「私、すごく後悔しているんです」
訪問診療に訪れたある日のことです。
もうそろそろ、お迎えだな……私はそう直感しました。この時点で自宅か病院か、患者さんがどこで最期を迎えるかのお話し合いができていませんでした。本人から意思を聞ける状態ではなかったので、私は家族に尋ねようと思った。ところが現場でそのことを口にできず、診療所に戻って来て。
「今から電話で家族に聞くほうがいいでしょうか」私のそんな相談に上司は、「今電話をするか、明日にするか、キミの判断に任せるよ」と。時計の針は午後8時頃を指している。
最期をどこで迎えるか、夜の時間にいきなり聞くより明日の朝、電話をしようと決めて私は帰宅したんです。
ところがその日の深夜、家族から電話があり、患者さんが亡くなられたと。“介助している最中に亡くなられて、家族はパニックになった”翌朝、カルテのそんな記述を見て、私もパニックになりました。
なんであの夜、電話をしなかったのだろう……。
「私すごく後悔しているんです」上司に訴えるように言うと、「中川さんが電話をしたら、何かが変わったの?」と。
でも、私が電話をしていたら、最期の瞬間を迎えた家族の気持ちは違っていたかもしれない。家族がパニックになって診療所に電話をしてきたという、カルテの記載がとても引っかかっていて。私が患者さんの最期について家族に踏み込んだ話をしていれば、肉親の死を前にして、最期の時間をもっと大切にできたのではないか。
PAとして寄り添い、支援した患者を中川裕美さんはこれまで、100人近く看取りに関わっている。“医療人”として患者にどう寄り添い、関わっていったらいいのか、模索するエピソードは後半も続く。
取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama
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