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通常盤初回マト、テストプレス、激レア初回マトを聴き比べてわかった意外な事実

2019.11.09

今回試聴レポートする“通常盤”(意味は本文参照)はすべて所有。

「“宇宙人”と“ネッシー”と“つちのこ”を一度に見てしまった」と書くと大嘘だが、アナログレコード“マトリクス1=通称マト1”収集家なら「そうも言いたくなる」と共感してもらえそうな、大変貴重な体験をした。場所は、東京・お茶の水のジャズ喫茶「ジャズ オリンポス」。ジャズ喫茶ながら年に数回「ロック喫茶変身イベント」を開催する。その記念すべき第20回で試聴したレコードが、マト1党には垂涎盤、というより聴きたくてもレアすぎて聴く機会など一生なくて当たり前、という幻レコード目白押しだったのだ。
 “マト1”について詳しくはこのマト1紹介記事を読んでいただくとして、簡単に説明する。マト1とは書籍なら初版のことで、2刷りならマト2、3刷りならマト3となる。書籍なら初版であれ100刷りであれ、読むには同じだ(古書なら初版ゆえの希少性で、値が張るものもあるだろうが)。

 ところがレコードの場合、値段はさておき、マト1の方がマト2以降より断然音がいいとされる。よっていい音で聴きたい人は“マト1”を収集するのだ。だがややこしいことに、マト2、マト3、マト4……ながら“初回マト”と呼ばれるレコードが存在する。

 最初のカッティング(マスターテープの音をラッカー盤=ディスクに刻む)作業によりできたレコード=“テストプレス”の音にアーチスト等がOKを出せば、流通するレコードの“初回マト”はわかりやすくマト1で、レコードにマト1を表す記号が刻まれる。気に入らずNGが出されると、2度目のカッティングを行う。これでOKなら初版として発売され、レコードに刻まれる記号はマト2となる。さらにやりなおせば初版は、マト3、マト4、マト5……となっていく。このような初版がマト1ではない場合でも、“テストプレス”=マト1のレコードは存在する。このマト1という記号が刻まれた非売品レコードが、何らかの事情で市場に出回ることがあるのだ。

 今回のイベントは、言わば“通常盤初回マト”と、上記で説明した本来なら出回らないはずの“テストプレス”、または発売直後に何故か回収されたらしくごく少数しか存在しない“激レア初回マト”を聴き比べるという、マト1党には涙ものの企画だ。

 この原稿では、“テストプレス”や“激レア初回マト”を“幻盤(刻まれた記号はマト1)”、流通した“初回マト”のレコードを“通常盤(記号はたまたまながら、すべてマト2)”と呼び分ける。1970年前後のUK盤となると、何万円級で売られる“通常盤”も少なくない。ましてや “幻盤”ならウン十万円級もありと書けば、その超希少性をご理解いただけるだろう。

 さてその世に出るはずがなかった “幻盤”、音はいいのだろうか? アーチスト等が没にした音だ。いいはずがないが、聴いたことがないのでわからない。ならばそれを聴き比べようというのが、今回のイベントの趣旨となる。「そんな“幻盤”を誰が持っているの?」、もっともな疑問だ。しかし世の中は広い。都内中古レコード店やeBayに出た幻盤を購入してきた超コレクター氏が、このイベントの主催者だ。

 前置きが長くなった。ここから試聴レポートになる。合計8作品の聴き比べだったが、最初に聴いたキッス『地獄の軍団』は、僕には録音的な興味がなく割愛。最後のピンク・フロイド『炎』は、とても残念ながら時間的に店を出ざるを得ず、聴けなかった。

 試聴する曲は、まず“通常盤”の片面1曲目、そして“幻盤”の片面全曲だ。よってレポートでは、1曲目同士の優劣を5段階で評価する。あくまでも個人的な感想だ。実際多くの曲で、当日参加者約20名の評価は割れた。

レッド・ツェッペリン/『Ⅰ』。左が稀少なターコイズ。

 では2番目のレッド・ツェッペリン/『Ⅰ』から。この作品だけ実は“通常盤”vs“幻盤”ではなく、“修正”vs“無修正”の聴き比べとなる。なんのことかわからないと思うが、ややこしい説明になるので省く。どちらもマト1ながら、“修正”より“無修正”がより稀少と捉えていただきたい(ここに興味の湧く方はこの記事を)。どちらもすこぶるいい音だ。だが“修正”はフレッシュで切れのある音ながら、広がりに欠けるような……。“無修正”は音が広がるだけでなく深みもあり輝く。4対5で“無修正”に軍配。数年前、“修正”と“無修正”の音の違いについて、有名中古店店員氏に尋ねことがある。「変わりませんよ。“無修正”の値が張るのはジャケットの希少性ゆえでしょう」という答えだった。原則、“無修正”はロゴがターコイズ、“修正”はオレンジで、ターコイズは2000枚ほどしか印刷されていないとされる。ツェッペリン命の僕は両方所有しているが、僕の盤の限りでは今回の聴き比べ以上に差があり、“無修正”の圧勝だ。ただしいかんせん古いレコードなのでコンディションの問題もあり、一概にそうとは言い切れない。

エマーソン・レイク&パーマー/『エマーソン・レイク&パーマー』。

 3番目はエマーソン・レイク&パーマーのデビュー作『エマーソン・レイク&パーマー』。“通常盤”はマト2/1(A面2B面1)、“幻盤”はマト1/1の“テストプレス”(レーベルに印刷なし)だ。この場合A面マト1はキース・エマーソン(かな?)が、「この音は駄目」と判断したと推察される。この“幻盤”は、当時の関係者が所有するテストプレスが、なんらかの事情で中古市場に出回ったものだろう。試聴曲は「未開人」。“通常盤”は左右に音場が広がり、ゴリゴリと低音が響く。“初回マト”の醍醐味タップリだ。“幻盤”は相対的に躍動感が落ちて鈍い感じ。ただし決して悪いわけではなく、“通常盤”が良すぎるとも言える。5対4で“通常盤”の勝利。

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