもらっている企業を上司から引き継いだ時のことです」

 そのブライダル企業は大手だった。それまでPVも式場の相談会への予約件数も、数多く獲得していた。次の契約の時にはオプションを提案しよう。例えばもっとサイトを訪れるお客を増やすために、別の事業部の働く女性を対象とした“マイナビウーマン”のサイトに、告知を掲載してみてはどうかとか。彼女なりにいろいろと考えていた。ところが……

「マイナビウエディングさんとは、次の契約はできませんから」と、契約更新のタイミングで突然、先方の担当者から告知をされて。

「えっ!?」

 青天のへきれきだった。

「びっくりしましたよ。これまで掲載していた3つの結婚式場のすべての契約を解除されたら、数百万円の売り上げが消えてしまうことになるし。第一、すべて契約解除となれば、その企業さんとの関係が切れてしまう」

 何とかしなければならない。さて――長谷川真央さんの奮闘ぶりと、そこから得た教訓は後編で。

取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama

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