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部下を感情的に叱責して追い込む上司との正しい付き合い方

2020.03.25

■あるあるビジネス処方箋

 今回は最近、私が知り得た話で、職場でのトラブルについて考えるうえで意味の深い事例を紹介してみたい。

 10年ほど前、フリーランスになって数年の頃、出版社(社員約100人)の担当者への対応に精神的に滅入ったことがある。その男性は当時30代後半で、一般職。仕事の進め方について「こうするべき」という強いこだわりがあるようだった。そのすべてに、外部スタッフ(フリーランス)の私に従うように求めてくる。進め方が現実離れしているので疑問を呈すると感情的になり、興奮し、脅すような物言いになる。結局、時間やお金などコストが相当に増えるのだが、その進め方で取り組まざるを得ないようになった。めったにないことであり、ずいぶんと困惑した。

 男性はそのほかにおいても、自分の考え通りに進めないと感情的になり、話し合いができなくなる。約30年の社会人経験で、こういう社員は約3〜5人見てきたが、その中でも感情的になるという点では際立つ。その後、私は「自分に落ち度があったのではないか」と振り返ったが、思い当たるものを見つけることができなかった。

 2週間前に、男性と同じ職場の40代の男性数人と話す機会があった。10年ほど前に困惑した話を伝えると、同じ経験をしている社員が職場に5∼10人もいることを知った。

 40代後半になった男性は現在も在籍中だが、職場では孤立しているという。この10年間に、上司や周囲の社員と仕事の進め方をめぐり、激しい摩擦を繰り返したようだ。40代半ばで昇格したものの、部下がいない部署のたったひとりの課長だという。やはり、仕事の進め方に執拗にこだわり、上司に譲らないことが積み重なり、反感を買う機会が多いようだ。

 私が強調したいのは、「この男性がいい、悪い」ではない。男性を責めるわけでもない。むしろ、周囲にいる人に、たとえば、かつての私のような人に「自分を責める必要はない」と言いたい。10年ほど前の私は「失礼なことを言って、怒らせたのではないか」と自問自答し、苦しむケースがあった。当時の周囲の社員も同じ心理になることが多かったという。

「なぜ、あれほどに怒るのだろう」「どうして感情的になるのか…」。こういう問いかけは、周囲に相談することがなかなかできないために、1人で抱え込む場合がある。つい、自分を責めて心のリズムを崩し、エネルギーを失っていく人もいるのではないだろうか。周囲の多くの人が「あの人の言動にはついていけない」などと感じる場合、それはある意味で説得力があるのだと私は思う。つまり、その人の言動はやはり、受け入れがたい一面があるのだろう。

 本来、労働組合があり、こういう職場の声を拾い、問題解決に向けて動いてくれるとよいのだが、その可能性は高くはないのかもしれない。男性が組合員である場合、執行部は通常、深入りはしない。「あなたと男性の双方で話し合ってほしい」と介入はしない場合すらある。だから、どうしても問題を抱え込むようになる。感情的になり、相手を苦しめる人の被害になる側が、苦悩する。本来、逆ではないだろうか。

 このような問題は、広い視野で見ると、形を変えて頻繁に見られる。たとえば、上司が部下を怒鳴る。ところが、その管理職はとがめられない。私は聞きたい。部下育成力は、本当にあるのか。「ある」ならば、具体的に何を意味するのか。少なくとも、部下に全面的に問題があり、上司がすべてにおいて正しいなんてありえない。それでは管理職とは一体、何ぞやという問題が浮上する。双方はペアを組んでいるのだから…。

 しかし、叱られた部下は非があると思い込む場合が多い。これが繰り返されると、もともと精神疾患の傾向がある部下はたとえば、うつ病などになりかねない。報道で見かけるパワハラ事件の背景の1つは、ここにあると私は見ている。つまり、部下の側が、責め立てる上司やそれを見て見ぬふりをする周囲を責めるのではなく、自分だけを責めるのだ。自己責任を通り越した「自滅的責任追及」だ。では、上司や周囲がそこまで清く、正しいかと言えば、おそらくそれはNOだろう。仮に自分を責めるのならば、上司や周囲にもそれなりに問題はあるはずだ。

 今回の記事の前半で紹介した10年前の事例は、このような自滅的責任追及に結びつきかねないケースとも言える。私は、それほどに悩んだ時期がある。彼の周囲にいる同僚も、その言動に嫌気がさして、挨拶すらしないという。

 読者諸氏に言いたい。今、上司に責められている場合、あなたに非はあるのか。上司にはないのか…。取引先でもクライアントでもいい。相手が批判を繰り返してくる時、そんな深刻な問題を起こしたのか。取引先やクライアントにも、それ相当の非はあるのではないだろうか。ビジネスにおいて、片方が全面的に正しく、片方がすべてにおいて誤りなんてありえないと私は思う。自分を追い詰めるような問いかけはするべきではないのだ。

文/吉田典史

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