年上でも年下でもコミュニケーションがすべて
コミュニケーションと事前の準備が大切
――赤坂社長は昭和62年にJALに入社されましたが、自身のキャリアについて教えてください。
「整備士として入社し、成田空港の現場に配属になりました。その後、ライン整備や飛行機の発着の間に点検する飛行前点検や修理、安全に関わる業務などに携わってきました。海外勤務もなく、整備本部長の役職に就いてからもずっと羽田空港での勤務。役員でも本社勤務の経験がないのは珍しいようです」
――DIMEの読者には40代のビジネスパーソンも多いのですが、その頃はどんな立場で、どんな仕事をされていましたか?
「羽田空港の整備部門で生産計画のグループ長になった頃だと思います。業務は、現場の仕事の計画を立て、今日はどういう仕事をどういうプロセスでやっていくかを組み立てるという一般的な工場の生産計画と変わらないものです。部下は50人ぐらいいたと思いますが、その半分くらいは年上。ただ上司というよりも、一応お前がキャプテンだ、みたいなイメージでした。私も部下と一緒に現場の仕事をすることで仕事の全体像が把握できました。そういう意味で、部下とともに成長できたこの時代が一番おもしろかったです。現場を管理しながらのプレーイングマネージャーでした」
――近年、年上の部下を持つケースがどの企業でも増えていると思います。40代で年上の部下を持った際に、チームをまとめるうえで、大切なことは何でしょうか?
「どんな時代でも、どんな仕事でも、どんな環境でも最後は〝コミュニケーション〟がすべてだと思います。当時は20代から50代までの部下がいましたが、特に年上とのコミュニケーションは重要です。年上の人たちは時間がたつにつれ、自分からしゃべらなくなってくるので、勇気を持ってこちらからコミュニケーションを図らないといけない。そこは意識したほうがいいと思います」
――航空業界では突発的なトラブルも発生しますが、冷静に対応しないといけない立場として、日々どんなことを心がけていますか?
「やっぱり〝準備〟が大事ですね。これはすべての仕事においてそうだと思うのですが、何かが起こるんだという前提で、常に事前に準備しておくというのもひとつの技術だと思うんです。何が起こるのかをある程度分類し、それを想定して準備をしておく。準備したものと、していないものとでは事が起こった時の対応の仕方も、スピードも全く違ってきます。
準備できていないことが起こった時の怖さは、私自身よく経験しているので。若い人にもずっと言っていますが、準備がすべて。それに尽きます」
――最後にこれからのJALをどんな会社にしていきたいですか?
「もっと広がりのあるビジネスを進めていきたいです。単なる輸送手段ではなく、インバウンド強化だったらもっと地域を活性化していきたいですし、宇宙事業にまで広がってもいいと思います。私は決して突拍子もないようなことをやりたいと思っているわけではなくて、そうやって航空会社の事業領域を少しずつ広げていきたいと思っています。
格好つけるわけではないのですが、皆さんから信頼されること。国内だけでなく世界中、そして特に社員から尊敬される会社にしていきたいです。これからのJALを楽しみにしていてください」
入社2年目の整備士時代の赤坂氏。入社後すぐに成田空港勤務となり、国際線の機体整備に配属された。整備部門出身者として、安全に対しての思い入れは特に強い。
取材・文/鳥海高太朗