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新卒採用の実績がない企業へのエントリーは慎重になったほうがいい理由

2020.02.27

■あるあるビジネス処方箋

新卒採用(主に大卒、大学院)が本格化する時期が迫っている。連載「あるあるビジネス処方箋」では、過去に新卒採用に関する記事を掲載してきた。私が特に伝えたいのは、中小企業やベンチャー企業の中には杜撰な採用を繰り返し、入社後の定着率を上げるための施策が十分ではないために様ざまな問題が生じている会社が少なくないことだ。毎年、数えきれない人が不満を抱え、退職をしている。中には、退職勧奨やパワハラ、賃金不払いなど労使紛争になっている場合すらある。その数字は、大企業よりもはるかに多い。

これらは、企業社会にとって大きな損害である。若手社員の心の傷をつけているという点で、深刻な問題と受け止めるべきと思う。そのことに多くのマスメディアや有識者はなぜか、鈍いように私には見える。中小企業やベンチャー企業にエントリーするのを奨励する有識者すらいる。定着率や育成の仕組みをきちんと調べ、把握したうえで語っているのか、疑わしいと私は思う場合がある。

この時期だからこそ、新卒採用をテーマに取り上げたい。特に強調したいのは、次のことだ。「新卒採用の実績がなかったり、乏しかったりする中小企業やベンチャー企業にエントリーするのは慎重にしたほうがいい」。これは、私が取材をする人事コンサルタントたちが頻繁に話すことでもある。

具体的には、過去5年間を振り返り、新卒採用を1度もしていない会社や新卒者の入社数が15人以下の場合だ。15人とは、1年で3人のペースで採用すると、5年で達する数字である。これより少ない場合は、「新卒採用の経験に欠しい」とするのが妥当だと私は思う。中小企業やベンチャー企業の多くは新卒採用の実績に欠しいが、せめて5年間で15人採用のレベルはクリアしたいところだ。このくらいの経験がないと、通常は社内に定着や育成のノウハウが浸透していないはずなのだ。

なぜ、こういう会社にエントリーしないほうがいいのか。その理由を以下に挙げたい。

育成力に課題が多い

「中小企業やベンチャー企業の8〜9割は、新卒入社の社員を時間内で高い水準にまで育て上げる管理職がいない。そのような仕組みや環境がない。だから、定着率が大企業に比べて総じて低い」。これも、人事コンサルタントらが取材の場でよく話すことだ。確かにその通りなのだと思う。

私の観察では、管理職はプレイヤーしての技能が大企業の同世代の社員と比較し、見劣りする人が多い。部下育成力などのマネジメントを学ぶ研修や教育を受けていないケースも目立つ。ところが、慢性的な人材難であり、ある程度の仕事力があれば、早々と管理職になる。そこに明確で、客観的な基準があるとは言い切れないケースが多い。そして、部下を持つ。本来、ここで新任の管理職が部下を育成する仕組みを早急につくるべきなのだが、なかなか改善されていないようだ。

部下を育てる力をもった管理職をつくろうとしても、社内にはそのような課長や部長、役員などがほとんどいない。つまり、ロールモデル(見習うべき人)が少ないのだ。こういう状況では、今後も部下育成力を管理職はすぐには生まれえないだろう。

ここまで読むと、反論があるのかもしれない。「上司の力が低くとも、部下である自分がしっかりと仕事に取り組めば、いずれは力がつく」と思う人がいるのではないだろうか。だが、会社員の仕事は、1人では完遂できないようになっている。何らかの形で、上司が関わるものだ。1人で仕事をしたところで、力はなかなか身に着かない。力を養えたとしても、その力はおそらく総じて低いままではないか、と私は思う。つまり、上司のレベルが低い場合、通常は部下もまた、それに等しいレベルなのだ。だからこそ、上司の部下育成力を上げていかねばいけない。

仕事の達成感や充実感に欠しい

管理職の部下育成力が低いと、部下は日々の仕事で達成感や充実感を心から感じる機会が減っていく可能性が高い。しかも、最近は働き方改革で、管理職や一般職の残業時間が減り、労働時間の中身が変わっている。上司はプレイヤーとしての仕事で忙しく、マネージャーとして部下育成に費やす時間が以前よりも少ない。

私が知る人事コンサルタントは、こう語る。「中小企業やベンチャー企業の管理職は、1日の労働時間のうちの7〜9割がプレイヤーとしての仕事。部下育成に仕える時間はごくわずか」。

つまり、部下の育成力がなかなか上がらない環境や状況が現在は整ってしまっているのだ。本来は、限られた時間をたとえば、ITツールを使い、部下とのコミュニケーションを深いものにしていくべきなのだが、それも難しい状況の職場が多い。これでは、部下が仕事の達成感を感じる機会も自ずと減っていかざるを得ない。

新卒採用の実績がなかったり、乏しかったりする中小企業やベンチャー企業は、組織の態勢や仕組みが大企業に比べて低い傾向があるのだ。さらに、組織の自浄作用(問題を見つけ、治していく力)が全般的に弱い。こういう会社が新卒採用をすると、トラブルや問題が続出する可能性が高い。

就職活動の時期になりつつあるからこそ、あらためて考え直してほしい。新卒採用の実績が豊富であるか、乏しいかは、会社のホームページやフェイスブック、ツィッター、さらに求人広告サイトを丁寧に調べていくと、ある程度は察しがつく。さらにその会社の社員のフェイスブックに目を通してほしい。できるだけ多くの社員のもので確認するのが、望ましい。繰り返すが、新卒採用の実績がなかったり、乏しかったりする中小企業やベンチャー企業にエントリーするのはくれぐれも慎重に考えたうえで決めるべきと思う。私は、あなたに取り返しのつかない損はしてほしくないと強く願っている。

文/吉田典史

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