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【開発秘話】1年で1万5000台以上売れているツインバードの「全自動コーヒーメーカー」

2020.02.19

■連載/ヒット商品開発秘話

 プロが淹れたコーヒーは、素人が淹れたものと比べて味わい深く香りが豊か。そんなコーヒーが淹れられると評判なのが、ツインバード工業の『全自動コーヒーメーカー』である。

『全自動コーヒーメーカー』は2018年10月に発売。ドリッパーに挽いたコーヒー豆をセットして抽出湯温を設定した後にドリップするだけでなく、ローストしたコーヒー豆を投入しコーヒーの粒度と抽出湯温を設定すれば、ミルからドリップまで自動で行なえる。抽出温度は最適といわれる83℃のほか、90℃の2通り設定可能。ミルで豆を挽きハンドドリップで淹れる使い方もできる。

 まず3杯抽出できる〈CM-D457B〉を発売したが、2019年11月に6杯抽出可能な〈CM-D465B〉を追加。〈CM-D457B〉は発売から1年間で1万5000台を販売しており、〈CM-D465B〉も現在のところ好調に売れている。

3杯用のCM-D457B

6杯用のCM-D465B

社長の一言から始まった開発

 企画されたのは2016年頃のこと。きっかけは、同社の代表取締役社長である野水重明氏が「世界で一番美味しいコーヒーが淹れられるコーヒーメーカーをつくろう!」と言ったことだった。野水氏はなぜ、このようなことを言ったのか? 3杯用の企画を担当したプロダクトディレクション部 副部長の岡田剛氏は次のように推察する。

「コーヒーは嗜好品。嗜好品だから、コーヒーメーカーは夢中になって使ってもらえるものでなければならず、正しく美味しく淹れられるものをつくることが家電メーカー使命だと捉えていたと思います。それに本社のある新潟県の燕三条地域は金属加工業が盛んで、地場の多くの中小企業ではケトルなどコーヒー関連道具をつくっています。コーヒーに造詣の深い地域の代表として、『コーヒーメーカーといえばツインバード工業』と言われるようになりたいという想いがあったのではないのでしょうか」

味づくりで悩み行き詰まる

 社内では早速、『全自動コーヒーメーカー』の開発プロジェクトが立ち上がる。世界一の味を実現するべく、味の探究をやりきる決意で開発に臨むことにした。

 まず、コーヒーの専門書を読み漁り、美味しいコーヒーの淹れ方を理解することから始めた。その結果、

●コーヒー豆を挽いたときの粒度を均一にすること
●コーヒー豆本来が持っている味を最大限引き出すために、粗挽きから細挽きまでできるようにすること
●抽出湯温は83℃をはじめ数種類できるようにし、コーヒー豆に合ったドリップができるようにすること

 といったことが、美味しいコーヒーを淹れるために大切なことだとわかった。これらを基本仕様とし、湯気、香り、ドリップ時にコーヒー豆の粉が膨らむ様子、ドリッパーからサーバーにコーヒーが滴り落ちるときの音、といった五感で得られる楽しみもプラスすることにした。

 だが、基本仕様や本体デザインを決めることはできても、肝心の味について社内では誰も、美味しいかどうかの判断ができない。味づくりで深い悩みにはまり、開発にブレーキがかかってしまった。

 そんなとき、あることに気づく。それは、読み漁っていたコーヒー関連の専門書の著者に、田口護という人が多く登場すること。田口氏は自家焙煎コーヒーの第一人者で、東京都台東区にある「カフェ・バッハ」の店主。コーヒー界の「レジェンド」と呼ばれる人物である。

 岡田氏は2017年に偶然、そんな田口氏に会う機会に恵まれた。田口氏との出会いは停滞していた開発を急加速させることになった。

コーヒー界の「レジェンド」が開発に協力

「田口氏は会うのもの畏れ多い人ですが、開発に賭ける想いと困っていることを伝え、助けていただきたい旨も申し上げました」と振り返る岡田氏。断られることは承知の上でのお願いだったが、予想に反し田口氏は『全自動コーヒーメーカー』の監修を引き受けてくれることになった。

 岡田氏が田口氏の言葉で印象に残っているのは、「コーヒーの美味い、不味いは人それぞれ。嗜好によって変わってくるので、正解はない。しかし、正しくペーパードリップする作法はある」であった。味を決める要素は、先に挙げたコーヒーの粒度と抽出湯温、そしてドリップのタイミング。この3要素を正確かつ確実に実現するべく開発。試作品ができると岡田氏は新潟の本社から田口氏がいる東京に行き、カッピング(コーヒーの風味評価)をお願いすると同時にアドバイスを仰ぐことを繰り返した。

試作機と試作で淹れたコーヒー

試作機で淹れたコーヒーの味と香りを評価する、コーヒー界の「レジェンド」田口護氏(「カフェ・バッハ」店主)

 正しくコーヒーを淹れる作法をコーヒーメーカーで忠実に行なうことは簡単なことではなかった。とくにミルは、細挽き、中挽き、粗挽きと3段階できるようにしたが、挽いたコーヒーの形をどうするか、その形をどうやって実現するかで悩む。燕三条の金属加工会社の力を借りながら試作を30回近く繰り返し、最終的には4枚の刃を風車のように配列したものを2つ組み合わせることにした。こうすることで、豆への熱負荷を抑えつつ粒度と形をそろえることができるようになった。

 また、コーヒー豆はミルで挽くと静電気を帯びる。本体とドリッパーの間をやや空けたことから、粉になったコーヒー豆をドリッパーに落とすと豆同士が反発しあい飛び散ってしまう。

 そのため、ドリッパーは導電性樹脂でつくることに。さらに、本体に静電気を除電する金属棒を設け、ドリッパーに接触させることで静電気による豆の飛散を防止することにした。

導電性樹脂でできたドリッパーに接触する金属棒。これによりコーヒー豆が帯びた静電気をほぼ除電することができ、粉の飛び散りが防げる

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