あなたの知らない若手社員のホンネ~パタゴニア日本支社 ファイナンスファイナンシャルアナリスト鄭 綾さん(35・入社3年目)
様々な現場で働く若手社員を紹介しているこの企画、同年輩の読者は同世代の奮闘ぶりを、中間管理職は若手のやる気を知る一助になればという思いがこめられている。今回は35歳の女性だ。30代で転職によって自らの意識変革を実現したという物語である。
パタゴニア日本支社 ファイナンスファイナンシャルアナリスト鄭 綾(ていあや)さん(35・入社3年目)。
パタゴニアはアウトドアのアパレルを主に扱うメーカーとして知られるが、“私たちは故郷である地球を救うためにビジネスを営む”これが会社のミッション。“環境問題に警鐘を鳴らす”ことを掲げている。
30歳をすぎて、4度目の転職でパタゴニアに入社した鄭さん、この会社のミッションに深く感化された。入社してからの環境問題に対する造詣の深まりは、彼女の価値観や人生観にも大きく影響を及ぼしている。
地味で堅い仕事が向いてるのかと
出身は広島市です。大学時代に演劇部で劇団の宣伝を担当していた関係で、新卒で小さな広告代理店に入社したのですが、駅広告を扱う夢とはかけ離れた仕事で残業も多く、1年で退職。1浪に1年留年、会社も辞めて後がないという思いから、火事場の馬鹿力で働き1年間勉強をして、アメリカの公認会計士(USCPA)を取得しました。神奈川県の郊外にある外資系の電子部品の会社で、ファイナンシャルアナリストとして5年間勤務したんです。
仕事は各部署にヒアリングをして、今年のしたい活動と、それにかかるコストを集約し、年間予算を調整していく。それにより会社の資源をより効率的・戦略的な投資に導いていく。今も同じ職種なので、大まかな仕事の内容は同じです。
もっと興味のあることをやってみたいと、原宿の一等地にオフィスがあるアパレルメーカーに転職したのですが、上司の男性と反りが合わなかった。悪い上司ではなかったのですが指示が細かくて仕事がやりにくい。華やかな業界で、よくパーティーが催されたのですが、そんな雰囲気も私には合わなかった。
電子部品のような地味で堅い仕事に戻ろうと思ったのですが、転職支援会社が「パタゴニアにファイナンシャルアナリストのポジションがあります」と。パタゴニアは環境問題にいろんなアクションを起こしている会社だと、ブランド名は知っていたのです。
ゴミの分別にはうるさかった子供時代
どんな会社なのだろう、創業者のイヴォン・シュイナードの『社員をサーフィンに行かせよう−パタゴニア創業者の経営論』という著書を手に取り読んだ。彼の環境に対する考え方に感銘を受けました。私、幼い頃に『風の谷のナウシカ』を何百回も見た影響からか、環境問題には関心があって。親がゴミの分別をおろそかにすると怒っていた。
学生時代も周りの人たちより、環境問題に意識が高かったと思います。社会人になってからは日々の忙しさに、環境問題は後回しになり、会社のそばのコンビニで使い捨てのプラスチック容器入りアイスカフェラテを、毎日買っていましたが…。
創業者の著書を読んで、自分の利便性を優先していていけないと。「是非ともこの会社には入りたいです」と、面接の時ははっきり言いました。
「鄭さん、環境問題に取り組んでいるといってもさ、会社だから利益を出さなきゃいけないんだから、ある程度割り切ってやっていると思うよ」入社前に、周りの人にそう言われたのですが。
入社してみると、この会社は本気で環境問題に取り組んでいる。近年は気候変動とプラスチックゴミの問題に集中していますが、社内ではしょっちゅう勉強会が開かれます。
昨年の私たちのファイナンスの部署を含む、合同の1泊2日の合宿ミーティングでも、環境問題が話し合われました。環境問題に精通した上司のレクチャーや、パリ協定での気候変動に対すること、プラゴミの問題等のインプット。
「世界の平均気温は産業革命以降、約1℃上昇している。気温上昇を1.5℃に抑える努力をしないと、地球環境が壊滅的なことになる」とか、横須賀市にも建設が予定されていますが、石炭火力発電所がいかに地球環境に悪影響を及ぼすかとか。合宿では環境問題の現状を踏まえ、自分たちに何ができるのかを話し合いまして。
ストア(店舗)でも、専門家を招いてミニセミナーをよく開かれます。「2050年には海の中の魚の数より、プラゴミの方が多くなる」ということも、鎌倉のストアで行なわれたセミナーで研究者から聞きました。