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「飼育員にとって動物の死は飼育改善にどうつなげるられるかを意味する」多摩動物公園・渡部浩文園長

2020.05.23

開園62周年を迎えた多摩動物公園は上野動物園の約4倍の広さである。広い園内では森林浴を兼ねて展示舎を観て回れる。動物園のシリーズ、第20回は都立多摩動物公園の園長を紹介する。渡部浩文園長(52)、獣医師である。

現在、都立動物園の飼育に携わる職員は、公益財団法人東京動物園協会が採用するケースがほとんどだが、以前は都庁が動物園の職員を募集していた。「僕の時は動物園関係の募集がなかったので」渡部園長は東京都衛生局生活環境部に採用され、狂犬病予防・動物愛護及び管理に関する業務、食品衛生関係業務等を担当。

01年に管理職試験に合格。都庁の他の部署の課長職を歴任し、11年8月に多摩動物公園飼育展示課長に着任。

「獣医として野生動物に興味がありましたね。チャンスがあれば動物園の仕事をしてみたいと思っていました」飼育展示課長の主な仕事は、動物を展示する業務の統括、新しい動物の導入の判断、展示場のリニューアル等、飼育・展示のマネイジメントである。

飼育員には今更ながら脱帽

課長たるもの、多摩動物公園で飼育されているすべての動物を、把握しておくべきだと当初は考えた。渡部氏のそんな思いは、飼育員の動物に対する幅広い知識や、愛情を改めて認識することにつながった。

上野動物園の約4倍の広さの多摩動物公園は、キリン、ライオン、チンパンジー、オランウータン等々、群れでの展示が開園当時からのコンセプトだ。例えばオオカミの場合、個体識別はもちろん、「あれが群れのリーダーでこれとペアになって、子供はこういう順番で生まれていて」等、飼育員はオオカミに関して熟知している。オオカミだけではない。それぞれの群れの飼育員は、各飼育動物の性格や「群れの中には闘争があって、この個体とこの個体は一緒にできない」等々、その知識に圧倒される思いだった。

2年半、多摩動物公園に務めた後、上野動物園の飼育展示課長に異動になるが、「上野では、飼育員とともにニホンライチョウの卵の孵化の仕事をしました。最初の年は5羽孵りましたが、エサを受けつけない個体には点滴をしたり。つきっきりで懸命に世話をする飼育員の熱意には、頭がさがる思いでした。

孵化した5羽とも死んでしまうのですが、担当の飼育員はがっかりしながらも、次こそはと仕事に取り組んでいく。飼育員にとって動物の死は、飼育の改善にどうつなげるかを意味していると感じましたね」

一方で、後編で詳しく触れるが、昨年夏のインドサイ舎での事故は飼育員の飼育の仕方や、野生動物との距離感の取り方等を今一度、見直す課題も投げかけた。

タスマニアデビルの展示は多摩だけ

珍獣の展示は動物園の一つの目玉でもある。多摩動物公園での課長時代、渡部氏の印象に残る出来事は、タスマニアデビルの導入だ。日本で現在、タスマニアデビルを見られるのは多摩動物公園だけである。

「来日したタスマニアデビルの研究者が多摩動物園内の施設で、講演会をしたのがきっかけでした。オーストラリアは他の多くの国と同様に、自国の希少動物を海外に出しません。そこで、当園では国内で初めて繁殖に成功し、6ヶ月以上の飼育を経た動物に贈られる『繁殖賞』を100個近く受賞していること。大きな動物から小さな動物まで、丁寧な飼育を心がけていることをアピールして。

動物を通してタスマニアを知ってもらう、そんな役割を担う目的で国外に出すという方法で、受け入れ条件が整ったのです」

タスマニアデビルのお披露目の2016年6月には、上野動物園に異動していたが、彼がタスマニアデビル導入のきっかけを作った。

シャンシャン誕生の現場責任者

多摩動物公園から上野動物園に移った渡部氏には、大きな仕事が待っていた。ジャイアントパンダのシャンシャンの誕生である。 

「僕が上野動物園に着任して3年目でした」

飼育展示課長として、現場の責任者を担った。母親のシンシンは2012年7月に出産を経験しているが、6日後に赤ちゃんは肺炎で死んでいる。24年ぶりのパンダの誕生が、国民的な話題になっていただけに、当時の園長の涙ながら会見は印象的だった。

同じ轍を踏むわけにはいかない。誰もがそう思うシンシンの2度目の妊娠だった。

「パンダは妊娠の兆候があっても、擬妊娠ということがあります。シャンシャンが誕生するまで心配でした」

――当時は何名の飼育員さんで、パンダを担当したのですか?

「5名で班を作り飼育を担当しました。2月末に交尾をしてからは出産に備え、職員がローテーションを組み、泊り込んで観察する無体制を作りました。出産直前からは24時間体制で観察しまして。出産後は僕も泊まりました」

――そして2017年6月12日、シンシンが出産。

「多くの人たちの期待の中で、無事に生まれた。感慨深かったですね。でも、ホッとしたのは一瞬でした」

スタッフはしっかり育てることに集中した。馬や牛や多くの哺乳類は、誕生から数時間で立ち上がり自分で母乳を飲むが、パンダの赤ちゃんはネズミほどの大きさで体重はおよそ140g。皮膚も弱いし、非常に未熟な状態で生まれる。12年は出産から6日でパンダの赤ちゃんは死んでいるのだ。

これからが勝負だ……、渡部飼育展示課長と5名のパンダ担当の飼育員たちは、身が引き締まる思いだった。

明日公開の後編は、シャンシャン成長を見守るエピソードからはじまる。乞うご期待!

取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama

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