「組織は期限付きの家族だ」
仕事を通して人は育つ。この仕事はお客の感動を通して自分も育つ。
今年の5月末のことだ。1000人規模のハワイツアーを行った。野外パーティーは天候に恵まれ、美しいサンセットの後、打ち上がった花火は見事だった。ふと横を見ると、ツアーの担当者の目が涙で潤んでいる。普段は明るく涙とは無縁の男だが、内に秘めている部下の熱いものを感じ、高橋も込み上げてくるものがあった。
ふと、20代の頃のこれと似たようなシーンが彼の脳裏を過ぎった。だが、あの時は花火が上がる直前にスコールに見舞われて、お客が逃げ惑い、花火どころではなかった。
旅行業は喜びと落胆と、両方に遭遇する仕事でもある。
「組織は期間限定の家族だ」という言葉は前々任の支店長の言葉だった。
直属の上司である今の東京中央支店の支店長は、売上げの数字等も含めて勝ち続けている人である。コンプライアンスや個人情報等の扱いも大切にしている。ユーモアを解する上司だが厳しい。
課長のポストに就いた高橋は、今のところ2連勝中だ。2年連続して課の前年比の売上げを上回っている。今は課だが、次は支店の経営、そして会社の経営と、将来的に活躍の幅を広げていけたら、そんな思いを彼は抱いている。
高橋要、40才。プライベートではキャンプが好きだ。小学生の子供と一緒にキャンプに行ける時間を大事にしている。キャンプは旅行会社を使わないが、この夏は親の古希のお祝いを和倉温泉の加賀屋で行った。この時は会社のルートを使い、いい親孝行ができた。
取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama