オフラインを取り込む方法はないか
正直、辛かったと彼は吐露する。参った、会社を辞めたいとは思わなかったのか。
「思いませんよ。クレーム対応とか炎上とか、事業をするのなら当たり前の出来事です。いろんな体験をするために、この会社に入ったので」事業開発と言葉にすれば、華々しいイメージがあるが、とどのつまり第一線の業務を全部やり遂げることだ。当然、顧客への対応も含くまれていると、山口は話を続けた。
このインシデントには、数千名規模への返金で対応した。以来、キャンペーンを表示する時やセールスポイントを明記する時などにユーザーにどう伝わるか、感覚が鋭くなったと彼は言う。
そんな彼が、次に彼が手がけた事業は――
「ネット上でモノを買うEコマースなら、ユーザーの背景をある程度読めたり、データを蓄積することができる。でも、スーパーやドラッグストア等のオフラインでモノを購入した場合、誰が買ったのかわからないのが現状だね」
「実店舗ではポップ一つで、単一の単価じゃないですか。これって今後は変わっていきますね」
「Eコマースでやられていることが、確実に実店舗でも進んでいくね」
社内で繰り返し語り合ったそんな話から、山口の脳裏にある発想が浮かんだ。アメリカにあったビジネスモデルから、アイディアを得て、ある事業が具体化していく。
「Rakuten Pasha」である。
彼が提案したこの事業は、自動車教習所やコスメ事業よりも規模が大きく、やがて社内の戦略的案件として認知されていく。この事業についての詳細は後編で。
取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama