副業ならではの苦労
松原さん:エンジニアが週2日稼動することで、どのくらいの成果が出るのかがわからない人が多く、クライアントの納得度を引き出すのが大変でした。毎週打ち合わせをし、気になることを随時ヒアリングし、期待値と成果のギャップがあった時は、丁寧に説明することを心がけました。
遠山さん:プロジェクトの最初と最後は、クライアントに会いに行くようにしていますが、本業があるので、頻繁にはその地域に行くことができません。ウェブ会議だとタスクをこなすだけになることもあります。良いものを作るためには、直接顔を合わせた方がいい時もあるので、有給を使って地方に行く事が多いです。また、副業同士で仕事をする難しさを感じることもあります。どれだけのリソースとコミットを持ってやるか、スタートラインや目標も人により異なるので。
仕事をする上で大切にしていること
遠山さん:副業で会社の看板が外れると、自分個人の力量に気付かされます。会社では取れるけど、個人だと取れない案件もありますので、自分のキャパシティを広げるために、大学に通ってきちんとインプットしたり、お金は発生しないけど、自己開発として産学連携の事務局として関わらせてもらうなどして、経験や知識を増やしています。
松原さん:「お金が取れそうなところから、がっぽり取ろう」と考えず、何でも誠実に対応することです。以前、学校のシステム制作の依頼を受け、とある離島まで行ったことがありますが、お金をかけてシステムを入れなくても、Googleドライブとカレンダーを使えば解決できる事でした。学校側にもそれを伝え、使い方だけ教えて帰ってきました。創立間もない我々にとっては高い出費でしたが、「我々のお金になるから作ってしまおう」と考えるのではなく、正直に事実を伝えれば、誠実な姿勢を評価されてその後につながる事があるかもしれないと考えました。ちなみに、今、私の年収は0円です。起業当時はちゃんと社員に給料が払えるか自信がなかったので、自分の年収だけ0円にすると決めました。今後も、社長の年収は社内で一番低くするつもりです。社長の年収が一番高いと、出世競争が始まります。「社長になるのはハズレくじだ」と皆に思ってもらえば 出世競争も起きないと思い、このような制度を取っています。年収が下がっても良いから社長になりたい、この会社を良くしたい、と思う人だけがやれば良いポジションだと思っています。
遠山さん:副業を始めるときって、既に活動している中で無料でやっていることを有料にしていくというのが多いですよね。これまでの関係性があるのに「次回から1万円で」とは言いにくいもの。私が最初の案件で気をつけたのは、まずはギブすること。各地域を回り、移住者インタビューをして、無料で記事を書きました。その後、「次の企画は5万円でどうですか。」と提案しました。単なる友人の関係性を超えられた気がして、その時手にした5万円は、本当に嬉しかったです。もしも関係性をお金に変えることへの違和感があるなら、まずはギブすることで、その違和感がなくなると思います。
松原さん:仕事をする上でいつも気をつけているのは、人と丁寧に接して、人を大切にする事です。会社の看板が無くなっても私が生きていけるのは、会社員時代に一緒に働いた多くの方々に今も支えられているからです。今目の前にいる人を大切にする事が、将来の自分を助けてくれると考えています。
【取材協力】
合同会社耕す 代表 遠山浩司さん
Praha Inc. CEO 松原舜也さん https://www.praha-inc.com
コワーキングスペース Doer https://www.rebranding.tokyo/doer
文/岡のぞみ
ライター/PRコンサルタント。営業、留学カウンセラー、広報の仕事を経て会社員10年目に独立。横浜、湘南を拠点に活動。
http://www.tsunagalo.com