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株主総会の開催や総会への招集通知の発送は、法律で定められた義務です。招集通知にミスがあると、株主総会のやり直しなど大きなトラブルになることもあります。株主総会や招集通知の内容、発送方法などを適切に把握して、滞りなく準備することが大切です。
まずは株主総会の仕組みを知ろう
社会人であれば、株主総会が行われていることを知っている人がほとんどでしょう。しかし、実際にどのような仕組みなのか知らない人もいるのではないでしょうか?大まかに株主総会の仕組みを把握していきましょう。
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株主総会開催は義務
そもそも株主総会は会社側の自己都合で開催非開催を決定することはできません。株主総会の開催は、会社法によって会社に義務付けられています。
会社の実質的な所有者は、出資者である株主です。株主は資金を出資する対価として、経済上の利益を受け取る『自益権』と、会社の経営に参加して重大な決定をする『共益権』が与えられます。株主総会は会社の基本的な経営方針や重要事項を決める大切な場であり、株主の議決権は『共益権』の中心的役割を果たします。
株主全員があらかじめ書面などで承認すれば、株主総会が開催されないこともありますが、基本的に「開催は義務」と覚えておきましょう。
株主は議決権を持つ
会社法の定めにより、株主総会では、多岐に渡る議決が行われています。
例えば、役員の選任や解任に関する議決権があります。会社の実質的な所有者は株主であり、役員は株主から経営を任されている立場のためです。
また、会社の解散や吸収合併など会社の組織の変更に関することも株主総会において、議決という形で株主の同意を得なくてはなりません。さらに、役員の報酬額や剰余金の配当、新株発行など、株主の利害に関することも含まれます。
「議決権」とはどういう意味?ビジネスでも役立つ多数決原理の基本
議決には定足数を満たす必要がある
株主総会での議決は多数決によって行われます。株主それぞれが保有している株式に応じて議決権を有しており、総会を成立させるためには定足数を満たす必要があります。
決議内容により大きく『普通決議』『特別決議』『特殊決議』の3形式が存在します。そして、可決に必要な定足数は議案の重要度によって段階的に定められています。
基本的に株主総会の決議は『普通決議』で行われ、出席株主の過半数の同意により可決されます。会社の存続に関わるような解散や事業の譲渡、あるいは役員の解任などの重要な決議については『特別決議』となり、出席した株主の2/3以上の賛成で可決されます。
さらに重大な決議は『特殊決議』と呼ばれる最高基準の決議に掛けられます。ケースによっては、出席したすべての株主の同意が必要な場合もあります。
株主総会の運営担当者は、できるだけ多くの株主に出席してもらう、もしくは委任状を提出してもらう必要があります。時間的余裕も持って準備を進めましょう。
株主総会開催前に株主へ招集通知を送付
株主総会の運営担当者は、株主総会を開催するに当たり、株主に『招集通知』を発送する必要があります。招集通知とは一体どのような文書で、なぜ義務とされているのか、また発送する対象の株主は誰なのか解説します。
招集通知とは
会社側は株主総会を開催するに当たり、招集通知を発送しなくてはなりません。通知には株主総会開催について必要な事項がまとめられています。
招集通知の主な役割は、二つあります。まずは1人でも多くの株主に参加してもらうこと、さらに株主が総会で何が議論されるかを適切に把握した上で参加できるようにすることです。
権利落ち日に株を持っている株主が対象
『定時株主総会』と『臨時株主総会』では、招集通知を送る株主の対象が異なります。
定時株主総会では、指定された総会の基準日に株主名簿に記載されている株主が対象です。臨時株主総会では、その都度設定される基準日の2週間前までに公告する必要があります。そのため、その時点で株主名簿に記載されている株主が対象になります。
なお、株主の権利を得るには、企業が定める権利確定日に株主として株主名簿に記載される必要があります。株主名簿に記載されるには、権利確定日から2営業日前の『権利落ち日』に株を持っている必要があります。権利落ち日以降に株を得ても、株主の権利はありません。
株主総会の招集通知発送方法
株主総会を滞りなく開催するには、招集通知の発送に関しても把握しておく必要があります。発送は、いつどのように行うのが正しいのか解説します。
公開会社は書面での通知が必要
書面での通知が必要かどうかは、会社の形態によります。公開会社では、書面での招集通知が基本です。ただし株主の承諾を得れば、書面だけでなくメールなどで送信する方法も認められています。
書面で作成した招集通知の用紙の大きさや形状などに関しては、特に法令上で決まっていません。しかし、定型郵便規格封筒で送付するのが一般的です。
なお、株主の届け出住所に招集通知が5年以上届かない場合は、招集通知を送る必要がなくなります。ただし、5年間所在不明であったことを証明する資料を保管しておく必要があります。
会社によってはメールや口頭でも可能
取締役会非設置の非公開会社では、書面だけが招集通知の手段ではありません。事前の取り決めによってメールや電話・口頭での通知も可能です。
なお、すべての株主の了解を得て、書面投票や電子投票を行わない場合は、招集通知を特段必要とせず、株主総会を開催することができます。
招集通知の発送期限
株主総会の招集通知を送る期限は、同じではありません。公開会社か非公開会社かによって決まります。また、基準は株主に収集通知が届いた日ではありません。招集通知を送った日、もしくはメールなどで発信した日になります。
公開会社は、株主総会が開催される日の2週間前までに招集通知を発送する義務があります。非公開会社は、書面投票や電子投票を実施するケースで2週間前までに発送します。書面投票や電子投票を実施しないケースでは1週間前までになります。
これらの期限を過ぎてしまうと、招集手続の法令違反に当たります。株主総会決議の取り消しなどのトラブルになる可能性があるため、発送期限に気を付けましょう。
株主総会の招集通知に記載する事項
株主総会の招集通知に不備があると、株主総会が円滑に行われません。株式総会の招集通知には、どのようなことを記載したらよいのでしょうか?以下を参考に作成しましょう。
開催日時と場所
招集通知に記載する必須事項の一つが、総会の開催日、開始時刻、場所です。一般的に株主総会は、例年、同時期に開催されています。株主総会が実施される時期や場所が今までとかなり異なる場合は、その理由についても伝える必要があるでしょう。
なお、以前は開催場所が本店、もしくは隣接する地域に限られていましたが、現在は特に規制されていません。しかし、株主の出席が困難な場所で開催すると、不公正として無効になる可能性もあります。従って、株主の所在地の状況などにより、開催場所を決めるのが一般的です。
株主総会の開催目的や議題
株主総会の招集通知は、株主が総会に臨む前に議題を把握できるようにするために送ります。従って、まず株主総会がどのような目的で開かれ、何をテーマにして討議するのかといった『目的』と『議題』を明確に記載する必要があります。
議題を明確に記載するというのは、何から何まで事細かに記載するということではありません。『吸収合併について』など、何が決議されるのかをはっきり伝えるということです。
ただし、役員人事や役員報酬など、会社経営上、重要事項とされる決議については、議案も記載するのが原則です。議案は議題の内容について、どのような行為をするのか、またはどのような変更をするのかなど、具体化したものです。
その他の記載事項
前述でも触れましたが、株主が株主総会に出席できなくても有効な議決となる『書面投票制度』と『電子投票制度』の制度があります。これは、株主が各地に分散している会社などで広く採用されています。
また、株主は株主総会に出席できない場合でも、代理人を立て委任状を提出することで議決権の行使が可能です。招集通知には、議決権の代理行使や委任状についての取扱事項を記載しましょう。
構成/編集部