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沈黙の臓器、腎臓を守る!かかりつけ医と専門医の連携で進む慢性腎臓病対策とは?

2019.12.19

二人主治医制を普及させたい。

 福井先生が厚生労働省健康局難病対策課及びがん・疾病対策課に出向したのは2016年のことだった。現在、人工透析の患者は約34万人だが、新たに透析を導入する患者を10年以内に10%減らすことなどを目標として厚労省が2018年7月に通知した腎疾患対策検討会報告書には、「かかりつけ医から腎臓専門医・専門医療機関への紹介基準」と題された表が掲載されている。

 先生はかねてより感じていた健診を受けていない人、健診で腎臓に異常が見つかっても、専門医にたどり着いていない人をこの機会に何とかしたいという思いがあった。この報告書と掲載した表にはそんな思いが反映されている。これを基準に、早めに専門医が診察することで、慢性腎臓病(CKD)患者と新たな透析導入患者の数を減らそうという試みだ。

引用元:厚生労働省「腎疾患対策検討会報告書~腎疾患対策の更なる推進を目指して~」

 先生が表をもとに解説する。

「この表は腎機能の指標であるeGFRと、タンパク尿がどの段階になったら、専門医に紹介してくださいという基準を表しています。“腎臓の涙”であるタンパク尿がプラス1以上は、全部紹介してくださいと。eGFRが45を切ったら紹介ですと、表をみれば一目瞭然でわかります」

 腎臓専門医は全国で約5000人なので、およそ1300万人もの慢性腎臓病(CKD)患者の全員を専門医が診ることはできない。普段はかかりつけ医が診て、定期的に腎臓の専門医や腎臓病に詳しい糖尿病の専門医等が確認する。かかりつけ医と専門医が連携する、二人主治医制を普及させたいと、福井先生たちは考えている。

これまで、欠けていたのは現場に伝えること

 先生が厚労省に出向した背景には、臨床や研究の経験のある医師と人事交流をすることで、医療現場の感覚を政策に反映させようという行政の意図があった。国は医療現場のことをあまりわからずに、政策を作っているのではないかと、当初はそんな考えを抱いていた。

 だが、厚労省に出向して仕事をしてみると、専門家からヒアリングをして適切に医療現場を把握することに努めたり、行政は腎疾患を減らすために真剣に取り組んでいることを知った。欠けていたのは、政策を医療現場に伝えて実践していくことだということに気づいた。

 2018年に発足したNPO法人日本腎臓病協会は、医療現場での慢性腎臓病(CKD)対策を推し進める実働部隊の役割を担っている。全都道府県で担当医が指名されているが、東京ブロックの副代表でもある福井先生は、国の腎疾患対策のハイライトであるこの紹介基準を、科を超えてできるだけ多くの医師に普及させたいと考えている。

「腎臓内科医としての経験の中で、一番印象的なことは?」そんな問いに、福井先生は腕を組み少し考え、今、日本腎臓病協会の一員として、腎疾患の対策を力強く推し進めていることに、一番のやり甲斐を感じているとはれやかな表情で答えた。

 高齢化の影響を除いた人工透析導入率は、国の腎疾患対策が始まった2008年以降、すでに減少している。国の対策の成果はもちろん、進歩した新薬の普及、生活習慣病予防のための健診の効果などがこの結果に結びついたと言える。

 さらに2018年7月に通知された腎疾患対策検討会報告書に基づく新たな取り組みの推進により、高齢化の勢いに負けず透析導入患者の実数での減少を目指している。

 後編では福井先生が理想とする腎臓病治療とは、腎臓内科医の仕事とは何かに言及していく。

東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 助教
福井 亮
2000年、東京慈恵会医科大学医学部卒業。2009年、東京慈恵会医科大学大学院医学研究科博士課程修了。2015~18年、厚生労働省健康局難病対策課およびがん・疾病対策課に出向、腎疾患対策、難病対策、慢性疼痛対策に従事する。2018年7月から東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 助教。2019年、研究支援課 URA(リサーチ・ アドミニストレーター)併任。日本腎臓病協会 慢性腎臓病対策部会 東京ブロック副代表も務める。

文/根岸康雄 撮影/高仲建次

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