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中小企業の経営者に大企業を否定する人が多い理由

2020.01.22

■連載/あるあるビジネス処方箋

 昨年11〜12月に、中小企業の経営者7人程の取材をしてあらためて思ったことがある。今回は、それを紹介したい。結論から言えば、彼らは徹底して大企業を否定するのだ。たとえば、「大企業の社員の質は、中小企業のそれよりも低い」「高い賃金を受け取っている割には、怠慢な社員が多い」などだ。

経営者は、精密機器メーカーや飲食店、専門商社の創業者。年齢は40代後半から50代後半で、全員が男性。社員数は、50~200人程。創業経営者としてこのレベルまで会社を成長させる人は、ごくまれである。その意味では、偉業を成し遂げたと言える。社会から高く評価されるべき人なのだと思う。

私は彼らの発言の一部には納得するが、多くのところに疑問を感じる。たとえば、仮に「大企業の社員の質は、中小企業よりも低い」とする。ではなぜ、中小企業の業績は長年にわたり、伸び悩むのか。倒産や廃業が相次ぐのはなぜなのか。どうして、離職率が大企業に比べて総じて高いのか。労使紛争が絶えないのはなぜか。これら一連の疑問に説得力のある回答をした中小企業の経営者はこの30年程で1人もいない。

本来、中小企業の経営者が大企業を否定する発言を新聞やテレビで扱う時には、まずは慎重に検討するべきと私は思う。事実であるのかどうかが、極めて疑わしいからだ。企業社会の実情に疎い学生が知ると、就職の採用試験で間違った選択をすることすらある。ところが、新聞やテレビはこれらの発言を無批判に受け止め、そのまま報じているように思う。これでは、新卒者などが中小企業に入社後、「こんなはずじゃなかった」と悔いるのではないだろうか。なぜ、彼らは大企業を否定する発言を繰り返すのか。そのことを私の取材経験をもとに考えたい。背景を知ると、中小企業の経営者の発言に必要以上に感化されなくなると思う。

劣等感

 私の身内にも中小企業の経営者がいたから察しがつくのだが、大企業に対して強い劣等感や負い目を感じているケースが多い。ハンディや心の傷があるので、素直に大企業を見ることができないようになっているのだと思う。たとえば、新卒採用をしようとしても、大きな壁にぶつかる。大卒の場合、大企業へのエントリー者数は平均で数千人であるのに対し、中小企業の多くは数十人レベル。そもそも、新卒採用をできない会社のほうがはるかに多い。これでは、経営者が戦意を喪失するのも無理はない。克服できる壁ならともかく、通常はそれを乗り越えることはできないのだから、劣等感は深刻になるのだろう。

憧れ

 中小企業を否定しながらも、自分の子どもを大企業に就職させるケースが多い。私が知るだけでも、20∼30件はある。ところが、ほかの中小企業に就職するように誘うケースはほとんど聞いたことがない。なぜ、さんざんとけなしておいた大企業に我が子を入れようとするのか。おそらく、大企業の人事や財務、経理などの仕組みやマネジメントを学ばせたいのだろう。あるいは、いずれ、後継者として社長を任せる時に備え、「大企業に勤務していた」という実績を得たいのではないか、と思う。大企業を否定しながらも、実は高く評価し、憧れのまなざしでみていた可能性が高いと言えるのではないだろうか。

おごり

 中小企業の経営者で、特に創業者として成功する人は確かに素晴らしい力を持っている。特にビジネスモデルをスピーディーに作る力は、大多数の会社員ではできないことだろう。一方、社会や世の中を軽くみる傾向があるように私には見える。少なくとも、大企業のいわゆるサラリーマン経営者(会社員として社長になった人)に比べると、発言が総じて過激だ。競合社や業界のしきたり、慣例をなじる発言も多い。私は、そこに成功者のおごりを感じる。通常、創業者は大株主であり、社内では絶大な権力者だ。はむかうものはおらず、厳しい意見を言ったりする人もいない。ある意味で、やりたい放題が可能になる。そこから慢心が生まれ、他社をけなしたり、否定するようになっていくのだと思う。

自社のPR

 大企業を否定することで自社の宣伝をしている、と捉えることもできる。そこで彼らがよく口にするのが、「大企業は年功序列で、中小企業は実力主義。だから、若い人にもチャンスがある」というもの。これが事実であるのかは検討の余地があるが、大企業との差別化を図っている点は、事実関係として間違いはない。結局は、大企業をけなしてさりげなく、自社をアピールしている可能性があるのだから、その言い分は鵜呑みにはしないほうがいい。少なくとも、中小企業の経営者の発言は事実なのだろうか、と考える習慣は身につけたい。

 最後に。最近はインターネットの普及、浸透が進み、企業に関する情報が氾濫している。

 それらの中には、信頼できるものもたくさんあるだろうし、ぜひとも目を通しておくべきものもあるに違いない。だが、明らかに事実ではないことや、誇張されたものが散見される時がある。今回は、そのような問題意識があり、書いてみた。ぜひ、中小企業の経営者の発言に疑問を感じた時などに思い起こしていただきたい。

文/吉田典史

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