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カウンセラーが伝授!人生100年時代に”適職”ではなく”天職”に出合う方法

2020.03.05

1日5分の目標設定から始める

Q:天職につながりそうな、自分のやりたいことは見つけた。でも、なかなかそこから先に進まない。何かと理由をつけては、先延ばしたり寄り道したりという人も結構多いと聞きます。この問題を解決するコツはあるでしょうか?

中越さん:先延ばしについて研究している心理学者のピアーズ・スティールによると、人間は基本的に先延ばしする生き物だということです。

ある調査によると95%の人が、先延ばしをすることがあると答えたそうです。偉大な小説家であるアガサ・クリスティーも、遅筆で有名だったそうです。古代ギリシャのセネカは「時間を惜しめ」といい、アウレリウスは「人生は短い」といったそうですから、大昔の立派な哲学者達でさえ、先延ばしをしていたのでしょう。

だから、まずは先延ばしをしてしまったとしても、自分を責めないことが大事です。いくらやりたいことであったとしても、昼間は会社で働いて、家に帰れば家事もしているのですから、疲れてつい腰が重くなるのは当然のことなのです。

それなのに、先延ばしをするたび、「自分のやりたいことへの気持ちは、この程度なのか……」と落ち込んでしまっていては、永遠に前に進めませんよね。

だから、まずは先延ばしをする自分を責めないこと。その上で1日5分でできるような、小さな小さな目標設定をすることが大事です。たとえば、「資格について1日5分だけ調べる」、「5分だけ転職サイトを眺める」、「ランチの後、5分だけ本を読む」。それくらい本当に小さくて、自分が無理なく楽しんでできそうな目標でいいんです。

「やりたいことを仕事にするために、今日は絶対に3時間勉強するぞ!」と気合いを入れすぎると、心のハードルが上がって腰が重くなってしまいます。まずは心のハードルの少ない1日5分の目標からはじめてみましょう。こういうのを認知行動療法では、スモールステップの原理といいます。実際には、5分本を読み始めてみれば、30分くらい読み続ける人がほとんどですから、結構、効果があるものですよ。

カウンセリングの予約をした時点で変化は始まっている

Q:中越さんは、日本でも珍しい「天職探し」「やりたいこと探し」のカウンセラーを生業とされています。カウンセリングを受けるにあたり、心構えも含め何か準備しておくべきことはあるでしょうか?

中越さん:これも意外に思うかもしれませんが、カウンセリングを受けようと思って予約をした時点で、もうすでに効果が出ています。というのも、先ほど説明したように人間は基本的に先延ばしする生き物です。特にこれからの生き方、働き方を考えるというのは面倒な課題で、ことさら先延ばしされやすいです。

普段、日常の仕事では紙に書き出す習慣のある人ですら、これからの生き方や働き方について、紙に書き出して真剣に考える時間を持つことは、めったにありません。だから、問題点ややるべきことがなかなか整理されません。

そして、ほとんどの相談者さんは「いまの仕事を辞めて、やりたいことを仕事にしたいな~。でも、そんなの自分にできるわけないしな~。でも、いまの仕事をずっと続けるのは嫌なんだよな~」と、なんとなく頭の中で堂々めぐりになってしまうんです。

ところが、カウンセリングの予約を取ると、「いま自分が悩んでいることを、カウンセラーにどう説明したらいいんだろう……」と考えなければいけません。居酒屋のグチとは違い、カウンセリングという場面で本気で人に相談をしようと思うと、まず自分の頭の中を整理する必要が出てくるのです。そこではじめて脳のスイッチが入り、本気で考えるモードになります。

特にうちのカウンセリングでは、予約時の受付案内メールに、「2~3行でかまいませんので、簡単に相談内容をメモしてきてください。その方が、カウンセリングがスムーズに進みます」と案内しています。

そして自分の頭を整理してみると、「仕事を辞めてやりたいことを見つける前に、一度本気で妻(または夫)と話し合わなきゃな~」、「仕事を辞めることを考えると、いつも親の反応を気にしていた。私はいい歳をして親に依存しているのかな」などと、やるべきことや課題が見えてくることがあります。こういうのを心理学では、治療前変化といいます。中にはノートに2~3ページも、しっかりと整理してこられる方もおられます。

こんなことを書くと相談者さんが減るかもしれませんが、実はカウンセリングの予約を取るということすら面倒で、かなり先延ばしにされやすいことです。別に、カウンセリングの予約を取らなくても、死ぬわけではありませんから。美容室のように、髪が伸びたら切りに行かなきゃいけないわけでもありません。だからどうしても、先延ばしにされやすいのです。

でも、その予約を取るという行動をできた瞬間には、もうすでに変化は起きているのです。一つ行動すれば、何かしら変化は起きます。さすがに1回2回では、大きな変化は期待できないかもしれませんが、動き続ければ必ず何かしらの結果は出てきます。

相談者にカウンセリングする中越さん(右)

カウンセリングで別の課題に気づくことも

中越さんのカウンセリングを受けることで、相談者は天職探しとは別の課題を見つけることもあるという。中越さんは次のように話を続ける。

中越さん:それは最初に思い描いていた答えとは、ずいぶん違うこともあります。天職を見つけようと思ったはずが、本当の問題は夫婦関係だったり、親へのネガティブな気持ちを引きずっている場合もあります。なかには、学生時代にいじめられた経験から自分に自信が持てず、仕事にも自信が持てない人もいます。

問題のきっかけは仕事だったけれど、根っこは別のところにあることも多いです。もちろんシンプルに、天職と思える仕事、やりたいことを見つけたいという相談もありますが、働くというのはとても大きなテーマで、婚活、子育て、親子関係、自分のコンプレックスなどと、複雑に絡み合っていることも多いです。

ですが、どのような相談の場合でも、カウンセリングの予約を取るという一歩を踏み出した瞬間から、もうその人は変わりはじめています。本気で自分の人生を変えようと、カウンセリングの予約を取るという面倒な行動を起こしたのですから。その人には、前に進もうという心のエネルギーが、十分にあるのです。

だから、僕たちカウンセラーは、その人が本当はどういう方向に進みたいのか。だけど、どんな不安や葛藤があって、そこに向き合うことを避けてしまうのか。どの程度の目標や行動なら、無理なくできそうなのか。それを相談者さんの話をじっくり聞いて、一緒に考えていきます。小さな変化は、必ず大きな変化を起こします。まずはほんの少しでいいから、動いてみることが大事ですよ。

今の時代は、年齢面でのハードルはだいぶ払拭されているが、他ならぬ自分自身が、天職への道を歩む行動にブレーキをかけているという中越さんの指摘は興味深い。天職探しで迷いを感じているなら、己を知ることから始めて見る必要があるのかもしれない。カウンセリングはその一助となるので、検討してみてはいかがだろう?

中越裕史さん プロフィール

やりたいこと探し専門心理カウンセラー。1979 年生まれ。大学卒業後、リフォーム会社、営業代理店を経て猛勉強のすえカウンセラーになる。独自の考え方を提唱し、2005 年より「天職探し心理学 ハッピーキャリア」を運営。社団法人日本産業カウンセラー協会認定 産業カウンセラー。日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー。
公式サイト:https://happy-career.com/

文/鈴木拓也(フリーライター兼ボードゲーム制作者)

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