エストニアで法人設立するメリットは?どのようなビジネスが適しているのか
――エストニアで法人を設立する際には、どれくらいの費用が掛かるのでしょうか?
エストニアでの法人設立の初期費用は、250ユーロ(3万円ほど)です。資本金の最低金額は2,500ユーロ(30万円ほど)ですが、10年間の猶予期間が設けられています。そのため、最小限のコストで法人の設立ができる点が一つ目のメリットです。
――EU市場でのビジネスに参入できる点も魅力的ですね。
おっしゃる通りです。法人設立後のフォールドは、エストニアだけに限った話ではありません。IBAN(国際銀行勘定番号)のアカウントを取得することで、EUの規制の中でビジネスを行えます。EUを中心に世界でビジネスを展開したい方にとっては、大きなメリットがあるでしょう。
――Set Goでエストニア法人を設立するのは、どのような分野のビジネスが向いているのでしょうか?
「これは適していない」と一概に言い切ることはできないのですが、例えば、神保町のカレー屋さんがエストニアで法人設立して、実際は日本でお店を出しているようなケース。法人税は、実際に価値が創出された場所で課税されるため、これは合理的ではありません。他にも、農業・建設業・不動産業など実際の拠点と紐づくべきビジネスも現実的ではないでしょう。
一方、どこでも働けるフリーランサーやIT開発やデザイン、マーケティング、オンラインでできるコンサルティングなどの分野では、物理的な拠点を必要としないケースも多く、オンラインでエストニア法人を運営するのに向いていると思います。M&Aや不動産売買の仲介を行う方や、日本企業の海外拠点(子会社)などが活用するケースも多いですね。
――エストニアは、税制面でのメリットも大きいのでしょうか?
そうですね、エストニアの税の仕組みはとてもシンプルです。法人所得税というのは存在せず、配当に対して法人税20%が課税されます。そのため、配当しない場合はゼロです。つまり、内部留保している限りは課税されません。日本のように節税対策にやきもきすることもなく、売上金をそのまま投資に回すことができます。これは、スタートアップ企業にとって、とても大きなメリットです。
――実際に納税するときは、日本の確定申告のようなものがあるのでしょうか?
はい。銀行のオンラインバンキングサービスを使うことで、リアルタイムで会計取引を記録することができるため、それほど複雑なビジネスモデルでなければ、オンライン上で手続きはすぐに完了します。知識がない方のために、SetGo提携の会計士が、年次報告書の作成を代行するというサービスも提供しています。
実は日本でも近い将来、起業のハードルが下がるかも!?
――日本と比べると、エストニアは起業のハードルがとても低いですね。
そうですね、日本で起業をするのは、まだまだハードルが高いのが現状です。一方、エストニアでは「呼吸をするように法人の設立」が行われていて、日常生活の中で当たり前のように「会社作ったよ」という話題が出ます。
実は日本でも、2020年度内に法人登記のAPIを民間事業に開放することを目指しているようです。実際に使用できるのは2021年2月と言われており、数年以内に日本でも、新しいことが始めやすくなる環境が整うかもしれません。
政府のAPIを活用しながらという前提ですが、日本人が積極的に関わっているオンライン法人登記サービスは、世界を見渡してもても僕らだけだと自負しています。そこで得たナレッジを、将来的には日本の市場にも還元していきたいです。
――そうなれば日本でも起業のハードルが下がり、面白いサービスが次々と誕生していくかもしれませんね。本日はありがとうございました。
これからの時代に起業を目指している人にとって、そのフィールドは必ずしも日本である必要はないはず、将来的に海外への進出を見越していたり、仕事の内容が日本だけにとどまらないのならば、エストニアでの法人設立はかなり魅力的な選択肢になるかもしれない。齋藤さんは、オウンドメディア「Estonia Holic!」で、現地エストニアの情報も発信しているので、起業時のメリットはもちろん、エストニアの文化や風土への理解を深め、国自体の魅力を感じてみてはどうだろうか。
SetGo公式サイト:https://www.setgo.ee/
オウンドメディアEstonia Holic!:https://estonia-holic.com/category/setgo/
【参考記事】エストニア人の働き方に学ぶ日本人が取り入れるべき5つのマインド
取材・文/久我裕紀 撮影/末安善之