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「仕事を自分で見つけろ!」という呼びかけは正しい言い分なのか?

2020.07.28

■連載/あるあるビジネス処方箋

 マスメディアで活躍する識者の中で、特に創業経営者やコンサルタントなどは「仕事を自分で見つけろ!」的なことを口にする傾向がある。言わんとしていることはわからないでもないが、会社員は経営者ではない。フリーランスでもないし、自営業でもない。組織の一員であり、組織の論理に従わざるを得ない人たちだ。その意味で、「仕事を自分で見つけろ!」は説得力に欠ける言葉に私には見える。

 今回は、そんな言葉にかねてから強い疑問を感じる私の考えを紹介したい。会社員経験の浅い人が、「仕事を自分で見つけろ!」といった呼びかけに悪い影響を受けないことを願い、書いてみた。

まず、仕事があり、その次に社員

 通常、新卒や中途の採用は社内に新たに人を雇う理由や必然性がある。また、そうでないといけない。たとえば、「数年以内に営業力を強化し、他社と競い合うために20人の部員が必要。だから、来年は新卒で15人、中途で5人を雇う」といったものだ。つまり、まずは仕事があり、その後に人がつく。

 仮に人を先にして、後に仕事とすると、余剰人員が多数現れる可能性が高い。その仕事が本当に発生するのか、正確にはわからないからだ。そんな無責任な姿勢で採用するのは、ある意味で株主への背信行為になりかねない。「企業の社会的責任の放棄」とも言えるだろう。通常は、余剰人員が可能な限り生まれないように計画を慎重に練り、確実な採用をするものだ。大多数の大企業や中堅企業、メガベンチャーはこのような計画のもと、採用を行う。

 つまり、人事において一定レベル以上の企業ならば、「個々の社員が各自で仕事を見つけろ!」なんてありえないし、する必要もないと私は思う。それにも関わらず、「社員が見つけるべき」とするならば、そもそもどのような考えで採用計画を練り、何を基準に雇ったのかを私は尋ねたい。取材をすると中小企業やベンチャー企業の場合、このあたりに問題が多い。採用に明確な考えがないまま、雇っているケースがある。20∼30代社員の扱いをめぐり、解雇や退職勧奨が頻発し、労使紛争が中堅、大企業、メガベンチャーと比べて圧倒的に多い理由の1つはここにある。

採用、配置転換がずさん

 まず、仕事があり、その後に人がつく。この構図は同じ部署内での配置転換でも、他部署への人事異動でも言える。たとえば、営業1課から営業2課に異動した際、そこで担当する仕事が通常はある。しかも、その難易度や求められるスキルや経験は、営業2課に異動した社員が営業1課にいる時点である程度は兼ね備えていることが必要になる。これらの条件を満たしていないならば、異動は避けるべきだろう。それでもなおも異動させる場合は、新たな部署で経験の浅い社員を受け入れる態勢を早急に整えないといけない。

あるいは、営業部から経理課へ異動になるとする。この場合、経理課でその社員が担当する仕事があり、教える上司や先輩がいないといけない。営業をしてきた人が経理課へ行き、すぐに仕事ができるわけがないのだ。漫然と仕事をあてがうだけでは限られた時間内で一定水準の仕事力には達しないだろう。こういう態勢が経理課にないのに異動をさせ、「自分で仕事を見つけるように」と突き放すのはあまりにも無理がある。

権限がない社員には土台、ムリ

 仕事を見つけ、それに取りかかるためには、その社員に一定の権限が求められる。通常は、大多数の社員に何らかの仕事があるものだ。それにも関わらず、さらに新しい仕事を見つけさせるならば、それができる権限や他の仕事の裁量権を与えないと、成り立たない。たとえば、新しい仕事を見つけさせるならば、現在の仕事をする時間が少なくなる。これすら、上司が調整しない中、部下に「自分で仕事を見つけろ!」と迫るのは無理がありすぎる。

 こういう事例は社員数が300人以下、特に100人以下の会社ではよく見かけるが、会社として杜撰な採用をしたことがそもそもの問題なのだ。個々の社員には、その意味での非はない。むしろ、被害者の側だろう。結局、経営者などの問題点のすり替えにほかならない。

 日頃から、人事の設計図ができていないのだ。つまり、この社員をなぜ雇い、いつまでにこんな具合に育成し、このレベルに達してほしいといった青写真である。これらは個々の社員が考えるものではなく、まずは会社の社長や役員、管理職が持つべきだ。上層部がその設計図がない中、下位の一般職(非管理職)が真剣に考えるなんてありえないと私は思う。考えたところで、何の意味があるのだろう。

 経営者が「仕事を自分で見つけろ!」と呼びかけるならば、まずは自社の人事のあり方を見つめ直すことを提起したい。このあたりは、実は労使紛争になりやすいところであり、大切なのだ。読者諸氏は、上司から「仕事を自分で見つけろ!」と言われていないだろうか。真剣に聞き入れ、見つからないと自信をなくしていないだろうか。あなたに非はないのだ、と私は繰り返し言いたい。一般職の仕事を見つけるのは、経営者や役員、管理職なのだ。そのために高い報酬や賃金を受け取っているのではないか。

文/吉田典史

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