お酒で割って初めてわかる割り材の味
ハイサワーは外飲みの居酒屋で味を覚え、家で試すというパターンがほとんどだ。販路を広げるためにも、居酒屋への営業は欠かせない。30代の部下は首都圏の2000軒近い居酒屋が頭に入っている。
居酒屋の世界は、1年で7割は潰れると言われる厳しい業界だ。30代の部下は居酒屋にお酒を卸す酒屋まわりも欠かさない。例えば懇意の酒屋から、新規オープンの店の情報を仕入れると、既存店か新規の店に足を運び、「あの店もサラリーマン客を狙っています。競合店がやっていないハイサワーを入れて、特徴を出しましょう。うちはレモンサワーの元祖です。品質が他のメーカーとは違う」とか、営業を仕掛ける。開店前の短時間の商談なので、30代の営業マンは無理に押してもダメというツボを心得ている。今日は忙しそうだ、帰ったほうがいいと思うとパッと引き上げ、後日再び営業に赴く。
時には懇意にしている居酒屋の暖簾をくぐり、売り上げに協力することもあるが、部下たちはお酒を介しての営業を謹んでいる。営業マンは少人数だ。酒の飲み過ぎで倒れると、業務に支障をきたすことになるからだ。
だが、割り材は焼酎に割ってはじめて本来の味が出る。仕事をする上でお酒は付きものだ。お酒とどう付き合うのか。ベテラン営業マンの伴も、最初はお酒で失敗している。60才を過ぎた営業マンは、失敗から何を学んだのか。以下、後編に続く。
取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama