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看護師6年目の本音「患者さんががんと向かい合ってどれだけ頑張ってきたかを知っています」聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院・猪子萌さん

2019.06.18

だって虚しいじゃないですか……

 ちょっと聞きづらいことですがって、何ですか。かまいませんよ。そんな場に立ち会いつらくないか、嫌にならないか、看護師を辞めたいとは思わないかって。

 辞めたいとか嫌になるとか……、意識したことは一度もありません。消化器外科は急性期から緩和ケアまで学べる病棟です。患者さんとたくさんお話をし、病状の経過に寄り添っている私は、患者さんがガンと向かい合い、どれだけ頑張ってきたか、どれだけ戦ってきたかを知っています。最期まで寄り添いたい。最期は楽になってほしい、辛いこと、痛いことはなるべく取り除いてあげたいって。

 でも、時には落ち込むこともありますよ。30代の患者さんで「オレは家に帰って子供を風呂に入れるんだ」と言っていましたが。すでに末期ガンで。若い看護師に身体を拭かれるのは羞恥心があるから、「女房がきたらやらせるからいい」と。あまりお話をすることもできませんでした。

 病状が進み、看護師に一番近い治療個室に移ることを勧めましたが、そこに移るとお迎えが近いとわかるので、「行きたくない」と。「息子さんがきた時に、すぐに会えるように移りましょう」そうお願いをして。私が夜勤の時に最期を迎えられましたその患者さんは事前に、DNR指示(蘇生処置拒否指示)がありませんでしたから。

「女房と小さい子供を残しておまえ、なにやっているんだ!!」親戚の方が、そう呼びかけベッドを囲んだ家族が泣き崩れる中、心停止をした瞬間から、私はひたすら心臓マッサージをした。

 えっ、なんで涙を流すのかって。だって虚しいじゃないですか。

 あー私は何もできなかったって、辛かった……。

後編も話は続く。

取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama

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