お客様目線に立ったことで成功した接客体験談
片岡さんがかつて、お客様目線に立ったことで成功した接客の体験談を2つ教えてもらった。
●タイ語で「ありがとう」に涙
「CA時代のある日、バンコク行きの機内にタイ語のみを話される年配の女性のお客様がご搭乗されていました。あいにく、機内にはタイ語を話せるクルー(乗務員)はおらず、ご搭乗のお礼、お食事のご説明をはじめとしたほとんどのコミュニケーションを取ることができないままに到着を迎えようとしていました。
そこで私は、そのお客様が言葉の通じない機内で不安な気持ちでいらっしゃるのではないかと思い、何かお客様にして差し上げられることはないかと考えました。そのとき、数か国語でのあいさつの言葉を調べることができる電子辞書を持っていることを思い出しました。そこで、タイ語の『ありがとう』を見よう見まねでカードに書いてお客様にお渡しすると、涙を浮かべながら喜んでいただけました」
●お母さんが化粧室に立っていないことに気づき…
「あるとき、お母様お一人で、3~4歳くらいのお子様をお連れのお客様がいらっしゃいました。お子様は座席で横になってお休みになられていたのですが、私は、お母様がずいぶん長い時間、お化粧室に立たれていないことが気になっていました。そこで、間もなく着陸態勢に入るというタイミングでお母様にこっそりと『お化粧室に行かれるのであればお子様を見ていましょうか』とお声がけしました。すると『行きたかったのだけれど、子どもが座席から落ちないか心配で、立てずにいたんです』と助かったという表情でおっしゃり、お化粧室に行っていただくことができました」
お客様目線に立つことは、感動的な接客体験を提供することも可能になる。いまいちピンときていなかった人は、ぜひヒントにしてみたい。
【取材協力】
マナー講師 片岡かこさん
大学卒業後、ANAの客室乗務員として約6年間乗務。国内外の1000人以上のVIPのお客様をはじめ、様々な世代や国籍のお客様へのサービスを行った経験から、現在はマナー講師として講座を主宰し、「女性が自分を好きになり、自信を持って生きていく」お手伝いをしている。マナーライターとしても活動。メディア掲載、執筆実績も多数。
https://kakokataoka.amebaownd.com/
取材・文/石原亜香利