■連載/あるあるビジネス処方箋
学生は、就職活動を進めるうえで様々な人に相談をするはずだ。注意をしたいのが、その相手だ。おそらく、最も多いのは同じ大学・学部の友人だろう。特にゼミやサークルに籍を置く人ではないだろうか。あるいは、家族かもしれない。私は、そのこと自体を否定しない。むしろ、積極的に話し合うべきだ。だが、くれぐれも相手を間違わないようにしよう。私も30年ほど前の学生の頃に苦い経験がある。今でも、悔いる。今回は、就職活動中に絶対に相談してはいけない相手を私の考えにもとづき紹介したい。
まず、心得ておきたいのは、人が何かを話すとき、必ず、過去の経験の影響を何らかの形で受けていることだ。例えば、親が中小企業の経営者で様々な意味で苦労をしてきた人の場合は、おそらく、小さな会社を否定的にとらえる傾向があるはずだ。あるいは、親が大企業の経営者の場合、大きな会社を肯定的にみるのではないか、と思う。学生時代に創業10年以内のベンチャー企業で、インターンシップを何度も経験し、納得している人はそのような会社に就職するのでないだろうか。
このことは当たり前のように見えて、実は多くの人が見失っている。例えば、大学教授といえば学歴は立派であり、学生からすると「先生」なのだろうから、「就職活動にも精通している」と思い込むのではないか。しかし、実は大半の教授は、その分野には限りなく無知である。企業の内情や実態についても、疎い。
それも無理はない。教授の過去を調べると、多くは会社員の経験に乏しい。つまりは、相談をしたところで得るものは少ないのだ。
ここで、さらに注意をしたい。相談する相手が現時点で内定を得ていなかったり、内定になっていても、不本意な会社の場合、不満や焦りを持っているはずだ。すでにあきらめている人も不満を抱え込んでいるだろう。間違っても、こういう人には相談をしないほうがいい。必ず、あなたに嫉妬や妬みを感じ、迷う話をする可能性が高い。例えば、「あの業界は今後、ダメになる」「あそこの会社は、学歴で判断する」「うちの大学では、ムリだよ」などだ。これらは思いつきや嘘なのでないか、と私は思う。そもそも、会社の役員でも正確にわからないことである。学生では、さすがに判断できないはずだ。
前々から、あなたに敵意や悪意を持っている人にも接近しないほうがいい。相談をすると、きっとほくそ笑むだろう。あなたが悩んだり、苦しんでいる姿を知るとおもしろいはずなのだ。だからこそ、ここぞとばかりにめちゃくちゃな回答をするのではないだろうか。そして、反応をワクワクしながら観察しているだろう。苦しんでいる姿を見たくて仕方がないのだ。
家族とて、例外ではない。あなたに、会社員の兄や姉がいたとする。仮に就職活動の頃に挫折や不完全燃焼な思いを持っていると、あなたの相談に誠実に対応しないこともありうる。兄弟であろうとも、時には疑いの目でみたほうがいい。家族でも、嫉妬や妬み、敵対心はある。
これらは、社会人になってからも機会あるごとに思い起こしてほしい。例えば、上司が部下の仕事を盛んにけなす場合、おそらく、何らかの劣等感や心の傷を持っているのではないか、と私は思う。だからこそ、自分よりも優秀な部下を認めなかったり、潰そうとするのではないだろうか。私の上司も、このタイプだった。あるいは、上司が自分の過去の実績を誇張する時も、何らかの理由や背景があるのとみたほうが自然だ。同僚や外部の取引先と仕事をするうえでも、心得ておきたい。相手の発言や行動は、必ず、過去の経験から何らかの影響を受けている。
さて、8月も終盤になりつつある。そろそろ、就職活動もラストスパートをしたい。大企業の多くは、内定者の囲い込みをしているかもしれない。しかし、今後、さらに試験を行う可能性はある。中小企業は年明けでも、間に合う。悩みなどを相談する相手をどうか、間違えないようにしてほしい。幸運を祈っている。
文/吉田典史