商品のアイデアはすべて1人で考える
― こうした商品は、企画チームを編成してブレーンストーミングなどしながら、企画するのでしょうか?
稲本さん:商品開発にあたってのアイデア出しで、ブレーンストーミングをすることはなく、自分が全部考えます。
企画会議のように、考えるためだけの時間を持つということはなくて、ほかの業務をしているときにアイデアが湧き出ることもあります。
アイデア出しは、料理に似ている感覚です。和洋中のジャンルを問わず、食材を片っ端からそろえてレシピを考える感じ。「制限を設けず、どう組み合わせれば、面白い料理ができるか」という発想で物事を考えます。するとやがて「こういう組み合わせで商品化が狙えるのではないか」と、ひらめいてきます。
多くの人は最初から「こんな料理を作りたい」と考えて食材、言い換えれば情報・ネタを集めると思いますが、そのやり方は発想の制限が大きいという問題があります。
サラリーマン時代の企画出しでネックに感じたのは、何人もの人がアイデアを出し合うと絶対うまくいかないということです。どんなアイデアも、全員が「いいね」と賛同することはなく、反対意見を言う人を説得する手間が発生し、全員を納得させるのは不可能なことが大半です。
であれば、最初からできる人が突っ走るようにすればいい、というのがありますね。
アイデアに詰まったら「寝かせる」
― 常時多くの案件を抱えていて、アイデア出しに詰まったときは、どう打開されているのでしょうか?
稲本さん:企業から依頼された案件は大喜利のようなものです。依頼主には「ヘソさんだったら、何か面白いことを考えてくれるのではないか」という期待感が高まっていて、そのプレッシャーはありますね。
アイデアは最初の打ち合わせの場で出てくることもあれば、パッとは出ず「1~2週間ください」と答えることもあります。
長くて2週間。それくらいのスピード感は必須ですね。
で、そんなプレッシャーのもとでアイデアに詰まった場合、一番いい打開策は「寝かせる」ことなのです。
つまり、しばらく放置することなのですが、そうするとアイデアが降ってくることが多いです。
そして、寝かせている間は、また別のことを考えているのが、コツに思います。Aという商品企画に詰まったら、Bという商品企画を考える。するとAのアイデアが出てくるというふうに、常にたくさんの皿回しをしているイメージだとわかりやすいでしょう。
OEMも含めれば、ヘソプロダクションがプロデュースする新商品は、年間で約千品目にも及ぶという。そうした商品のアイデアをほぼ1人で生み出す稲本さんの思考法には、われわれも学ぶところが大きい。
文/鈴木拓也(フリーライター兼ボードゲーム制作者)