ミキ、タナ、ルエナ、トワ等、“複雑なメスライオンの関係”
「前に担当したチンパンジーは、顔も体の色も大きさも違っていましたが、ライオンのメスはみんな同じような顔に見えました。ライオン舎に来た当初は個体識別ができず戸惑った。顔やシッポ、目の形、目の光彩の色鼻の頭の模様等をよく見て1頭ずつ名前を覚えたんです。
顔は似ていても性格はそれぞれ違って。ライオンに闘争は付きものですから、一緒にできない個体を見分ける必要があります。メスは組み合わせを替えながら放飼場に出しますが、例えばトラブルメーカーのミキは、タナとルエナと一緒にできない。タナとエルナは姉妹で、ライオンは兄弟、姉妹は絆が強い。けんかになります」(大賀飼育員)
「ライオンは他の個体にやられると、ひねくれたような状態になってしまいます。でも自分より下位の個体をやっつけて手なずけると、再び自信を取り戻し盛り上がって、やられた相手に挑んでいったりします。今、ミキと一緒にいれるのはミサとトワ。ミキはこの2頭に強く出ています」(佐々木飼育員)
「若くて向こう見ずなトワは、オスのスパークには好かれていないようで。スパークにひっかかれても怒鳴られても、交尾をしてほしくて向かっていきます」(大賀飼育員)
「ライオン舎の常連のお客さんの中には、トワのファンは一定数いまして。“今日はトワちゃん、放育場に出ていますか”という問い合わせがあります」(佐々木飼育員)
メスの実権を握るのは?
「ケイコは古株で群れのまとめ役です」(大賀飼育員)
「メスの中で実権を握っているのは、ケイコの子供のナナですね。ナナはオスのスパークとの関係作りも上手い。例えばオスは発情したメスに付いて歩きますがこの時、オスはこのメスの近くに誰も近づけたくない。
ナナが発情した時はそんなオスの習性を利用して、気に入らないメスのところに近づき、オスのスパークに攻撃をさせたり。群れの大げんかの時も、ナナは噛まれたりひっかかれたりしない位置にいます」(佐々木飼育員)
果たして、複雑な群れの“ライオン関係”が大げんかにつながっていくのか。いきなりはじまるライオンたちの闘争。そして百獣の王にも苦手なものがある。それらは後編で。
取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama