なぜ、エリアマネジャーになれたのか
直属の上司の営業部長は、「いつも大変だね」とか、新メニューが入る時は「よろしくお願いします」とか、各店長に直接メールを送信する。現場の大変さがよくわかっている、フレンドリーで気さくな人だと山岸は思っている。営業部長はエリアマネジャーの仕事に、ほとんど口を出さないし、「この売上げ、どうなっているんだ!?」とか、語尾を荒立てることもない。
受け持つエリアが広いので、名古屋のオフィスにいる営業部長と、エリアマネジャーが顔を合わせるのは、営業部会の時など、月に数回だ。部下たちにあまり会えず、営業部長は寂しい想いをしているのではないか。部長は部下の私たちに気遣い、どこか遠慮しているのかもしれない。もっと泥臭くなってもいいじゃないか。思っていることを強い口調で私たちに告げていいのに、山岸はそんな思いを持っている。
山岸裕子、43才。エリアマネジャーになれたのは、女性にもっと活躍してもらいたいという、会社の思いからに違いないと彼女は察している。店舗のスタッフは6割以上が女性だが、全国で100名ほどいるエリアマネジャーの中で、女性は10名に満たない。24時間営業の店舗を守らなければならないという使命もあり、家庭を持つ女性が活躍するには、まだまだ解決すべき課題がある。
独身で、家庭を考えずに仕事ができる立場の自分はあまり見本にはならない。だが、主婦がもっと活躍できる吉野家する、そんな努力をしたいと彼女は思っている。
嬉しい時やショックな時はよく泣く、喜怒哀楽が激しくて裏表がない自分の性格を、今は部下たちがわかってくれている。だが、別のエリアに異動した時、この性格が通用するのか、内心ちょっと不安でもある。
取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama