「カンペイ」をガンガンと
機能性を打ち出さないと差別化は難しい。インクの調合に工夫を加え、競合する日本メーカーより素早く書けてインクの乾きが早く、ノートが汚れない学生が使いやすい製品を目指した。中国向けボールペン『サラサスピーディー』の発売は昨年8月だった。さらに日本向けに開発した商品だが、文字の上から蛍光ペンを引いてもにじまないボールペン『サラサマークオン』も昨年5月に中国で発売した。
中国向けのボールペンとサインペンはヒットしているが、いい製品を送り出しても中国支社のスタッフが売ってくれなければ、売上げには結びつかない。その点、中国人の部下は頼もしい。例えば、中国ではビジネスパートナーと中華料理の円卓を囲み、「カンペイ」とクラスを合わせ、強い酒を何回も一気飲みする文化がある。
平はすぐに酔いつぶれるが、メガネをかけた30代の部下は、「カンペイ」をガンガンやってもビクともしない。ニコニコしている。現地の中国人スタッフには「ブー」、中国語で「兄さん」と呼ばれ、親しまれている。
コミュニケーション能力に優れた中国人の部下だが、都合が悪いことになると時々、日本語がわからないふりをするのはご愛嬌だ。中国でのメインの製品はインクの乾きが早いボールペンと、蛍光ペンを引いてもにじまないボールペンだが、中国人の部下はロジックの組み立てが苦手なのか。時に二つの製品の使用用途を混同して、説明してしまうことがある。
かくいう平も、本社7階の予算室から3階の商品開発部に配転になった当初は、7階から見下ろすような“上から目線”に気づき、反省する出来事があった。以下、後編に続く。
取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama