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中小企業の社長に「あんな社員はダメだ」と決めつけがちな人が多いワケ

2019.08.06

■連載/あるあるビジネス処方箋

 就職活動の時期だからこそ、中小企業の影の部分を最近取り上げている。学生たちには、人生の大切な節目である新卒の時点で間違った選択をしてほしくないと強く願っているからだ。この時期、中小企業への就職を勧める識者が突然、現れる。大学教授や研究者、作家、ベンチャー企業や中小企業の経営者たちである。たとえば、「大企業に比べて、やりがいを感じる機会が多い」「活躍できる場が豊富」などと語る。

 多くのメディアは、それらの言い分が事実であるかを確かめることなく、報じている可能性が高い。「言論の自由」といえばそれまでかもしれないが、「中小企業礼さん」の言論は根拠があいまいで、事実関係が相当に疑わしい。

 今回は2年前、中小企業の経営者へのインタビュー取材で感じたことをもとに、ある見方を紹介したい。その記事は他社のもので恐縮であるが、タイトルは「社員のことを悪く言ってどうするの?」(WEDGE社)だ。社員の育成について尋ねた内容で、インターネットで検索すると見つかるはずだ。

 この経営者は、次のように語っていた。記事の一部を以下に転載する。

「業績が伸びて、会社の規模があるレベルに達し、キープしないと、業績はやがてじりじりと下がる「じり貧」になってゆきます。少なくともそのレベルになるまで、社員を懸命に育てあげないといけない。残念ながら、それをしない社長は実際にいるのです。

 私がそのような社長と接すると、社員のことを信用していないように感じます。「あんな社員はダメだ」と乱暴に決めるつける人もいます。自分が経営する会社の社員のことをそんなに悪く言ってどうするの?と思うのですが…。私が社員ならば、辞めてしまうかもしれません。」

「「あんな社員はダメだ」と乱暴に決めるつける人もいます」が、キーワードなのだと私は思う。取材をしていると、中小企業の中の中小企業といえる「社員数が100人以下で、創業15年以上の会社」の経営者の2人に1人が同じ意味合いの言葉を頻繁に発する。例えば、「あいつは使えない」「雇って損をした」「いつまでも、仕事の要領を得ない」「何度教えても、ミスが多い」などだ。このレベルの経営者も、実は金融機関や信用調査機関からの評価はすこぶる低い。だからこそ、融資の依頼をしても様々な理由をつけて額を減らされる。あるいは、慢性的に業績難で、社員の定着率は総じて低い。経営者たちはこういう事実は不都合だからか、隠している。社員たちを決して否定できる立場ではないのだ。

 私の観察では、社員数が100人以下で、創業15年以上の会社で、大企業の社員に仕事力で張り合える社員はほとんどいない。甘く見積もっても、数ランクは確実に見劣りする。同じく、このレベルの会社の社長で、大企業のトップと対等の仕事力を持つ人もまずいないだろう。つまりは、双方は低いところで釣り合いがとれている。また、そうでないと会社は組織として機能しないはずだ。

 それでもなおも、「あんな社員はダメだ」と決めつける経営者がいるならば、劣等感が極端に強く、自信がないのだと思う。だからこそ、社員を否定することで、自らの立場や権威を上に位置づけようとするのだろう。その試みは現実からの逃避で、甘えでしかないのだが、本人は真剣のはずだ。

 前述の経営者は、取材時にこうも語っていた。

「社長にとって、社員は鏡です。上司と部下の関係も同じです。自分と同じようなレベルの人が、社員や部下として目の前にいるのです。社長と労働組合の関係も似ています。経営者や会社に対し、戦闘的な労組があるでしょう。そのような会社の社長は、「あの労組の野郎は、何もわかっていない」というスタンスをとっています。だから、労組も過激になるのです。」

 この言葉を正しく理解できない経営者は社員数が100人以下で、創業15年以上の会社に実に多い。9割以上は、この類だと思う。このレベルの会社の社員も、似たりよったりだ。私の取引先の担当者でも、レベルの低い人が少なくない。前回、「中小企業の社員の言葉が得てして攻撃的」と書いたが、実は経営者も言葉は総じて過激なものが目立つ。少なくとも、大企業とは別世界である。

 私は、このレベルの会社のトップから末端の社員までを読み解くキーワードは、「優劣」だと確信している。子どもの頃から何かのきっかけで強い劣等感や妬み、ゆがみなどを持ち、現在も自信が持てない。だからこそ、他人よりも「優れている」か「劣っている」か、といった価値に極端ともいえるほどにとらわれる。本来、向かい合うのは自分の非力さや未熟さ、逃げの姿勢なのだが、それができない。しかし、今のままでは不満で、落ち着かない。そこで誰かを否定することで焦りなどを解消したいのだろう、とみる。甘えでしかないのだが、本人はそれも隠している。

 今後、就職活動はクライマックスを迎えるが、このような人が多数いる会社の採用試験にエントリーすれば来年4月以降は、必ず悔いる日々になるだろう。おそらく、3年以内に失意のもと、辞めるのではないか。それがある意味で健全ではあるのだが、転職する際、そのレベルの会社の在籍を高く評価する人はほとんどいない。こんな人生を歩みたくないならば、たとえ現時点で思い描いた結果が出ていなくとも、中堅企業や大企業の試験を受け続けよう。通年採用の大企業もあるではないか。就職活動では、動くほどに内定を得る確率が高まる。くれぐれも、安易な道には進まないようにしたい。まだ、時間は十分ある。とにかく、前進しよう。

文/吉田典史

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