ところで、「レコードの達人」聴き比べの結果は? 来場者10人強+岩田さんと僕、どちらがB2 or B4かわからないブラインドで聴き比べた。ライブハウスならではの大音量、プレーヤーはLINN/LP12の最高峰300万円級システムと、再生環境が極上ゆえか、“一聴瞭然”、全員一致でB4に軍配が上がった! 僕の耳は正しかった……。B4>B2はありえず(ありえたらマト1崇拝が根底から崩れる)、やはり僕のA2B2は状態が悪いということだろうか?
「レコードの達人」のほぼ1週間後、新規購入盤A2B2が届いた。ジャケットは、既所有盤の方がずっときれいだ。既所有盤がEX+なら、新規購入盤はEXには及ばずEX-くらい。だが、まあ許容範囲だ。盤は見た目、EX+~NMは盛り過ぎながらEXには相当する。これもよしとしよう。
しかし!! ターンテーブルに乗せるや、カートリッジが1周ごとに上下する。盤に反りがあるのだ。針飛びはしないが、見ていて気持ちいいものではない。世には反りを修復するマシンがあるものの、お代は10万円級なり。反り修復が必要な盤を買う確率は100枚に1枚くらい、10万円は費やせない。
数年前に買ったレッド・ツェッペリンの『プレゼンス』に反りがあり、ネット検索して無料で修復してくれるレコード店を見つけてお世話になったことがある。『宮殿』の反りは『プレゼンス』と同程度、修復できると確信し試聴は中止、修復後に改めて聴くことにして、同じレコード店に修復をお願いした。
盤の反りによって、カートリッジが上下する。
反りはかなり修復された。
さて上の動画のように、反りはかなり修復された。さあ、試聴だ。だが……。音のフレッシュさがない。状態のいいマト1なら驚くほど音が瑞々しく、マト1収集家の心を捉えるのに……。しかも眠たい音の奥に、薄くノイズがかかっている。この盤、かなり状態が悪い?
音楽はレコードで聴くのが当たり前だった頃、盤のメンテナンスにレコードスプレーなるものを吹きかけるのが常識だった。しかし今では禁じ手で、スプレーを浴びすぎたレコードは表面が膜でおおわれ、音が悪いとされる。この新規購入盤は、そんな症状のような気がする。
その対処方法は洗浄だ。反り修復マシンは買えなくても、レコード洗浄マシンは手に入れて中古盤は必ず洗っている。精製水のコスト上、10枚くらいたまってから洗うのが常だが、今回はそんなに待っていられない。この盤だけのために使うことにした。
洗浄の効果で、薄くかかっていたノイズはなくなった。音も眠くはない。だが聴き比べると、既所有盤のほうが音はいい。その既所有盤の音は、A2B4に劣る。しかし、思いついた。せっかくレコード洗浄マシンを使ったのだから、既所有盤をもう一度洗おう。洗って試聴する。かなり音がよくなったと思う。
では、A2B4も聴いてみよう。「クリムゾン・キングの宮殿」、やはりB4はベースが力強く唸る。だがこれは唸り過ぎで、B2程度の低音こそアーチストが目指した音かもしれない!? こうなると何が正しいかわからなくなってくる。これぞマト1の迷宮、深遠なる世界(!?)だ。唯一明確なのは、新規購入は不要だったこと。リタイアの身、分相応にせねばと、大いに反省したのでした。
PS 実は『クリムゾン・キングの宮殿』には、正真正銘のマト1=A1B1が実在する。滅多に市場には出ず、出たら今では100万円級だろうか? そのA1B1とA2B2を聴き比べるイベントに参加したことがある。ご興味のある方は、こちらの記事をどうぞ。
文/斎藤好一(元DIME編集長)