■連載/あるあるビジネス処方箋
今回は、15年以上にわたり、同一のポジションの管理職が多数いる会社について、私の考えを述べたい。この場合の「同一のポジション」とは、例えば、営業本部長や営業第一課長、あるいはセールスプロモーション本部長や第一編集部長などを意味する。つまり、課長や部長、本部長といった役職(職位)ではなく、さらに踏み込んだポジションを指す。
中堅企業(正社員約500人以上)、大企業(正社員約1000人)では、通常、同一のポジションに15年以上就く管理職は相当に少ない。これが、健全な姿なのだと私は思う。毎年、新卒採用を計画的に行い、着実に確実に堅実に育成をしてきたのならば、同一のポジションに15年以上も居座る管理職は極めてごく少数になる。本来は、毎年の定期配置転換や人事異動、出向や転籍があれば、通常は5年以内、長くとも10年以内に大多数の管理職が現在のポジションを離れるはずなのだ。
ところが、中小企業(正社員約300人以下)では、私が取材を通じて観察していると、同一のポジションに15年以上居座る管理職が非常に目立つ。10社のうち、約半数で見かける。私が仕事をする出版社、編集プロダクション、新聞社などでも頻繁にみる。例えば、役員が編集部長を20年以上兼務している場合すらある。
結論からいえば、新卒(主に専門学校、大学、大学院)の時点で、このような会社に就職するのは避けたほうがいい。入社3年以内に深い後悔をして、失意の退職をする可能性が極めて高いと思う。このレベルの会社に数年在籍したところで、転職試験でその経験を高く売ることは相当に難しい。その意味でも、新卒時の就職は控えることを勧めたい。今回は、15年以上にわたり、同一のポジションの管理職が多数いる会社の危うさを紹介したい。
採用、定着、育成の仕組みがほとんど機能していない
採用、定着、育成の3本柱がきちんと立っていないと、人の育成はまずできない。社長、役員はこれらの柱を立てる発想や意識に乏しい。毎年、新卒採用は行っておらず、中途採用が主流だが、数年で辞めていく人が多く、その穴埋めをするための採用でしかない。人材育成において中長期の展望がまるでなく、場当たり的であり、「雇っては、辞める」の繰り返しだ。
組織は疲弊し、まったりとして、覇気のない雰囲気が漂う。20代で意識や基礎学力の高い社員は次々と辞めて、転職ができないような人が残る。こういう風土や体質が、隅々まで浸透している。管理職や役員のマネジメント力は中堅、大企業のそれらに比べて、10ランク以上は低い、と私はみている。管理職は部下を育成し、自分の代わりになる人材や後継者をつくろうとする意識や経験、技能を持ち合わせていない。社長や役員のレベルが著しく低いのだから、止むを得ないだろう。結果として、同一のポジションに15年以上も居座る管理職が多数現れる。このことを問題視する社員の多くが辞めていく。
仕事を隅々まで丁寧に教える上司がいない
社長以下、役員、管理職が部下育成に真剣に取り組むことなく、事実上、仕事を丸投げしているかのようだ。私がフリーになった15年間に仕事で接した、このような会社の20代の担当者のほとんどが、役員並みの権限を持ち、仕事をしている。言動も大胆だ。私がみてきた限りでいえば、時に反社会的な勢力の一員のような物言いになる場合もある。中堅企業や大企業では、まず見かけないタイプだ。
仕事について自信満々に語るが、深い会話はできない。PDCAサイクルを回すことを特に苦手としているために、常に「自分が正しい」の一点張りとなりがちだ。自信のなさの表れに私には見えることが多い。おそらく、仕事を隅々まで丁寧に教える上司がいないのだと思う。
若くして1人で仕事をする習慣が完全に身に着いているので、人とコンセンサスを積み重ね、前に進めることができない。「こだわり」を持つのはよいのだが、経験が浅く、経験から学ぶ学習力が必ずしも高くないために、現実離れしたものやめちゃくちゃな進め方をするケースが少なくない。本来、上司がそのことを指摘し、育成するべきなのだが、それは難しいようだ。
新卒時の就職活動でも、中途採用の転職活動でも、同一のポジションに15年以上いる管理職をネット上の例えば、フェイスブックなどを使い、調べてみよう。そのような人が目立つ場合、エントリーするのは絶対に避けたほうがいい、と私は強く言いたい。後々、「こんな会社に入るんじゃなかった」と悔いる姿が強烈に浮かぶ。あなたに損をしてほしくないから、辛辣な見方かもしれないが、あえて書いてみた。
文/吉田典史