小学館IDをお持ちの方はこちらから
ログイン
初めてご利用の方
小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼントにお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
新規登録
人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

【リーダーはつらいよ】「ベテラン、職人気質、部下のマネージメントで学ぶことは多い」丹青社・田中勇太さん

2020.04.23

中間管理職の仕事ぶりを紹介していくシリーズ、新型コロナウィルス禍で、チームをまとめる課長の皆さんもご苦労されていることであろう。この連載を通して中間管理職の方の責任感の強さ、部下を育てようとする熱い思いをヒシヒシと感じてきた。ニッポンの課長さんは大したものである。そんな課長さんにエールを贈る思いを込めて。

シリーズ第23回は株式会社丹青社 コミュニケーションスペース事業部 プロジェクト統括部 制作部 制作課 課長 田中勇太さん(43)。丹青社は商業空間やイベント等の文化空間の調査・企画、デザイン、設計、制作、施工、運営までのプロセスを一貫してサポートする会社。日本のディスプレイ業界の最大手のひとつだ。建築科出身の田中さん、建物の外観より内部の制作に興味があった。

デザイナーチームの思いをどう実現するか

「新入社員で配属されたのが、イベント空間を制作するこの部署です。他の部署に異動することなく、今に至っています」

田中課長の部署が行う主な仕事は、お客が希望し、デザイナーがそれに基づいて描いたプランを具体的に形にすることだ。限られた予算や工期を考慮し、部材や施工方法等を決め、制作会社に施工図を依頼し、安全性を担保したうえで、協力会社と制作の調整をする。現場監督も担うが、前段階として打ち合わせを重ねる調整業務のウェイトが大きい。

若い頃の部署の上司は、「まず現場に行ってモノを見ろ」という指示が多く、イベント空間等の制作現場によく通った。

「現場の整理整頓や資料作り。地方の現場で近くに店がない時は業者に弁当を頼み、現場に配達してもらって。注文の数を間違えて、お客さんの弁当が足りなくなったこともありましたね」

30代で印象に残る仕事は2012年、ZOZOTOWNが幕張メッセの3ホールを使い、開催したファッション展示会「ZOZOCOLLE」だ。EコマースのZOZOTOWNの初めてのリアルイベントだった。

多種多様なブランドのイメージを社内のデザイナーチームは「コンテナで表現したいです」と提案した。彼らの思いをどうすれば実現できるか。

駐車場のトタンの屋根によく使われるガリバリウム鋼板を用い、光沢のない黒を基調にコンテナ風のブースを会場に配し、価格とクオリティを両立させた。

通販サイトと連動した商品をプロジェクターで映し出す、映像演出を取り入れたが、「えっ、そんなにでかいの…」制作に携わる田中が、いささか驚いたのが高さ約8m横20mのスクリーン。イベントでよく使われるトラスというシステム部材と木材を使い、会場の空間に巨大スクリーンを実現させた。

事前の綿密な打ち合わせを経て、会場の幕張メッセでは3日ほどで完成させた。インスタ映えするいい雰囲気の会場になったと、彼は自負している。

ベテランの部下は頼もしいのだが…

田中が今のポストに就いたのは、このイベントの少し後だった。現在、組織上の部下は3名だ。近年ではどこの職場も、部下が年上ということも珍しくなくなった。彼の部下の一人は60代で、田中が入社した当時の大先輩である。部長まで昇進し役職を外れ、今はエキスパートとして田中の下で仕事をする。

大先輩は体も大きく声もでかい。よく食べて実にパワフルな人だ。経験豊富なベテランで、培った協力会社や制作会社のネットワークを生かして、どんどん仕事を進める。上司としては実に頼もしい部下なのだ。

一方で、ベテラン部下の仕事への思いが、お客やデザイナーと違う方向に行かないか、田中は常に意識をしている。例えば、高級感のある書店のお客に対して、デザイナーは店舗の床を大理石にすることを提案し承諾を得た。施工の担当になったベテランは、大理石は高価だしツルツル滑る。それより大理石に似た人工のものを使えば、リーズナブブルで滑り止めの加工もできると考えた。

実に筋が通った発想だ。だが、変更するにはサンプルを比較し実験して、承認を得るプロセスを経なければならない。それを省くとクレームにつながる。お客にすれば機能的かもしれないが、イメージしたものと異なるではないかと。お客の同意なく勝手に変更して工事を進めると後々、床を大理石にやり直せとクレームが入った場合、それに従わなければならない。工事をやり直さなければならなくなったら当然、田中も上司から叱咤される。

彼は言葉を選び、「事前に言ってください。お願いしますよ。その辺、丁寧にしましょう。一歩引いた目で見て、承認のステップを意識するようにしましょうね」次への改善点として、そんな言葉をかける。田中の指摘に対して、大先輩の“やっちまったな…”という反省の気持ちは伝わってくる。

時として、「田中さん、お客様への承認のほうは頼むよ」と、ベテランの部下から要望されることもある。「わかりました。その手順は私が引き受けましょう」と、部下をフォローするのも課長の仕事だと、田中はうなずく。

職人気質はこの会社ならでは

年齢を重ねると、ますます職人気質になっていくのは、彼にもよくわかるのだ。

部下には50代の先輩もいる。この先輩も誰もが一目置くスペシャリストだ。

会社は看板の付け替え工事も業務にしている。“サイン”と呼ばれているこの仕事は、例えば銀行が統合して看板を付け替える時は、受注した広告代理店から会社が仕事を受けて、何十店舗の看板付け替えの施工を担当する。ベテランの部下はこのサインの仕事に長けている。エキスパートなのだ。

行政への申請、看板は金属製か、アルミ製か。発光面は布のようなものか、アクリルのような樹脂か。ベテランの部下はサイン制作のノウハウに熟知している。この手法が得意なのはA社、これならB社と業界にも精通している。

サインの仕事はベテランに任せておけば間違いない。安心である。いい仕事をするのだが――その一方で、職人気質の持ち主でもあるのだ。

明日公開の後編では、ベテランの職人気質に、いささか往生させられるエピソードからはじまる。実はかく言う田中課長も、ものづくりの会社ならではの職人気質を、うちに秘めているのだ。そのことも後編で詳しく。

取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2024年3月15日(金) 発売

DIME最新号はデザイン一新!大特集は「東京ディズニーリゾート&USJテーマパークの裏側」

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第6091713号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。