どうすればできるのか
上司の統括グループ長には、励みになる言葉をもらったことがある。2012年に今の役職の一つ下のPTL(商品化推進担当者)に就いて間がない頃だ。通常、商品開発は18か月ほどかかる。それを2か月ほど前倒して、市場に出したいと上からの要求があった。
「2か月前倒しと言われても、出来るわけがありません」彼女は胸中を上司に吐露した。すると、「出来るわけがないと言うのは簡単だけど、どうすれば出来るのか、そこを捜していこう」そんなアドバイスをもらった。
どうすればできるのか。人員の増加なのか、開発費の追加なのか。2か月前倒しを可能にする条件は何か、彼女は言葉にしてメンバーに伝えた。その結果、前倒しは実現することができたのだ。困難な時はどうすれば達成できるのかを言葉にして、みんなで考える。それが商品開発に取り組む根本的な姿勢だと、強く自覚する出来事だった。
とはいえ、上からいろんなチャレンジがどんどん降ってくると、部下たちもすべてに対応することは難しい。チャレンジも大切だが、働き方改革にも取り組まなければいけない立場だ。上司にはチャレンジと働き方を考慮してもらえたら嬉しいなとは思っている。
時には、ユーザーに新たな使用上の注意事項を伝えられなかった、そんな年下の部下には、いささか強い口調で諭すこともある。
会議で相反する意見が出た時、商品化推進担当者が両方の意見に共感してしまい、結論が出ない。そんな時は「まず、自分の意見をはっきりと持ったほうがいい。でもね、『自分はこうします』と最初に言うと、会議が紛糾する。みんなの意見をうなずいて聞いてからどうするのか、自分の意見をバシッと出す」とか、アドバイスをしたり。
鈴木祥子、42才、27名の部下を持つリーダーはストレスが溜まるポストと察する。「今の仕事をやり切りたい」という彼女のストレス解消法は、とにかく休日は家でゆっくりと寝ることだそうだ。そんな彼女を一緒に暮らす夫と、実の母親が支えている。
取材・文/根岸康雄
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