昨年春、日本航空の社長に就任したのは整備部門出身の赤坂氏。就任直後から問題山積みの中、現場で長年培ってきた安全のスペシャリストとしての手腕を発揮し始めたところだ。来年1月に経営破綻から10年を迎える新生JALのトップに、航空産業の未来を聞いた。
日本航空株式会社 代表取締役社長 赤坂祐二氏
1962年生まれ。東京大学大学院工学系研究科(航空学専攻)修了後、1987年に日本航空に入社。整備士として現場で整備作業に従事したのち、羽田整備事業部生産計画グループ長、安全推進本部部長兼ご被災者相談部長、整備本部長兼JALエンジニアリング社長、常務執行役員整備本部長を経て2018年4月より現職。
間違いは防げた。引き締まった意識を維持していく責任がある
――社長就任から1年を振り返っていかがでしたか?
「とにかくいろいろなことがありました。まずは自然災害が非常に多かったです。昨年9月に関西国際空港(台風による浸水被害と連絡橋への船衝突)と新千歳空港(北海道胆振東部地震)が同時に閉鎖されるなんてことは、私が入社以来初めての出来事でした。また昨年末にパイロットや客室乗務員の飲酒問題が発生し、年始には国土交通省より業務改善命令を受けるという事態に至り、皆様に本当にご迷惑をおかけすることになりました。本来、社長がすべき仕事をどこまでやれたのかなというのが、1年たって思う正直な感想です」
――社長就任の際、ご自身が社長として取り組むべき一番の課題は何だと考えていましたか?
「私は整備部門の出身で、これまでずっと羽田や成田など空港での勤務でした。実は、天王洲の本社で働くことも社長になって初めてなんです(笑)。整備に携わる人間として安全に関わる仕事しかやってこなかった。だからというわけではありませんが、やはり航空会社のトップの役割というのは、安全運航をしっかりとやっていくことだと思っています。今回の飲酒問題は私の責任です。この問題を解決し、また違う安全のステージを作っていくことが私のやるべきことだと思っています」
――乗務員の飲酒事件における対応についてはどうお考えですか?
「今でも一番悔やまれるのは、もっと早く対策をとっていれば、今回のような件は間違いなく防げたということです。当該乗務員は以前にも似たような問題を起こしていた。やはりそこで対策をとっておくべきだったと思います。過去にも同じようなケースがあったのに、情報が組織に伝わっていない。間違いなく防げた問題です。社内全体に事なかれ主義とか、問題の先送り、事態の過小評価があると改めて反省しました」