抜擢人事やハンティングの対象となる人物の共通項とは
人事コンサルタントたちは、「人事の妙」「人事の手が見える」「引っ張り」の対象となる社員には、ある程度の共通項があるとも話す。主に次のようなものだという。
・20代の頃に、特に処理能力が高いために「仕事が安定している」と評価されるが、そのベースとなるのが高い基礎学力である。特に小中学校、高校の国語の学習領域である「話す力・聞く力」「書く力」「読む力」などが同世代の社員と比べて、相対的に高い。これらの力が高いために、仕事や上司などの指示の理解力が深くなり、仕事の質が安定してくる。上司も信用するようになる。
・安定しているがゆえに、早いうちに大きな仕事をまかされる。これが、本人にとって自信となる。成果や実績として現れるようになり、周囲の社員も一目を置く。さらに自信を持つようになっていく。成功というイメージを自らの意識にインストールし続けている。
・「自分は仕事ができる」「同世代の中で抜きん出ている」といったセルフイメージを持ち、前向きに仕事に取り組むようになる。このイメージが強いと、壁にぶつかったとしても、乗り越えることができる。その姿を上司がさらに高く評価し、自信をより一層、強くする。仕事に一段に取り組むようになる原動力となり、大きな成果につながっていく。
・これらの繰り返しで、社内で目立つ存在となる。貴重な戦力となり、ハンティングの対象として「誰かが動く」。
私の取材を通じての観察なのだが、「人事の妙」「人事の手が見える」「引っ張り」の対象となる社員からは、総じて好印象を受ける。会社員としていわゆる「苦労」をあまりしていないタイプが多い。例えば、上司からいじめを受け、部署から排除され「見返してやる!」と力んで這い上がってきたような人は見たことがない。むしろ、20代の頃からまぶしいくらいに光る存在で、比較的、順調にキャリアを積み重ねてきたのかなと感じる。そして、理解力が明らかに高い。ある意味で素直で、嫌味がないのだ。さらに言えば、こういう社員は業界上位(特に1∼5位)の企業に多い。小さな会社では、少ない。
読者諸氏は、ラインに乗っているだろうか。同世代の社員でラインに乗る人はどういうタイプかをこれを機に観察してみよう。学ぶものは、多いはずだ。ちなみに私は会社員の頃、ラインとはかけ離れたところにいた。反面教師の上司などが多かった。
文/吉田典史