リーマン・ショック級の金融危機でも耐えられる
さて、本題の「リスク分担型」について説明しよう。会社は、運用がうまくいかない時に備えて、あらかじめ掛金を多めに積み立てておく。ただし、想定以上に運用状況が悪化し、積立金不足が生じた場合、加入者は給付額の減額を受け入れる、というもの。
企業あるいは加入者のどちらかにリスクが偏るのではなく、リスクを分け合う仕組みのためリスク分担型というわけだ。制度的にはDBに属するものの、加入者もリスクを負うなど中身がかなり異なることから、「第3の企業年金」とも呼ばれる。リスク分担型のポイントは、「どれくらい多めに積み立てておくのか」。大した金額でなければすぐに積立金不足が発生し〝リスク分担〟は名ばかりとなってしまう。
制度を新設した厚生労働省は、運用状況が悪化したケースとして「リーマン・ショック」のような、20年に1回の頻度で発生する可能性がある金融危機を想定している。厚生労働省の標準モデルでは、運用する年金資産が80億円の場合、リーマン・ショック級の金融危機が起きた時、約20億円の積立金が不足すると試算している。つまり、リスク分担型では、導入企業によって多少の違いはあるものの、この不足分を多めに積み立てておく。〝並〟の金融ショックであれば給付額の減額は起こりにくいといえそうだ。
「DB」が圧倒的に多い企業年金の現状
厚生年金基金の受け皿として導入されたDCとDB。厚生年金基金は確定給付だったため、制度が似ているDBへの移行が多い。DCは、中小企業を中心に加入者は順調に増えているが資産残高はまだ少ない。
ここ数年のDB加入者の増加は厚生年金基金の〝駆け込み移行〟の増加が原因。2019年4月までに移行すると優遇制度が受けられる。
DBを採用しているのは、すでに年金資産が大きく積み上がっている大企業が多いため、DCに比べて、資産残高は約6倍の水準に上る。