部下のモチベーションを自発的に高める課長の考え
畠山本人もかつては、先輩の“宿題”で往生したことがあった。入社して6年ほど経て、営業の部署にいる時だった。仕事も覚え、自信も付いてきた当時、会議の後の懇親会の席で、彼はたまたま課長職である化粧品部門の女性ブランドマネージャーの側に座った。
気が大きくなった彼は、「新製品のパッケージデザイン、なんでこんなにダサイんですか。僕だったらもっといいものにできるし、面白いものができますよ」そんな感じで、大口を叩いてしまった。半年後の人事異動で、彼はその女性ブランドマネージャーの直属に、就くことになってしまったのだ。
「畠山さん、自分だったらもっといいもの、もっと面白いものができるといったよね。やってごらんなさい」そんな環境は、彼にとって猛烈なプレッシャーだった。
「この緑のパッケージを青くしたら、いいじゃないかと」「何で?」「め、目立つから…」「今まで使っていた人が、青だといいイメージを抱くとか、色を変えたことで今まで使ってなかった人のトライアルが取れそうとか。データを基づいた評価があるならまだしも、緑から青にする理由が目立つからって、あんた何考えてんの!?」とか、畠山曰く「ボコボコに指導されました」。
口先だけのヤツと、すぐに放り出されると思っていたが、持前の一生懸命さと明るさが幸いしたのか。その後も化粧品部門に在籍し、昨年ブランドマネージャーに昇進した。その間には管理職になった時に活かせる経験も積んでいる。
例えば、新製品のパッケージ案に意見を言った時のことだ。「キミの考えはどうでもいい。事前の調査結果で、これでいこうと決まったんだから、この通りやってください」先輩にそう言われたことがある。自分の意見を語っても聞く耳を持たない。自分は言われたことだけをやっていればいいだけのロボットかと、モチベーションが下がったことがあった。
「だから、例えば『パッケージに“最高クラスUV”と入れてね』とか、要点を伝え、後は部下に任せるようにしています。部下の自発性を大事にすることで部下が面白みを感じて、仕事に取り組んでくれたら。自分のアイデアが受け入れられた時の嬉しさ、楽しさを体験してくれたらと」
部下に任せることで、部下の仕事に対するモチベーションは、自発的に高まる、それが畠山の一つの考えだ。ところが、この会社の各事業部は生産、調査、広報、販売等、担当する製品にまつわるすべてのことに、コミットしていかなければならない。守備範囲が広い。部下も当然、得手不得手があるわけで、その辺りの事情は後編で。
取材・文/根岸康雄
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