攻撃欲が強すぎる
ちなみに、私がフリーになったこの14年間で接点をもった編集者90〜110人のうち、入社の難易度が最も高い出版社(3〜5社)の編集者はまず、否定しない。少なくとも、私は何かを言われた記憶がない。入社の難易度が下がるほどに、編集者の言葉が批判的で、攻撃的になる。特に最下位のグループ(そのほとんどが正社員数100人以下)の編集者は、否定のための否定を繰り返す。それで、自分が優位であろうと誇示しているのだろうが、劣等感が透けて見えて仕方がない。実は、仕事力は最上位と最下位の編集者は、私の実感値でいえば5〜7ランクの差がある。もちろん、最下位が低いほうだ。
このレベルの会社の社員の中には、他人を攻撃する欲望(攻撃欲)が大企業の社員に比べて相当に強い人がいる。背景には、子どもの頃から「満たされなった過去」があるのでないか、と私は観察している。
攻撃欲が極端に強いから、相手と深い会話ができない。自分の意志を一方的に伝えることを「会話」と信じ込んでいるフシがある。それなれば、「メール」で事足りるだろう。わざわざ、会話をするならば、そこには相手に対しての配慮や敬意が必要になる。ところが、その意味を正しくはわからない。なぜなら、相手よりも優れているか、劣っていることでしか、判断できないからだ。だから、少しでも意にそぐわないと興奮したり、過激な物言いになる。ある意味で、気の毒な人たちなのかもしれない。
これらは、私の取材を通じての私見でしかない。だが、私は、一部の識者やメディアが伝えるように、社員数100人以下の中小企業は「活躍の場が多い」とはやはり、言い切れない。むしろ、克服しがたい問題を長年抱え込んでいる可能性が高いと確信している。その1つが、「コミュニケーション力」が欠けた社員が少なくないことだ。その人たちの犠牲になってほしくないがゆえに、新卒で入ることを勧めない。
ちなみに、労働基準監督署や労働相談情報センター(旧 労政事務所)などが毎年発表する労使紛争(解雇や退職強要、パワハラやいじめなど)のデータは、社員数100人以下の会社は大企業や中堅企業に比べると、圧倒的に多い。そのもとで多くの人が無念の涙を流している。なぜ、こんなところに新卒時に飛び込むのか、と私は問いたい。
文/吉田典史