■連載/あるあるビジネス処方箋
新卒(大卒)の就職活動が盛んだ。この時期、新聞や雑誌、ニュースサイトなどはある意味での「建前」を報じる。例えば、「大企業よりも中小企業のほうが活躍の機会が多い」というものだ。それも1つの捉え方かもしれないが、ある断面を強調しすぎで、私は納得できない。そこで今回は、私が企業取材を通じて見聞きしてきた中で強く感じることを「本音」として伝えたい。このような見方も報道されないと、社会に巣立つ学生が大きな傷を負うことになりかねない。
結論からいえば、業界を問わず、正社員数が100人以下で、創業15年以上の会社には新卒としては入社しないほうがいい。このレベルの会社ならば、20代後半以降の「第2新卒」やその後の中途採用、あるいは40〜50代でリストラになった後でも入社できる場合が多い。
労働市場において、新卒はある意味で価値が高いのだから、あえて入るところではない、と私は思う。通常、将来有望なベンチャー企業ならば、10年以内にこの規模を超えている。何らかの問題を長年にわたり、根深い問題が横たわっているから、大きくならない可能性が高いのだ。正社員数が100人以下の会社で、創業15年以上の会社にわざわざ入るのは、新卒時にはあまりにも損だと思う。
私がこのレベルの会社に入ること強く否定するのは、コミュニケーション力に非常に大きな問題を抱えた社員が多いように思えて仕方がないからだ。特に私が問題視しているものを具体的に捉えてみたい。
相手を認めることができない
機会あるごとに周囲を否定する口癖がある。たとえば、「~はだめだ」「~はよくない」などだ。矛先は、上司や同僚、外部の取引先などに向けられる。まさに、「360度否定」に近い。少なくとも、ブランド力のある大企業の社員よりははるかに多い。おそらく、10代の頃から学力や運動などが抜群に高いところにはいなかったはずだ。平均よりもやや上よりから下の層が多いのではないだろうか。新卒時の就職活動でも、一流企業には縁がなく、その下のランクにも、手が届かったのだろう。現在の会社も「不本意入社」なのでないだろうか。だからなのか、負け癖がついていて、常に心の奥深くに劣等感や敗北感があるように私には見える。
おそらく、そんな自分を好きになれずに、あるがままの姿(例えば、優秀ではない自分)を素直に受け入れることができない。だから、どうしても相手を認められない。認めてしまえば、劣等感がさらにひどくなる。この人たちの対人関係を読み解くキーワードは、「優劣」だ。相手よりも優れているか、劣っているか、である。
私はここ30年ほどを振り返り、このレベルの会社の社員が他人をほめることを見聞きした経験が1度もない。人をけなし、なじり、こきおろす。そんなシーンを数えきれないほどに見聞きした。特にターゲットになるのが、20代前半から半ばまでの社員である。だからこそ、私は新卒者が入社するのを勧められない。
この人たちは相手を否定すれば、自分も必ず否定されることを知らないのかもしれない。これは、会社員をするうえで致命的ともいえるほどの誤った考えなのだ。