2018年より〝Supreme=最高〟の名とともに試験走行が繰り返されてきた東海道新幹線「N700S」。来る2020年7月1日、数々のテストを踏まえた量産型車両がついに私たちを乗せて走る日がやってくる! 13年ぶりのフルモデルチェンジ車両となる「N700S」は、本当に「最高の」新幹線なのか!? じっくりとそのスペックを見ていこう。
「N700」ヒストリー
2007年に誕生したN700系。この車両から東海道新幹線は新たな時代に入った。N700系はカーブの多い東海道新幹線の中で、乗り心地と速達性向上を狙い、曲線通過時に車両をたった1度だけ傾ける「車体傾斜システム」を日本の新幹線で初採用。サービス面も全席禁煙化をしつつ、ビジネスユースの多い利用背景から「喫煙ルーム」も初登場した。窓側座席を中心に多くのモバイル用コンセントを搭載した新幹線もN700系が元祖だ。N700系の「N」にはNew、Nextの意味が込められている。やがてN700系はブレーキ装置や走行装置などを「進化=Advanced」した「N700A」となり、今では東海道新幹線の全列車がこのN700Aで運行されている。
奥にとまるN700Aと並ぶN700S。これからはこの光景が日常になる。
気になる「最高の」客室と「最高の」乗り心地
今回の車両公開は基地で停止している状態ではなく、東京から新大阪までのぞみ号のダイヤ相当で運行されながら実施された。これまでにも「乗り心地にこだわった」と、繰り返しN700Sの開発メンバーの話を聞いてきたが、実際に走りながらの報道公開とあって、乗り心地も同時に披露した形になった。このあたりにもJR東海の「N700S」への自信を垣間見ることができる。
N700Sはグリーン車3両(200名)、普通車13両(1123名)の合計定員1323名となる16両編成だ。ご存じの方も多いと思うがこの構成はN700AもN700Sも全く変わらない。これは異常時に運用を変えざるを得ない状況時などにどの編成をどの列車に充当しても、指定された座席位置などを調整する必要がない上、ダイヤの正常化などが早く容易にできるメリットがある。
また、N700AとN700Sは走行機器などに違いはあるが、基本的な走行性能上は同じになっており、どちらかが特別に速い「のぞみ号」になったりするわけではない。「せっかくの新型車両になのに速くないの?」と思うかもしれないが、N700Sだけが高速走行しても他の列車に追い付いてしまったり、N700S専用のダイヤを構成するのは、大量の列車を運行する東海道新幹線の性格にマッチしないので、このような設計になっている。
まずは普通車の車内を見ていこう。車内に入るとN700Aに比べてすっきりとした印象を受ける。「視覚的ノイズを徹底的に排除した」という車内には、N700Aのようにエアコンの吹き出し口や、放送用のスピーカーなどが一切見当たらない。
放送用のスピーカーは高指向性のスピーカーを採用し、デッキと客室を隔てる壁に目立たない形で搭載し、天井からスピーカーという視覚的ノイズをなくした。
空調については、窓枠の隙間から吹き出るようになっている。最近は特に気になる車内換気の性能だが、N700Sもこれまで同様に約6〜8分で車内全ての空気が新しい外の空気と入れ替わるようになっている。東海道新幹線における新型コロナ対策についてはこちらの記事もチェックしてみて欲しい。
こちらはN700Aの普通車。天井やエアコン吹き出し口などに大きな違いがある。