目次
有給を取得しにくい職場にいる場合は、義務化に関する理解を深めれば、働きやすい環境への改善につながる可能性があります。有給休暇義務化がいつからどのような理由で始まったのかなど、背景や内容を解説します。
有給休暇義務化はいつから始まった?
働き方改革の一環として定められた有給休暇の義務化は、いつから始まっているのでしょうか。
企業規模に関係なく施行が開始されていることもチェックしましょう。
2019年4月1日施行
労働基準法の改正により、2019年4月1日に有給休暇の義務化がスタートしました。対象となる従業員に対して、企業は年5日の有給休暇を確実に与えなければなりません。
正社員やパートタイム労働者などの区分に関係なく、一定の要件を満たした全ての労働者に対し、有休が付与されます。
ルールに従わない企業には、労働基準法違反により罰則が科されることも特徴です。事業規模にかかわらず、違反した企業には、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。
出典:働き方改革関連法解説(労働基準法/年5日の年次有給休暇の確実な取得関係)
中小企業でも猶予は認められていない
有給休暇義務化の根拠となっている『働き方改革関連法』は、2018年6月に衆議院本会議で可決・成立した法律です。
働き方改革関連法の成立により、8本の労働法が改正されました。それぞれの法律は2019年4月1日より順次施行され、中小企業に適用が猶予されているものもあります。
しかし、有給休暇の義務化は、中小企業でも施行時期の猶予が認められていません。大企業と同様に、中小企業で働く人も、2019年4月1日から義務化の対象となっています。
義務化の背景と内容
有給休暇の義務化は、どのような背景から生まれたのでしょうか。制度の内容もあわせて理解しておきましょう。
有給取得率の低さと働き方改革
強制的に休暇を取得させる制度が作られた背景には、日本の労働者がなかなか休みをとらないことへの懸念があります。
独立行政法人『労働政策研究・研修機構』の調査資料によれば、2016年度の有給休暇取得日数は、諸外国の25~30日に対し、日本は18.2日しかありません。
日数が少ないだけでなく、有給休暇消化率にも差があります。厚生労働省の『労働条件総合調査』によれば、2018年における日本の有給休暇取得率は52.4%です。
『エクスペディア・ジャパン』の調査では、海外における2018年の有休取得率は、フランスやドイツが100%、イタリアが75%となっており、日本取得率の低さが分かります。
政府による働き方改革の推進も、有給休暇義務化の要因です。労働者が意欲や能力を存分に発揮できる環境を整えるために、働き過ぎを防ぐ意図が込められています。
出典:有給休暇取得率3年連続最下位に!有給休暇国際比較調査2018│エクスペディア
付与の条件と日数
有給休暇は、「入社日より6カ月以上継続して雇われている」「全労働日の8割以上出勤している」の両方を満たしている労働者に、最低年10日付与されます。
パートタイム労働者などの場合は、「所定労働時間が週30時間未満」「週の所定労働日数が4日以下または年間の所定労働日数が216日以下」の両方が、有給休暇の取得条件です。
このうち、最低10日の有休を付与されている労働者が、義務化の対象となります。対象となる労働者に対し、企業は年5日の取得時季を指定する必要があります。
したがって、企業における全ての従業員が、義務化の対象となるわけではありません。
出典:働き方改革関連法解説(労働基準法/年5日の年次有給休暇の確実な取得関係)
いつからいつまでに取得するか等の規定
有給休暇義務化に関しては、基準日や前倒しでの取得など、いろいろな規定が定められています。特に理解しておきたい、重要な規定について解説します。
基準日は入社から半年
フルタイムで働く労働者が有休を得る条件の一つに、「入社日から6カ月継続勤務していること」があるのは前述した通りです。
この「入社日から6カ月経過した日」は、正社員が初めて有休を取得できる日であることから、「基準日」と呼ばれます。
有給休暇の義務化により、基準日から1年経過するまでの間、企業は条件を満たした労働者に5日の有給休暇を確実に与えなければなりません。
前倒しでの取得について
基準日より前倒しで10日以上の有休を付与する場合、企業はその労働者に対し、付与日から1年以内に5日の有休を確実に与える必要があります。
入社した年と翌年とで有休の付与日が異なり、年5日の指定義務が発生する期間が重なった場合は、1年目の基準日から2回目の1年間が終了する日までの長さに応じて有給休暇日数を按分比例し、当該期間に取得させることも可能です。
10日のうち一部を基準日より前倒しで付与した場合は、付与日数の合計が10日に達した日から、1年以内に5日の有休を与える必要があります。
繰り越しや時効について
労働基準法第115条には、賃金や災害補償その他の請求は、それらの権利を行使していない場合、2年間有効であると規定されています。
このことから、未消化の有休は、翌年まで繰り越しできると解釈されています。
同様の理由により、有休の時効も2年間です。ただし、2017年の民法改正により消滅時効の期間が1年から5年に延びたため、労働基準法の消滅時効も5年に延ばそうという動きがあります。
なお、取得を認めない有休の買い取りは違法ですが、退職時などによく見られる日数に応じた手当の支給は、違法ではないとされています。
出典:労働基準法
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構成/編集部